ナツコは 駅のトイレの鏡の前で
口紅を拭ったあと、

軽く意識が飛んだ。

正確に言うと…。

心と身体、思考と行動が
別々な感じで、

手元のバックを見ると
100万円入りの封筒があり…。

多分、夢中で…。


化粧品売り場に行き、その後
自分の好みの服を選び、靴を買い…。

封筒の中から 金を掴み出して、
支払いをしていた。

そして…。

再び、駅のトイレで

今、 買ってきた 物に 着替えて
化粧を直し、鏡に写し出された自分に、

「バカ!」







トオルは 上野から 少し離れた所に車を停めて
盗聴器を外した。



すぐ、
盗聴器を聴いていた者達から
それぞれ、「感想」のメールが送られて来たが、
倉田からは 電話があった。

お疲れ~

フッ

フッって、余裕か? 発信機、外したって事は
姫の気持ちは、ガッチリ 掴んだ? 

まぁ。

まぁ、って、社長が…。まさか、自信ないとか?

いや、気持ちは 掴んだよ。

ふふ。 そうなんだ。

なんだよ。はっきり言えよ。

あぁ、高校生相手に あそこまで 無言を貫くなんて、なんだか…。らしくないかな、とか?
聴いてて、ドキドキしたよ!

フッ、そうだよな…。まぁ、聴いてるオマエらが、ドキドキしないようじゃ、ナツコをドキドキさせられないだろ。


倉田は 受話器の中で
「ふ~」と 息をもらしている。

トオルは 少し、考えていた。
でも、ナツコに対する感想を
話し始めた。

実際、話してみてナツコは 頭が良い…いや、勘が良い、
相手の気持ちを読むのも、目の動きの意味とか、察しが良い…。調査員なら、かなりのスキルが あると 思う。

はっ? 今日の公開デートは 調査員の面接じゃないだろ!?
結婚するんだろ!?

あぁ…。それと、ナツコは オレと 、似ているところもある。

おぉー、そりゃ、厄介だな。どんなところが
似てるんだ?

勝ち気なところ…。それと…。
もう、誰かを愛する事は無いと、そう思い込んでる。


なるほどね…。
で、今後 姫は どう動くと想定してるんだ?


少しの間。


そうだな…。
ナツコは 渋谷駅に 荷物を残しているから、
また、あの マン喫に行き、1時間…。いや、
もう少し 悩んだあと 電話してくるだろう。

そか、じゃあ それで 撤収宣言だな…。

いや、追い込みをかけるよ。

あ"ぁ"、なんでだよ。 気持ち 掴んだんだろ、
社長の追い込み…。そんな 厳しい事、
 すんなよ!

ふふ、オレに似ているなら 、キッチリ 追い込むべきだろ。


また、少しの沈黙。


ふ~ん。そうか…。

ん?

ぶっちゃけ…。彼女が 〇対じゃなかったら
俺、彼女に惚れてたかも…。

そうなのか? 2次元にしか 興味無いと思ってたけど…。

まぁ、そうだけど…。彼女を、っていうか
彼女を想う 社長にかな…。

おい、不気味な告白は やめてくれよ。

あぁ…。そう意味じゃない。
なんか…。憧れかな…。そんな風に誰かを愛せるなんて、女の子をここまで 真剣に 想えるなんて。

ふふ、バカ!って、言いたいのか?

いや、そうじゃなくてさ…。

あぁ、わかってる。









倉田との 電話を切ったあと、
トオルは 途中で 郷田を拾い、

代々木公園に 向かった。



トオルは 郷田を車に残して
公園の中を 1人で 歩いている。



日が暮れ始めていた。

夕方だという事は
鳴いている 虫の音でわかる。



ナツコと 別れてから 4時間。



自分の想定を軽く越えてくる女。


ナツコからの電話を

今は 待つしかない。






CAST

サイジョウ トオル        登坂広臣

倉田慎一                        小林直己