9回目受験生の再現答案です。
諸賢にお見せするレベルではないかもしれませんが、
せっかくなので公開することにしました。
経済法第1問
Y1ないしY13、Y14及びY15の行為は、不当な取引制限(2条6項)に当たり、3条後段に反しないか。
1 Y1ないしY15は、土木工事の施工等を業とする株式会社であり、競争関係にあるから、「事業者」に当たる。
2 「共同して」とは、意思連絡をいう。黙示の意思連絡でもよい。
(1) Y1ないしY13は、本件合意をしており、明示の意思連絡が認められる。
(2) Y1ないしY13は、Y1を調整役として、Y14及びY15に本件合意への参加を呼び掛けることとし、Y14及びY15は、Y1に対し、これに応じる意思を表明した。そして、Y1は、Y2ないしY13に対し、Y14及びY15が本件合意に参加することになったと伝えた。よって、Y1ないしY15間に意思連絡が認められる。Y14は、本件合意の参加者の正確な範囲を知らないが、X県所在の有力な業者の多くが本件合意に参加する意思を表明している旨を伝えられており、隣県所在の業者であるY14とすればY1ないしY13が参加していることは予想できる。
(3) よって、「共同して」に当たる。
3 「拘束」は、事実上のもので足りる。
(1) Y1ないしY13は、本件各工事の入札活動を本件合意に従って行うことになり、事業活動が事実上制約される。Y15は、Y1から、Y15が本件各工事の受注を希望すればY15を受注予定者とすることもあると告げられている。よって、Y1ないしY13とY15との間に、貸し借りの関係が認められる。
(2) これに対し、Y14は、そもそも本件各工事に受注希望はなかったし、実際、落札した工事もないので、一方的に拘束されているにすぎないとも思える。しかし、Y14が本件合意に参加したのは、追加工事の発注があった場合に、Y14が受注を希望したとき、Y1ないしY13側の協力を期待したからである。Y14は、Y1に対して見返りに関する質問をしておらず、上記期待はY1ないしY13側に伝えられていないが、Y1ないしY13側としても、追加工事でY14に協力しなければ本件各工事におけるY14の協力も期待できなくなるので、追加工事で協力することが事実上拘束される。
(3) よって、「相互にその事業活動を拘束し」に当たる。
4 「一定の取引分野」とは、市場をいう。
本件各工事の入札市場が、本件合意の対象として、「一定の取引分野」に当たる。
5(1) 「競争を実質的に制限する」とは、市場支配力を形成維持強化することをいう。
(2) Y1ないしY13は、技術力の高い有力な事業者である。アウトサイダーとして数社が存在するが、技術力が高くなく、落札した工事もなく、有力な牽制力を有しない。Y14は、本件各工事の受注希望を表明することはなかったが、技術評価点の予測値をY1に提供するなど、協力している。これに対し、Y15は、後述のように本件合意への参加の意思を撤回している。しかし、Y15の技術力や確保できる作業員数の見込みなどに照らして、Y15が本件合意への大きな脅威になることはないとY1は判断しており、実際、Y15が落札したのは1件にすぎない。よって、Y15も有力な牽制力を有しない。20件の本件各工事のうち19件で、本件合意に基づく調整の結果どおり、Y1ないしY13が落札している。よって、落札者及び落札価格を左右できる市場支配力を形成維持強化するといえ、「競争を実質的に制限する」に当たる。
6 不当な取引制限は、基本合意時に成立する。基本合意後の脱退は、離脱の意思が他の参加者に了解された場合に認められる。
Y15は、調整役であるY1に対して本件合意に参加しないことを明確に伝えている。しかし、Y1は、Y15の離脱の意思をY2ないしY14に伝えていない。Y15は、本件合意の参加者がY1ないしY14であることを知っているのだから、離脱の意思をY1ないしY14に伝えることができるのに伝えていない。よって、離脱は認められない。
7 以上より、2条6項に当たり、3条後段に反する。
(1633字)
経済法第2問
第1 設問1
1 措置1は、拘束条件付取引(2条9項6号ニ・一般指定12項)に当たり、19条に反しないか。
(1) 「拘束」とは、人為的手段により行為の実効性が確保されていることをいう。
販売店にとってXの甲を取り扱うことが不可欠となっていること、メーカーによる販売促進や技術面の支援が重要な意味を持っていることからすると、取引先販売店は、同支援において不利な扱いを受けることを避けるため、措置1に従うと考えられる。よって、上記不利な扱いをする旨示唆するという人為的手段により行為の実効性が確保されており、「拘束」に当たる。
(2) 市場画定は、商品及び地理的範囲について、主として需要の代替性を考慮して行う。
甲の代替品は存在しない。よって、需要の代替性を欠き、商品市場は甲に画定される。地理的市場については特段の事情がない。よって、市場は、我が国における甲の販売市場に画定される。
