オスカル・フランソワさまのモノローグ。

(※『☆新たなる地獄への旅立ち』シリーズと対(ツイン)をなしております)

 

『☆新たなる地獄への旅立ち』シリーズの、前日夕刻のひとコマです。

 

 

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片時も離れずにいたい、おまえと。
もっともっと近くに来てほしい、おまえに。

 

これは、恋……なのだろうか?

 

恋なら、した。
あの頃、わたしはどんな気持ちだったろう?
そのひとを秘かに目で追った時のときめき。
そのひとのまなざしがあのかただけに注がれていた苦しさ、寂寥。
そのひとが遠い戦いの地から帰らなかった時の不安、焦燥。
そのひとと踊った時の夢心地。

 

あ…あ、今は... 今は...?

 

もしかしたら、今にも荒れ狂いそうな世への底知れぬ不安が、
慣れ親しんだ温もりに満ちた巣に、自分を逃げ込ませたくなって
いるのだろうか。
...それは否めない…と、弱い自分を認める。

 

いつでもわたしの傍らにある確かなもの。
おまえはどんな時でもわたしを受け入れてくれる。
それを知っていて、おまえに甘えてしまうずるいわたし。

 

それでは、おまえを思うと、なぜこんなに体中が熱くなるのだろう...
とけてしまいそうに... この甘いうずきは何なのだろう......

 

いつしか、唇に指を触れていた。

唇が…さびしい。


ふと気づくと、屋敷の南庭まで来ていた。
ばらの植え込み。もうすぐ満開だ。
花びらの一枚に手を伸ばし、花芯から抜こうとして、
なんとはなしに躊躇われた。
おまえのいちばん好きな白いばら。
わたしは手をおろして、その花びらに唇を寄せた。

 

〝白いばらを見に行こう〟
そう誘えば、おまえはきっと一緒に来てくれる。
ずるいわたし。

けれど、なんであれ、おまえと一緒にいられる口実を
掴まずにいられない。

 

 

 

 

『✿開花への新たなる旅立ち② ≪出勤前の珍事≫』に続きます≫