(過去作品)とりかごのかげ① | ネムリ・モヤのブログ

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アートと旅と食を愛す孤高の仮面ライダー好き女

 ぼくは、とりかごをひろった。水色のとりかご。天井がまるくなってる、ほらほら、そんなとりかご。どんな鳥をかおうか、それとも、何もかわないで、とりかごだけにしておこうか。
 とりかごが、おちていたのは、石がところどころで、あつまって、あとは何もないところ。そんな石の上にあった水色のとりかご。それを、ぼくは、ひろってもってかえろうとしている。
 なんだか、ぼくは、今までみたこともない……でも、まえからほしかったものをひろったような気がする。

 ぼくは、あるく。でも、ぼくの家のほうなんかじゃない。ぼくは、その水色のとりかごを、てさげかばんのように持っていた。
 ぼくは、このまま、どこまでも、あるいていって、ぼくの足で、どのぐらいまでいけるのか、ためしてみたいと思ったからだった。

もう少し先に進むと、ぼくよりいくつか年下の少年が、また、これも石の上に、しゃがんで、顔を足にうずめている。
「こんなところで、何してるんだ?」
 すると少年は顔をあげていいました。
「そっちこそ。……あ……そのとりかご」
「さっき、むこうで、ひろったんだよ」
「そうなの。それ、ぼくが、さっき、すてたとりかごだから……、かまわないよ」
「……きみのだったの」

 少年は、ぽつりぽつりと話をはじめました。
「ぼくの鳥、いなくなっちゃった。だから、とりかご、すてたんだよ」
「こんなかっこいいとりかごなのに。すてるなんて」
「あっても、中に入れる鳥がいないから」
 少年は小さくほほえんだ。
「じゃあ、このとりかご、もらうね」
 そこで、ぼくと少年は、一度はわかれたのだった。

 ぼくは、あるいていた。このとりかごに入る鳥をさがすためだよ。ぼくは、さっきまで、ただ、あるくことしか考えてなかったけれど、ぼくは今度は、鳥をさがすために、あるくんだ。
 何も入っていない空っぽのとりかごは、ただ重い荷物。でも、その中に鳥という、小さなプロペラを持った生き物が入ると、とりかごにも生命が、やどっているかのように、大事に持つことができる。


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