(3) 「不当に」とは、公正競争阻害性のうちの自由競争減殺、すなわち、競争の実質的制限に至らない程度の競争制限効果を生じさせることをいう。
Xは、上記市場において45%・第1位のシェアを占める有力な事業者である。措置1は、取引先販売店の全てではなくYの甲を積極的にユーザーに推奨しているものに対して個別に行うものであるが、見せしめ効果が取引先販売店に広く及ぶと考えられる(実際、取引先販売店の間で、Xから不利な扱いを受けた販売店があるとの情報が流布している)。甲のユーザーは、販売店の助言や推奨によってメーカーを選定する傾向が強いから、Yの甲が積極的に推奨されなくなることにより、Yの甲の売れ行きが落ちると考えられる。よって、競争者排除という自由競争減殺が認められ、「不当に」に当たる。
(4) したがって、措置1は、拘束条件付取引に当たり、19条に反する。
2 措置2は、排他条件付取引(2条9項6号ニ・一般指定11項)に当たり、19条に反しないか。
(1) 「条件として」とは、人為的手段により行為の実効性が確保されていることをいう。
専らXの甲を推奨するという約束の履行状況を確認するために、モニタリングを実施し、必要に応じ指導を行い、改善されない場合にはリベートの不供与及び販売促進や技術面での支援策削減を通告している。上述のように、同支援は重要であるから、特約店は、同支援を得るために、措置2に従うと考えられる。よって、人為的手段により行為の実効性が確保されており、「条件として」に当たる。
(2) 市場は、上述のように我が国における甲の販売市場に画定される。
(3) 上述のように、Xは有力な事業者である。また、特約店は取引先販売店の60%を占め、措置2の対象が広く及ぶ。特約店が専らXの甲を推奨することにより、ユーザーが他社の甲を選択しなくなり、他社の甲の売れ行きが落ちると考えられる。よって、競争者排除という自由競争減殺が認められ、「不当に」に当たる。
(4) したがって、措置2は、排他条件付取引に当たり、19条に反する。
第2 設問2
措置1及び措置2の全体は、私的独占(2条5項)に当たり、3条前段に反しないか。
1 「排除」とは、他の事業者の事業活動を継続困難にし、又は、新規参入を困難にすることをいう。
上述のように、上記行為は、他社の甲の売れ行きを落とし、他社の甲の販売活動を継続困難にするものであり、「排除」に当たる。
2 「一定の取引分野」とは、市場をいう。我が国における甲の販売市場が「一定の取引分野」に当たる。
3 「競争を実質的に制限する」とは、市場支配力を形成維持強化することをいう。
上記市場において、Xのシェアが60%という過半数に達している。また、低価格のYの甲を取り扱う販売店が増えていない状況にある。よって、Xは市場支配力を形成維持強化するといえ、「競争を実質的に制限する」に当たる。
4 したがって、私的独占に当たり、3条前段に反する。
(1599字)
公法系第1問
第1 規制①
1 顔を隠して集団行動に参加する自由が、集会の自由として21条1項により保障される。
2 規制①は上記自由を禁止しており、上記自由が制約される。
3 顔を隠すことにより、デモの報道で顔が映る心配がなくなり、就職活動や職場のことを気にせずデモに参加できるようになる。よって、上記自由は、萎縮せずに集団行動に参加できるようになる点で重要な権利である。
もっとも、顔を隠すこと自体に特定のメッセージが込められているわけではない。よって、顔を隠すことを禁止することによって、伝達される情報量が減少することはない。したがって、規制態様が強度とまではいえない。
そこで、目的が重要であり、手段が実質的関連性を有する場合に合憲となる。
4(1) 目的は、集団行動における公共の安全を害する行為を防止することである。
公共の安全は、それ自体重要な法益である。
また、顔を隠した参加者の一部が、商店のショーウインドウを破壊したり、警備に当たる警察官を負傷させたりし、それぞれ数十人が逮捕される事態が生じている。
よって、上記目的は重要である。
(2)ア 顔を隠すことによって、誰がやっているか分からないという感覚が生じて、普段はしないような行動に走る面がある。規制①により、かかる行動に出ることを防ぐことができる。よって、適合性が認められる。
イ 規制①が設けられた原因は、大規模なデモの最中に暴力的な行為が散発的に行われることから、対応が困難である点にある。そうすると、規模を縮小して許可したり、時間を限定して許可したりすることにより、警察が対応できる。よって、より制限的でない他の手段が存在する。したがって、手段の実質的関連性を欠く。
5 以上より、規制①は21条1項に反し違憲である。
第2 規制②
