「夜ごはん何にしようかな」って↑山田セツコ(38歳)はスーパーマルナカヤマの食料品売場で考えていた。魚にしようか、肉にしようか。悩んでいたのである。
 
毎度の事ながら、考えながら買い物をするのが億劫なのだ。買い物も料理も嫌いなわけじゃない。むしろ好きな方だ。だけどあれこれメニューを考えるのが億劫なのだ。
 
どこかの司令塔から電話で「今日はハンバーグにしなさい」とか「冷しゃぶにしなさい」とか「ぶり大根にしなさい」とか指令があったら便利なのにな~。
ってセツコは最近思うのだ。つまり面倒なのだ。
 
スーパーマルナカヤマヤの食料品売場でどうしたものかはてなマークと長々考えていた時にセツコの携帯が鳴った。夫のカズミからだった。「じつは急に取引先の人と飲む事になったので、夕飯は要らないよ~」とカズミが言ったのだった。
 
「うん、わかった。」セツコは答えた。
 
セツコは少し嬉しくなった。今日はもう考えなくていいんだ。
 
とりあえず、カズミが家で飲む缶チューハイを2本買って、店を出た。
 
目の前には吉野家があった。
 
「たまには一人うし丼にするか。」セツコは吉野家に入った。
 
カウンターに着席した。セツコは若い頃、うし丼屋に入れなかった。女子はうしが怖かったのだ。うしも女子が怖かったのだ。そんな時代だったのだ。今では女子の一人うし丼は普通なのである。時代は変わったのだ。
 
並を注文した。
 
すぐに着丼した。

うし丼を食べるのは何年ぶりだろうはてなマーク
 
前の会社にいた頃、先輩の木田さんと来た事があった。東京八重洲口にある吉うしだったっけ。
セツコはうし肉を食べながら思い出していた。
 
そこへ一人の軍人が現れた。後の竹ノ塚大佐である。
 
 
つづく。