急な通り雨が上がった夕方

畑で友人と立ち話をしていると突然友人が視線を遠くにずらして

叫んだ。

「あっ、虹だ。」

振り返ると通り過ぎた雨雲の方向にきれいに半円を描く虹が

かかっていた。

友人は甚く感動したようで「すごい!」を連発した。

こんなに大人がはしゃぐような出来事は滅多にあるものではない。

「きっといいことがあるという予兆だよ。」

そうだね。きっと。

 

いいことがあるかどうか、

それは自身の生き方が引き寄せるものだよ、と

壮大な円弧の自然現象が語り掛けていたような

立冬を過ぎた日の夕暮れ時。

 

 

 

 

 

各国のアスリートたちがナショナルフラッグを背にして闘うオリッピックは、1年半の間、コロナ渦で制限のかかった日常生活で

鬱々とした日々を送っていた世界の人々にとって、日頃の感情を発散して熱狂できるまたとない機会だった。

開催を危ぶまれていた東京五輪は世界から絶賛され、様々なドラマを生んで閉幕した。

人生や命さえもかけ、困難を克服して臨んだ多くのアスリートの姿勢に何度も胸を打たれた。

その中でも、金メダルを取った日本ソフトボールチームの上野投手の言葉が印象に残った。

 

  「360度、すべてが前」

  「自分の周りはどこを向いても360度すべてが前。後ろはない。」

  「しっかり前を向いて歩いていけばそこにゴールがある。

  自分がここだと思った方向ならばどこを向いていてもいい。

  遠回りしようが何しようが歩みさえ止めなければ必ずゴールにたどり着く。

  これ以上怖いものは何もない」

 

上野選手は、20008年北京五輪の決勝トーナメント2日間3試合で413球を投げて完投。

史上初の金を勝ち取った。

しかし、その後ソフトボールはロンドン大会、リオ大会と2大会連続でオリッピックの正式種目にならず、大きな目標を失っていた。

2013年9月、IOC総会で東京開催が決定。

2016年8月にソフトボールの正式種目が決定し、やっと大きな目標が復活したが、
「あれ(北京大会の600球に亘る力投)をもう一度やれって言われたら無理だと思います」と語っていた。

そこへ、2019年国内リーグで打球を受けてあごを骨折、骨を金属で繋ぐ重症を負った。

この怪我で「本気でやれ!と言われてる気がした。毎日を五輪のためにやろう、と」
自分の武器に気づくこともできたと言う。

 

「“日々全力”ってくらいに必死です。だんだん身体のキレもなくなるし、試合前にアップしていても重たいなって感じますから。

前みたいに手を抜く余裕がなくなってる」

北京大会で26歳だった上野も、年齢を積み重ねたことでコンディショニング管理が非常に難しくなっているところへ、

新型コロナウイルス禍による1年延期というまさかの事態。30代と言えどもアスリートにとって加齢は体力の劣化に大きく影響する。

 

「これが“自分が背負っているもの”だと思っていましたし、このマウンドに立つために13年間いろいろな思いをしてここまで来られたと思います。

そういう意味では『投げられなくなるまで絶対投げてやる』という思いで先発マウンドに立ちました」

2021年7月21日、自らの39歳誕生日を翌日に控えた東京五輪開幕戦の先発マウンドに上野は立った。

 

 

 

 

 

農学校に通い始め、市民農園を借り始めて2ヶ月。

農業の勉強を始めると、元来器用な方ではないので、

学びのひとつひとつに毎日の時間がほぼそれに費やされるため、

日課だったウォーキングが2週に1度と激減した。

週1回の実習と月に1度の講義で得られる理論と技術を復習し、理解が難しい場合はyoutubeで農業を実践している多数の動画を参考にして習得する。

そして、借りている市民農園の圃場で栽培する品目、株数、時期をプランニングして、作業スケジュールと必要な購入備品リストを作って、見よう見まねで恐る恐る実践をしてみる。

ちょっとした雨で水溜まり状態や泥沼状態になる圃場に対して、

体力の無さを嘆きながら鍬を振るって格闘し、何回か土壌改良と土の掘り起こしでスケジュールの変更を繰り返す。

 