1 報告義務の対象となる機関紙やウェブサイトは、誰もが見ることができるし、SNSも、そのサービスの利用者であれば自由に閲覧できる。よって、これらの情報それ自体はプライバシー外延情報である。しかし、A2は、団体の構成員をある程度把握している。そうすると、構成員が個人名義のアカウントを使って流布している団体の主張を、SNSを調査することによりA2が収集し、その情報と上記外延情報と照らし合わせることにより、団体の政治的主張というプライバシー固有情報を把握されるおそれがある。よって、上記外延情報を収集されない自由は、人格的生存に不可欠であり、幸福追求権(13条後段)として保障される。
2 規制②は、上記外延情報の報告を義務付けており、上記自由を制約する。
3 上述のように、上記自由は重要である。そこで、目的が必要不可欠であり、手段が必要最小限度である場合に合憲となる。
4(1) 目的は、集団行動における公共の安全を害する行為を抑止する点にあり、上述のように、重要である。また、大規模なデモを許可する限り、散発的に行われる暴力的な行為を事前に予測することは困難である。
そこで、目的が必要不可欠といえる。
(2)ア 逮捕者の半数ほどは、団体の構成員ではない者であった。また、団体は、ウェブサイトやSNSに限らず、様々なルートで公共の安全を害する行為を助長する可能性がある。そうすると、規制②だけでは目的達成に不十分であり、適合性を欠くとも思える。
しかし、適合性が認められるためには、完全に目的が達成できることまでは必要ない。逮捕者には団体の構成員が相当数含まれていたし、団体がウェブサイトやSNSで上記行為を助長する可能性がある。よって、規制②は目的達成に資するので、適合性がある。
イ 処罰された構成員が全体の10%以上という基準によって、指定の対象を、実際に問題を起こした団体だけに絞り込むことができる。よって、他の手段はないといえ、必要不可欠といえる。
5 したがって、規制②は合憲である。
(1563字)
公法系第2問
第1 設問1(1)
「処分」(行訴法3条2項)とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為により直接国民の権利義務を形成し、又は、その範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
本件不選定決定の根拠規定は、本件条例26条1項である。本件条例25条3項の委任を受けたA市屋台基本条例施行規則18条は、屋台営業候補者の選定を受けようとする者を公募「申請」者と規定する。本件条例26条3項は、選定を行った旨を当該屋台営業候補者に通知しなければならないと規定しており、行政庁の応答義務を規定する。よって、屋台営業候補者の選定は、申請(行手法2条3号)に対する処分に当たる。したがって、本件不選定決定は、申請拒否処分に当たり、「処分」に当たる。
第2 設問1(2)
昭和43年判例は、競願事例において、免許不許可処分と免許許可処分とが表裏一体の関係にあることから、免許不許可処分を取り消せば、取消判決の拘束力(行訴法33条1項)により、免許許可処分が取り消される可能性があるとして、免許不許可処分の取消しを求める訴えの利益を肯定した。
A市屋台営業候補者募集要項によると、屋台営業候補者の公募に応募する者は、営業希望場所(1か所)を明記した応募申請書を提出する。そして、営業希望場所ごとに各1名が屋台営業候補者として選定される。よって、同選定は競願事例に当たる。そうすると、本件不選定決定の取消判決を得れば、その拘束力により、本件候補者決定が取り消される可能性がある。よって、Bは、本件不選定決定の取消しを求める訴えの利益を有する。
第3 設問2
1 本件不選定決定の根拠規定たる本件条例26条1項が選定要件を定めていない趣旨は、地域の実情に通じた市長の専門的要件裁量を認める点にある。ただし、判断内容が社会通念上著しく妥当性を欠く場合は、裁量権逸脱濫用として違法となる。
Bは、本件区画で10年以上も屋台営業を行ってきて、A市とのトラブルもなかった。そうすると、Bを選定することが、まちににぎわいや人々の交流の場を創出することに資するといえる。Bは、他人の名義を借りて屋台営業を行ってきた者であり、かかる名義借りは、法33条1項の許可基準を潜脱するものとして法的保護に値しないとも思える。しかし、名義貸しの問題は、A市議会でも繰り返し取り上げられてきたが、長年にわたり手付かずのままになっていた。そうすると、名義借りは、悪質な行為とまでは評価されていなかったといえる。よって、Bの地位に対して配慮する義務が信義則上認められる。同義務を尽くさずに本件不選定決定をすることは、判断内容が著しく妥当性を欠き、違法である。
2 本件条例26条2項は、規則で定める基準に基づき屋台営業候補者を推せんする旨規定する。屋台営業の実績は、A市屋台基本条例施行規則19条の基準に含まれていない。同実績を考慮して審査するという委員会の申合せは、不合理である。そうすると、委員会の推せんに従わなかったこと自体は不合理ではない。しかし、市長は、市長選挙での公約を実現するために本件不選定決定をしており、判断内容が社会通念上著しく妥当性を欠く。よって、違法である。
(1315字)