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●出会い その3
「ライブの途中ですが、ここで一曲、友達のシンガーに歌ってもらいます。」
Rくんが、客席から一人の女性をステージに招き寄せた。
ゴトゴトと椅子を動かす音がして、
赤いニット姿の女性が、笑みをうかべながら前にでてきた。
年のころは・・・、60代、いや70代かもしれない。
ふくよかで、というより太っていて、
ニットもずいぶんと、着古した様子。
失礼を承知で言うなら・・・
シンガーというより、
スーパーで買い物中のおばさんという感じ。
「彼女は、ふだんは、九州にいるんですけど、
震災のイベントで共演させてもらったときに、
すごく感動して、それ以来のつきあいです。
今日は、たまたま東京に来ているというので、
僕のライブに来てもらいました。それでは、何かお願いできますか?」
彼女は、背中をまるめて、恥ずかしそうにマイクを受け取った。
「こんな若い女性たちの前で歌えるなんて嬉しい。
じゃあ、聴いてね」
♪~~~ ♪~~~~ ♪~~~~~
初めてだった。
♪~~~ ♪~~~~ ♪~~~~~
私は、自分でも驚くくらい、号泣してしまったのだ。
歌は、坂本九さんの「上を向いて歩こう」
はじめ、歌っているのかも分からないほどかすれていた声に
なぜか、どんどんひきこまれ・・・
全身から、詞の世界があふれでてきて、
目の前に夜空がいっぱいに広がるのを感じた。
世の中には、
こんな歌があるのだ。
「リサ、大丈夫?どうしたの?」
隣にいた佐知子は、私の嗚咽を聴いて驚いていた。
はちきれんばかりの拍手の中、背中をまるめたままで席に戻った彼女は、
気持ちよさそうに目を閉じた。
どうしよう、彼女から目が離せない。
話しかけたい・・・
でも・・・
でも・・・
でも・・・
ここでいかなきゃ後悔する。
ステージが終わり、佐知子がトイレに行っている間に、
私は、思い切って席をたち、彼女のそばへ歩み寄った。
「あの、素晴らしかったです」
「まあ、ありがとう。」
彼女は、お酒で赤くなった顔で私を見上げた。
「どうやって、歌っているんですか」
言ってから、なんという質問なのかと思ったが、
彼女は意味を取り違えたようだった。
「歌わせてくださいってお店に頼んで、歌ってるのよ」
私が、口ごもっていると、
「だって、頼まないと歌えないもの。3年前、夫が亡くなってから歌おうって決めたの。
まだヨチヨチのシンガーで~す。」
と、茶目っ気たっぷりに首をすくめた。
次回へつづく・・・こちらも
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