また、作物が育ちやすい土の作り方、品目別野菜の栽培方法と

作業技術、病虫害の実態と防除法など大筋の理論はあるものの、実作業の方法は教える人によって微妙に、また正反対に違うことも多いが、それはどの業界でも言えること。

私の在籍していたサービス業は「人」(お客様)を対象とした仕事。

農業は、気候(温度、日照量、雨量、風力)、土壌(質)、種苗(良し悪し)、病害虫(原因の見立てと処理法)という「自然」を対象とした仕事でどちらもセオリー通りにいかないことの方が多い強敵だ。

前職と同様に、農耕という仕事の現実的な全体像と自身の方向性は、数年の実経験で様々なケースに当たっていかなければ見えてこないことは十分承知している。

 

新しい業界の見習い、1年生、駆け出しの私が、作業日誌を付けながらそんなことを考える日々を実は楽しめているのは、やっぱり仕事の対象が「人」じゃないからだろうなぁ。

 

 

1ヶ月前に農業学校の実習で鍬の使い方をプロ農家の講師に教わりました。

講師曰く「1日6~7時間は鍬を振るうので疲れないように使うのがコツ」

えぇ!プロはそんな長時間、鍬を振るうんですか?

中学生のころ、田舎で祖母の畑仕事を手伝ったときに鍬も鋤も使った経験があるが、体力的に1時間と続かなかった覚えがある。

なので、私には無理、

と思っていた。

 

農業学校の実習と並行して市民農園の1区画20㎡(6坪)を借りて草刈りや、

土壌改良のための「天地返し」という土起こし(40センチほど掘り起こして下の土と上部の土を入れ替える)、堆肥や基肥の散布の都度何度も鍬で掘り起こしを行う。

最初は、たかだか6坪は余裕だろうと高を括っていたが、腰の痛みに耐えかねて3分鍬を振るって30秒休むのを繰り返すため、中々捗らない。

日暮れに差し掛かっても3分の1ほどやり残しがある。

今日はもうやめようか、とも思うが何だろう。義務感? 使命感? 全然違う。

ただ手つかずの部分を残して投げ出したくない一心で、動きが鈍くなった体を押して最後まで鍬を振るう。

 

そんな日が半月ほど続いて、気づけば1日6時間程度、昼を挟みながら黙々と

鍬を振るっている自分に気が付く。

慣れなのだろうがプロ農家さんの仕事量に少しは近づけているのかなとちょっと

嬉しかった。

 

一方で、ウォーキングの方は週に1回程度に減ってしまったが、先週月曜日に久しぶりに歩き&走った。

歩きもそうだが、特に走りは安定感が付いた上、疲れない。

畑仕事で、上肢に筋肉が付いたのは分かっていたが、腰の筋肉も鍛えられたようで体幹が向上したようだ。

おかげで1年半ぶりにベストタイムも更新した。

 

これで、身体全体の筋肉アップの環境ができたわけで、当面は健康体が継続できそうだ。

 

市民農園を借りて、草ぼうぼうの1区画20㎡(6坪)の草刈りを

始めたのが4月14日。

まずは土壌改良を、ということで土を掘り起こして分かったこと。

大層な粘土質で、雨が降るたびに区画周囲に掘った溝に水が

溜まって2~3日引かない。乾けば石のように固まってしまう。

この農園を古くから利用している方に聞くと、この土地は元は池だったそうな。さもありなん。

排水性を上げるため土壌改良剤をいくつか散布して深さ40センチほど掘り返しては1週間ほど寝かす。

寝かしている間に比較的強い雨に降られては泥沼状態になる、と

いうことを2度繰り返した。

それでも何とか本日、トマトときゅうりの苗の定植、大根の種蒔きを終えることができた。

植えた苗に十分な水を掛けるようにと農学校の実習で教わっていたので水遣りを終えた頃に、本格的な雨にたたられた。

結果、水の遣りすぎ。

明日、早速状態チェックをしなければ。

 

農作業は天候に左右されるとはわかっていたが、実際に始めて

みてその手強さを実感した。

農業の入り口に辿り着いたというところか。

 

晴耕雨読、という理想的な状態に至るには、体力も作業手順も

余裕なさすぎ。