次の日、お見舞いに行くとひなは激怒していた。
「まあ、怒れる元気があるのはいいことです」とお医者さん。
点滴だけで少し回復したらしい。
生きているのがありえないほどの赤血球の数なのに。
しかし、午後の採血でも結果はよくなっていなかった。
あと数年しか生きられないなんて寂しいな、
あと何回いっしょにお誕生日をお祝いできるのかな、
できれば少しでも多い方がいいな。。なんて考えてた。。
甘かった。
もって数週間、とのことだった
ひなが最後に見た景色が大嫌いな病院ではかわいそうだから、
これ以上の治療をやめて家に連れて帰ってあげよう、と彼が提案した。
異論はなかった。
数週間、大好きな食べ物をすきなだけ食べさせて、好きに過ごさせてあげようと。
これも甘かった。
ひなはもう動けない状態だったし、
普通の空気(酸素濃度)のもとでは生きていけないとのことだった。
普通の猫では生きていられない数値でも、もう十分頑張ったのだから、
あまりに苦しみを長引かせるようなら、苦しみの「生」から解放してあげることも
考えなくてはならない、と。
そんなのはいやだ、まだ可能性はある。
瀕死から回復した猫ちゃんだっているって読んだ、諦めたくない。
貧血には「レバコール」を。抗生物質代わりに「マヌカはちみつ」を。
免疫をつけるために「ヤギミルク」を。
栄養豊富でおいしい「ヒルズのa/d缶」
「鶏のレバー」なんかもあった。
a/d缶以外すべて用意してひなを迎えに行った。
驚くほど諦めていなかった。
朝、先生と話すと
動物の医療用の酸素室を貸出しする業者に連絡をとって、自宅に設置してから帰りましょうと。
なんだ、まだひなは帰れないのか。
せっかくだからとひなに会いに行くと、
「にゃあ・・・」
ぐったりしていたひなが、私の声を聴き、そっと立ち上がった。
そして、しっぽをくねくねと波打たせた。
うれしいとき…留守番をお願いして、私たちが返ると、いつもこのしっぽで出迎えてくれた。
おいしいごはんを用意してあげたときも、朝起きた時も、このしっぽで嬉しさを伝えてくれた。
「ぶるにゃあ、にゃあ」
鳴かないでひな、血が足りなくなるから。。
案の定ひなはまたぐったりと倒れ込んでしまった。
家に帰り、酸素室が届き、設置した。
いかにも医療用機器といった独特の白さと、酸素を送り出す音が悲しかった。
悲しいし、怖かった。
私は病院がとても苦手だ。
再び病院へ戻ると、
ダイビング用のものを小さくした酸素ボンベがキャリーにつながれており、
そこへひなが入れられた。
点滴用機材と、更に注射を打つように指示されたけど
あまりに苦しそうに暴れるひなを見て、注射はまたあとでということで、家に帰った。
タクシーに乗るまでは看護婦さんが、降りるときは運転手さんがボンベを運んでくれた。
1人で迎えに来たことを後悔すると同時に、仕事を休めない彼に腹がたった。
仕方ないと分かっていても、どうしようもなく腹立たしかった。
でも彼の職種も人が一人離れるだけで誰かが事故ったり死んだりしてもおかしくない職場だから
しょうがないのもわかっていた。
でもひなはこんなに苦しんでいる。
でも仕事。でも。。
そんな堂々巡りが余計苛立ちを加速させた。
続く?