台本の書き方上全ての不問キャラを男口調で書いていますが、女性が演じる場合は口調、一人称、好きに変えて頂いて構いませんし、ご自身の言いやすいお言葉(方言など)で演じて頂いても結構です。

アドリブに制限は一切ありません。ですが、共演者の方々リスナーの皆さんに迷惑のかからない範囲で、自己責任でお願いします。




【拝啓、親愛なる】








佐藤 亜矢(サトウ アヤ)・♀


コンポ:タージュ・不問


コンポ:ンマソ・♂










亜矢M
「拝啓、親愛なるお母さんへ。私は今……」


タージュ
「ママ!」


亜矢M
「見知らぬ外国人の年下からママ呼ばわりされています」


タージュ
「ママ!僕だよ!」


亜矢
「いい加減にして!私はあなたのママじゃないって!まだ学生だし!」


タージュ
「僕だよ、タージュだよ!」


亜矢
「知らない知らない全く聞き覚えがない。なに、なんなの?」


タージュ
「佐藤亜矢、10月25日生まれ、左利きのさそり座、中学高校時代は陸上の選手でインターハイにも出てる、大学卒業後の進路は広告代理店への就職を希望!」


亜矢
「え……な、なんで私のそんな事を……」


タージュ
「僕は、未来から来たんだ」


亜矢
「……はい?」


タージュ
「あなたは大学の卒業を控え、長期の休みを利用してアフリカへ海外旅行に行く」


亜矢
「あ、当たってる……」


タージュ
「自分探しという薄っぺらい理由で」


亜矢
「良いでしょ別に自由でしょ」


タージュ
「ここまでは信じてくれた?」


亜矢
「え、ええ……もしかしたら……って言うのが心に浮かんでる……」


タージュ
「ここからが本題だよ。そして旅先で出会った民族の人間と恋に落ち、そのまま日本に帰らず結婚してしまうんだ!」


亜矢
「え、ええええ!?」


タージュ
「それから一年後、二人の間に生まれたのが僕だ」


亜矢
「う、嘘でしょ!?」


タージュ
「本当だよ。僕はアフリカのコンポ族と日本人との間に生まれた、コンポ:タージュだ!」


亜矢
「なにその美味しそうな名前」


タージュ
「ママが付けてくれたんだけど……」


亜矢
「えぇ……私……?た、たぶんお腹空いてたのかな……」


タージュ
「そんな理由で子供に名前付けないでよ。日本のキラキラネームより酷いよ」


亜矢
「ご、ごめん……ていうかそれなら出会い頭に僕だよって言われても分かるわけないでしょ!」


タージュ
「ごめん、ちょっとバイブス上がっちゃって」


亜矢
「せめてテンションって言って。クラブのノリで話さないで」


タージュ
「僕はママを止めに来たんだ」


亜矢
「はい?」


タージュ
「ママと殿の結婚を止めに来たんだ」


亜矢
「君、父親のこと殿って言ってんの」


タージュ
「ママもそう呼んでるよ」


亜矢
「私の育て方クソだな」


タージュ
「ママ!今すぐ旅行を中止するんだ!そうじゃないと、ママは……!」


亜矢
「いや、でも……」


タージュ
「飛行機のチケットもキャンセルするんだ!」


亜矢
「ここ、アフリカだけど……」


タージュ
「え?」


亜矢
「それで今日は、コンポ族の人の家に泊めてもらう事になってるけど……」


タージュ
「あぁ……そう……」


亜矢
「うん……」


タージュ
「……」


亜矢
「……」


タージュ
「ママ!僕だよ!」


亜矢
「出会いからやり直そうとしないで」


タージュ
「遅かったかあああああ!」


亜矢
「な、何をそんなにショック受けてるの。ビックリしたけど……私は別に悪くないよ。旅先で出会って結婚……それも、私の人生なのかもね」


タージュ
「自分にゲロ吐くほど酔ってる場合じゃないよ!」


亜矢
「そんなに酔ってた!?」


タージュ
「殿と結婚したママは……ママは……!」


亜矢
「未来の私が……!?」


タージュ
「もう……助からないほど、重症なんだ……!」


亜矢
「ま、まさか、何か病気に……?」


タージュ
「とんでもない……ホームシックにかかってしまうんだ……!」


亜矢
「なんだそれ」


タージュ
「いや凄いんだよ!口を開けば地元の駅がどうとか、乗り継いだら都心に行けるとか、快速は止まらないとか!」


亜矢
「電車のことしか言ってないな!そんなに地元の電車に興味無いから!」


タージュ
「送りもしない実家への手紙も書いては僕に読ませ書いては僕に読ませの繰り返しさ!」


亜矢
「えぇ……未来の私面倒くさっ」


タージュ
「毎回読んだ感想聞かされる僕の身にもなってほしいよ!おかけで民族語と日本語のバイリンガルになって日本人相手の観光ガイドでまあまあ収入があるんだ!」


亜矢
「それは良かった点なんじゃない?」


タージュ
「今わかったよ、僕の名前もホームシックにかかってて適当に付けたんだ!」


亜矢
「うわそう思ったらめちゃくちゃ可哀想、ごめん」


タージュ
「お陰で僕は部族の笑い物だよ。日本のスープとほぼ同じ名前なんて……本当はビシソワーズが好きなのに!」


亜矢
「ちょっとニアミスだな」


