「豊後はるていす」                   大分県竹田市  但馬屋老舗

 

 

  このお菓子は 「ニッポン全国和菓子の食べある記」 という本の中でこう紹介されていた。

  「……上下の薄い生地は小麦粉と卵にアーモンドプードルを加え……間に挟まれたのは麦こがしですが、小豆こし餡が加えられて……最後に胡椒の香りが感じられるのです」と。

  うーむ!和菓子に胡椒を使うという斬新さ。ぜひ食べてみたいと思った。

 

  実食!残念ながら、胡椒の香りはわからなかった。いかんせん、このお菓子一個が小さい。

決しておちょぼ口とは言えないない私が、飲み込んでしまわずに、考えながら、味わいながら、胡椒の香りをさがしながら食べることは、至難の業だった。一つの大きさは、たて4,2㎝×よこ2,5㎝×たかさ1㎝。このサイズだと4個くらい食べないと感想にたどりつけない。しかし1個150円である。4個食べるとしめて600円。続けて4個いっぺんに食べれば、わかったかもしれない。が、お菓子はのんびりゆっくり、きままに食べたい。

 

  しかしこのお菓子の価値は、胡椒の香りうんぬんとはもっと別のところにあるのだ。そもそもこれは、江戸時代初期に書かれた「南蛮料理書」に記されている「はるていす」というお菓子を現代風にアレンジしたものであるということ。それこそが一番大事なポイント。南蛮文化が栄えた土地だからこそ、現代につながって存在する貴重なお菓子なのだ。オリジナルを食べた日本人は、初めての異国の味をどう感じたのだろう。最初から美味しいと、この味を受け入れられたのだろうか。一等最初、お菓子の作り方はどうやって伝えられたのだろう、言葉は通訳が立ち会ったのだろうか、道具はどうしたのだろう。興味は尽きない。

 

  今から260年前には、この菓子店「但馬屋老舗」のある竹田あたりで作られていたという「はるていす」。はるか昔に思いをはせながら食べることのできるお菓子。もとはといえば異国の人が伝えてくれた南蛮菓子。歴史的に意味のあるお菓子。

  作りつがれていってほしい。

  そして出来ることなら、せめて今の2倍の大きさになってくれると有難い。