6月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:2765
ナイス数:666
シュタイナー自伝〈下〉の感想
神秘学・精神科学に加えて教育、医学、農業、芸術等の分野でも多大な影響を与え続けているR.シュタイナーの自伝。本書下巻では、ワイマール及びベルリンでのゲーテ全集自然科学編の編集に従事した後、ロシアの神秘思想家H.P.ブラヴァツキーの神智学運動に参画、その後袂を分かち独自の人智学(アントロポゾフィー)を創始するまでを収録。全てを、より深く知りたいという思いに駆られるシュタイナー。非常に興味深く読むことができた。本書で言及されていた『自由の哲学』を手始めに、残り3主著についても、再び読んでゆきたい。
読了日:06月29日 著者:ルドルフ シュタイナー
諸国物語〈下〉 (ちくま文庫)の感想
本書『諸国物語(下)」では、明治時代に鴎外が翻訳・紹介した露西亜の作家8名(レフ・トルストイ、コロレンコ、ドストエフスキー、チリコフ、アルフィパーシェフ、クズミン、アレクセイ・トルストイ)の9作品を収録。帯によると、“世にも不思議な物語もあるーロシア文学のゆたかさと、鴎外文学の香気、小さな文庫の大きな世界”と。冒頭のレフ・トルストイ独自の宗教観が垣間見られる「バテル・セルギウス」とワニに呑み込まれた男を取巻く人々の不条理な論理と会話を描いたユーモア溢れるドストエフスキーの「鰐」が印象に残った。
読了日:06月27日 著者:
呪術の体験―分離したリアリティの感想
ドンファンシリーズ、第2作目。カルロス・カスタネダは、呪術師には必須の「見る」ことについて数多くのことを学ぶ。「見る」とこでわかる分離したリアリテイの訓練が執拗に繰り返される。煙での訓練で「見る」ことが出来るようになるが、何も変わらない。全てが愚かさの管理下にあり、善悪も好き嫌いもなくなり全てが平等の世界に。「眺める」は、常人が世界を知覚している普通の見方であり、「見る」は知者が事物の本質を認知することができるようになること。カスタネダは、徐々に神秘体験の深みに足を踏み入れていく。不思議な読後感。
読了日:06月23日 著者:カルロス・カスタネダ
走れメロス (新潮文庫)の感想
桜桃忌の本日に。メロスが一度は無二の友を裏切ることを考えるも、思い直し再び走り出す場面が感動的な表題の「走れメロス」、自己喪失で不器用にもがき続ける芸術青年たちを描いた「ダス・ゲマイネ」、訪れた峠の茶屋での出来事を富士山を背景にとりとめなく描いた「富獄百景」、一人称独白で女性心理を鮮やかに描いた「女生徒」、イエス・キリストを扱った「駈込み訴え」、自伝として貴重な「東京八景」、親族への想いを綴った「帰去来」「故郷」、人の内面心理に精通し、明るくも暗くも感じられる太宰中期作9編を満喫した。
読了日:06月19日 著者:太宰 治
シェイクスピア全集 (6) 十二夜 (ちくま文庫)の感想
片想いが織りなすドタバタ喜劇。双子の兄妹セヴァスチャンとヴァイオラが船の難破で生き別れとなったことから物語がはじまる。少年に変装したヴァイオラは、仕えているオーシーノ公爵に恋をする、その公爵はは伯爵家の令嬢オリヴィアに恋しているが、オリヴィアは男装のヴァイオラに想いを寄せる・・個性豊かな登場人物の面々、純粋で一途なヴァイオラ、高潔な処女で了見の狭いオリヴィア、猪突猛進のオーシーノ、飲んだくれのサー・トービー、などなど。複雑に絡み合う人間模様。掛け合い漫才のような台詞回しが実に面白い。
読了日:06月18日 著者:W. シェイクスピア
ヘルマン・ヘッセ全集〈3〉ペーター・カーメンツィント物語集1―1900‐1903の感想
処女作「ペーター・カーメンツィント」(ヘッセ27歳時作)と1900~1903年(2(23~26歳)に書かれた18編の小品を収録。最初の作品を以下に。故郷を出て都会で作家として生計を立てるペーター。エリザベートへの叶わぬ恋と身障者ホビーへの献身的な奉仕で、ペーターは成長していく。その後都会が肌に合わず帰郷する・・恋心を抱く文筆家、親友身障者たちとの出会いを鮮明にして、荒々しくも美しい山、川、森、空に囲まれ、育まれた純真で透明感漂う素晴らしい文章。詩人ヘッセの豊かで情感のある自然描写が特に印象的。
読了日:06月15日 著者:
サイコシンセシスとは何か 自己実現とつながりの心理学の感想
サイコシンセシス「統合心理学」とは、パーソナリティレベル、フロイトの無意識だけでなく、宗教の扱う真の自己、スピリチュアリティや他者・世界との繋がりに関わる無意識を含む全体(ホール)として包括的に人間を捉えたホリスティックな人間観で、癒しから自立、成長、他者や世界に繋がり、心の豊かさを目指す「降りていく生き方」にも結び付く在り方。その研究・実践の第1人者が、サイコシンセシスを噛砕いて概説。在り方、意志の持ち方、個と全体の統合、心・身・知の繋がり、意志の働きとセルフコントロールなど、非常に分り易かった。
読了日:06月11日 著者:平松 園枝
ものがたりの余白―エンデが最後に話したことの感想
エンデと深い親交があり作品の翻訳者でもある田村都志夫氏が、エエンデが亡くなるまで寄り添って語ったことを纏めた本書。中味は、文学について:遊び(シュピール)について、「ジム・ボタン」と「モモ」のあいだー間(ま)の話、「鏡のなかの鏡」について、トリノの聖骸布。人生について:家系、少年時代、イタリアのこと、そしてパレルモの語り部。思索について:シュタイナー人智学の芸術観、西欧の物質、アジアの霊性、そして歴史の流れ。その他、夢について、死について。エンデの言葉が満載。非常に興味深かった。再読必須。
読了日:06月11日 著者:ミヒャエル エンデ
シュタイナー自伝〈上〉1861‐1894の感想
独自の世界観:「人間存在の中の精神的なものを宇宙の中の霊的なものへ導こうとする、一つの認識の道である」と云う人智学(アントロポゾフィー)を編み出したR・シュタイナーの自伝(上・下巻)。本書(上巻)には、幼少期(オーストリアの片田舎)から、ウィーンでの学生時代、ワイマールのゲーテ=シラー文庫でのゲーテ全集編纂者時代、ベルリンでの神智学協会時代、その後の人智学教会創設までが記されている。ユング、エンデに多大な影響を与えたと言われるシュタイナーをより多く探求したいという思いから読んでみた。
読了日:06月04日 著者:ルドルフ シュタイナー
おもかげ橋の感想
比較的軽めの娯楽性の高い葉室時代劇だった。分りやすい展開で、非常に読み易く、読後感も清々しかった。現代における誤った個人主義の行き過ぎで、皆無になりつつある、古き良き日本の義理堅さ、辛抱強さをひしひしと感じることができた。主人公は、貧乏侍の草場弥市と幼馴染の武士から商人になった小池喜平次と二人の初恋の女・萩乃、この3人の立居振舞も良かったが、個人的には、脇役ではあったが、弥市のところへ押し掛け女房となる弥生の骨太の肝っ玉が非常に印象に残った。
読了日:06月02日 著者:葉室 麟
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