疑っている限り、それを止めることは出来ない。
やはり、それは誰かが撮した風景なのか?
勇気があれば止めれるものでもない。
何とかしようと、手を伸ばすがそれは偽物の風景かもしれない。
例えば、目の前の座席に残る手帳は、ほんとに自分が行きたい方向に向かいたいのか?
持ち主の誰かが思い出して、引き返して来てもらいたいが。
現実とはうまくいかないものだ。
路面電車は、やがて進み始める。
しばらくして、誰かが手帳の旅を止めた。
拾い上げて、運転士に落とし物だと告げに行った。
私自身はもう少し、旅をさせてもいいと思っていた。
だが、それでは一つの席が埋まらない事になる。
手帳は、持ち主のもとに帰ることはできただろうか。
まだ、手帳の旅は続いているのかもしれないが。(終わり)