「薫ー!!」
「あ、理佳。おはよ」
「おはよ!!はい、お弁当」
「ありがとう。…嬉しいけど、無理して作らなくていいからね」
薫は無表情のまま、そう言った。
彼、永田薫は私、志村理佳の恋人。……でも、薫が私のこと好きでいてくれている自信はない。そもそも、薫が私と付き合ってくれることになったのも私が押して押して押しまくったからだ。
今の発言に限らず付き合ってからの薫の言葉は形式的に言ってるのか私のことを想っての発言なのかわからない。
「私が作りたいだけだよ!!だから、遅刻しそうなときとか体調が悪いときは無理しないから!!」
この発言に嘘はない。
私が作ったお弁当を薫は毎回米粒ひとつ残さないで食べてくれる。それが嬉しくて、そして喜んでくれてるかはわからないけど嫌がってはないってことがわかるから無理しない程度に片想いのときからずっとお弁当を作り続けている。
……それが唯一薫の気持ちの片鱗が見える部分だから…。