最高傑作を作るぞといきまいていましたが、なかなかオーナーから作品の依頼が来ません。
退屈しのぎにそばにあった粘土のようなものでいくつか小さなものを作ってみましたが、なんだか満足できませんでした。
だんだん作品が大きくなっていきました。
ついにアトリエからはみ出すような作品になってしまいました。
オーナーに気づかれたようです。
アトリエを壊されたオーナーは、巨大なオブジェに驚嘆の声をあげました。
「まるで新生児みたい!」
そうこの芸術家は、赤ん坊作家だったのです。
しかし、材料が足らないまま作った作品は、似ても似つかないものに。
オーナーに作品の撤去とアトリエからの退出を指示されました。
「あーあ、おれはなんで生きてきたんだろうか?
それにしても、オーナーが望まなかった赤ん坊を作り出せたおれは、なんて天才なんだろうな…
しかし、なんでオーナーはおれが赤ん坊を作り出したと思ったんだ?
ははは。
もしかしたら、心の底では欲しかったんじゃないのか?」
そういうと、その芸術家は姿を消した。(終わり)