大学1年の3月末、私は長すぎる春休みの終わりにある決断をした。
「ひとり旅に行こう。」
金はないが、時間だけはある大学の春休み。
まじで暇だったのである。
ここで友達と〇〇へ旅行!!とならないのが悲しい。ぼっち根性が骨の髄まで染み込んでいる。
私の動き出しは早かった。
守銭奴の愛称で親しまれる私が初めに行ったのは、地方で一人暮らしをする同期に宿泊の許可を求めることであった。
もちろんホテル代をケチるためである。
これに関しては、京大に行った同期2人が快諾してくれた。
特に旅の行き先は決めていなかったのだが、この時点で京都まで行くことは決定した。
青春18きっぷを使って贅沢に5日間の旅を予定していた。
私は考えた。
2週間ほど来る日も来る日も旅の計画を練っていた。
そしてたどり着いた答えが以下の行程である。
1日目
東京→名古屋→京都
2日目
京都→鳥取
3日目
鳥取→天橋立→舞鶴→京都
4日目
京都→福井→東尋坊→彦根
5日目
彦根→豊橋→浜松→東京
お気づきだろうか。
1日目と3日目で京都に泊まっている。
京都の同期2人の家に1日ずつ泊まることで2日分の宿泊費を抑えようとしているのだ。
なんと狡い人間だろうか。
とまあそんな自己嫌悪を1ミリくらい感じつつ私のひとり旅はスタートした。
1日目
前日にワクワクしすぎた結果、全く寝つけず家を出たのは10時ほどだったと思う。
寝坊しても誰にも怒られないのがひとり旅の良い所だ。
前述の通り、私は青春18きっぷを使っていた。
つまり、新幹線に乗れないということだ。
サラッと書いたが、この事実は長距離移動するにあたってはかなり深刻な問題である。
1日目の車中はずっと本を読んでいた。そのため何も面白いことが起きていない。
ちなみに読んでいたのは城山三郎の『今日は再び来らず』という小説である。
高度経済成長期の大学受験予備校の世界を描いた作品だ。
せっかく大一の夏休みをめいいっぱい楽しもうと旅に出たのに、がっつり浪人期を思い出して微妙な気分になってしまった。旅の序盤で過去を振り返ることになるとは全くもって不本意である。
しかしながら、小説自体は面白いため普通におすすめである。
さて本題に戻る。
その後は、昼に名古屋でひつまぶしを食おうと思っていたのが、腹が減りすぎて我慢できず、浜松で下車して餃子を食べた。
ちなみに浜松で泊めてくれる同期へのお土産としてうなぎパイでも買っていこうと思ったのだが、春華堂が臨時休業していたため名古屋で降りてうなぎパイを購入した(うなぎパイ大好きマン)。
そんなこんなで、京都駅に着いたのは夜の19時を少し回った頃だった。
あらかじめ泊めてくれる友人Iからは下宿先の位置情報をLINEでもらっていた。
少し駅からは遠いようだったが、道自体は分かりやすそうであったので、私は歩いて向かうことにした。
これが初日の最大の失敗である。
京都駅を出発した私は日々の散歩で培った脚力を存分に活かしながら大通りを進んだ。
しかし、15分ほど歩いたところで違和感を感じる。
地図を確認しても全く進んでいないのだ。
「まあでも半分くらいは来てるし」
などと言い聞かせながら歩を進める。
さらに15分後
おかしい、明らかに進んでいない。
ここに来てようやく私は気づいた。
「これってもしかして歩きじゃいけんくない?」
そう、Iの家は京都駅から鬼みたいに遠かったのだ。
そういえば、「まじで歩きで来るの?」「電車で来た方が早いよ」などとIが言っていた気がする。このことを知っていたならもっと強硬に止めて欲しかった。
「今日のIはやたら心配性だな、熱でもあるんじゃないか」
などと思っていた自分が憎らしい。
そもそもよく見たら京都から地下鉄で5,6駅ほども離れているではないか。
こんな距離を徒歩で行こうとする自分の頭の心配をするべきだった。
重たい荷物を引きずりながら彼の家に着いたのは20時半くらいだったと思う。1時間半近くもかかったのだ。
「てめえの家は遠すぎる」、「大学近くに引っ越せ」
等々遅れたくせにブーブー文句を垂れるクソ野郎の私を、Iは美味しい中華料理屋に連れて行ってくれた。
さらにはチャリで夜の京大を案内してもらった後、何やら趣深い銭湯にも連れて行ってくれた。
久しぶりに会う同期はとても良いものだった。
これで完全に機嫌を直した私は、朝が早い翌日に備え、図々しくも人の家で快眠を貪るのだった。