タージュ
「ママと殿の結婚を止める。その為に僕は、コンポ族に代々伝わる時渡りの秘術を使って殿と出会う前のママに会いに来たんだよ」


亜矢
「めちゃくちゃタイミングミスってるけどね」


タージュ
「格安プランにするんじゃなかったよ」


亜矢
「代理店あんの?」


タージュ
「とにかく!もう日本に帰るんだ!」


亜矢
「で、でも……あの人は、とても魅力的で……」


タージュ
「何もう落ちかけてるのさ!異国の人に恋してる自分に泥酔しないで!」


亜矢
「そんなに酔ってないもん!私は本気だもん!」


タージュ
「もう落ちてるじゃん!」


亜矢
「やめて!私……絶対幸せになってみせるから!」


タージュ
「あっ!ママどこに行くの!ママ!ママ!」




【 間 】




亜矢
「ハァッ……ハァッ……!ンマソ!」


ンマソ
「ン?ハーイ亜矢」


亜矢
「ンマソ助けて、私変な夢を見てるかもしれない」


ンマソ
「オウ可哀想ニ、コンポ族ノ神ドトュミュンゾン、亜矢ノ事見テル、ダカラ大丈夫」


亜矢
「ンマソ……ありがとう……」


タージュ
「普通その慰めには恐怖を抱くんだよ!?」


亜矢
「来た!」


タージュ
「ハァッ……ハァッ……!さ、流石は元陸上部……民族産まれの僕を、走りで振り切るなんて……!」


亜矢
「ンマソ!あの子が私とあなたの幸せな未来を壊そうとしてるの!」


タージュ
「もうガッツリその気になってるじゃないか!よくそれでホームシックになったな!」


ンマソ
「物壊ス、ダメネ」


タージュ
「殿……!」


ンマソ
「トノ?殿知ッテルヨ、日本ノ偉イ人」


亜矢
「物知りねンマソ」


ンマソ
「殿凄イ、殿憧レル。亜矢コレカラ、僕ノ事、殿ッテ呼ンデ」


亜矢
「うん、殿」


タージュ
「一つの未来が確定してしまった!だ、ダメだ……!ママはもう殿の事しか頭にない……!恋に恋するのは高校生までしゃないのか……!」


ンマソ
「君、誰ナノ?」


タージュ
「ぼ、僕は……タ……サボ、サボ:タージュ!亜矢さんは渡さないぞ!」


亜矢
「ええ!?」


タージュ
「ママ、僕は諦めないよ。絶対にその男からママを引き離してみせる」


亜矢
「そ、そんな、私を奪い合うなんて」


タージュ
「そしてその色ボケも治してみせる!」


ンマソ
「ワカッタヨ、亜矢ガ欲シイナラ、殿ト勝負ダネ」


タージュ
「くっ……もう自分自身が殿と思い込んでる!」


ンマソ
「欲シイ物奪イ合ウ時勝負、コンポ族ニ伝ワル押手」


亜矢
「掟だと思う殿。押手は弓道の弓を持つ方の手」


タージュ
「まさか、殿とママを奪い合う事になるなんて……」


亜矢
「タージュくん……大丈夫、私はホームシックになったりなんかしない。だって私、今こんなに幸せだもの」


タージュ
「そのテンションは結婚式当日だ!目を覚ますんだママ!自分探しの旅なんだろ!もっと探しなよ!流れに任せて偽物の本当を手にしちゃダメだ!」


亜矢
「あ、殿の髪にバッタ付いてる」


タージュ
「聞いて!?」


ンマソ
「サボ、勝負スルヨ。近所ノ子ナラ、ルール解ルネ?」


タージュ
「……三回勝負で一勝負毎に方法を変え、最終的に多く勝った方が勝者になる」


ンマソ
「オウ……」


タージュ
「……」


ンマソ
「チョット難シイ日本語解ラナイヨ」


タージュ
「さっきまでまあまあ会話出来てたのに!?」


亜矢
「やめてあげて!殿は勉強熱心でコンポ族の中で唯一日本語が話せるの!ちょっと話せるだけでもすごいじゃない!」


タージュ
「くっ……ママと出会う前の殿がこんなにもカタコトだったなんて……」


ンマソ
「諸行無常、世ノ常ヨ」


タージュ
「さては流暢だな!?」


ンマソ
「デハ最初ノ勝負行クヨ!ドトュミュンゾン神ニ捧ゲル、ペヌペッロ!」


タージュ
「ぺ、ペヌペッロだって……!?」


亜矢
「え、何それ」


タージュ
「ペヌペッロはコンポ族の言葉で獰猛、恐怖という意味だ……お互いが信じる神を自身に宿し、相手と戦う。宿した神にはそれぞれ相性があるから、相手より強い神を宿せれば勝ちになる」


亜矢
「そ、そんな神聖な戦いが……!」


タージュ
「日本で言うジャンケンだよ」


亜矢
「説明が悪い!」


ンマソ
「アバババババババババババアァァァ!」


亜矢
「いやっ!?何殿どうしたの!?」


タージュ
「ペヌペッロの最初の儀式さ、神をその身に宿す為に神への挨拶をしなければいけない。アバババババババババババババアァァァ!」


ンマソ
「アバババババババババババアァァァ!」


タージュ
「アバババババババババババアァァァ!」


亜矢
「シンプルに怖い!」


ンマソ
「コカッチャ!」


タージュ
「ワボンヌ!」


ンマソ
「ピトュモン!」


タージュ
「ミャー!」


ンマソ
「……」


タージュ
「……」


亜矢
「……」


タージュ
「負けたっ……!」


亜矢
「そうなの!?」


タージュ
「まさかあそこからペチュナドンにするとは……!」


亜矢
「私の目には2人が訳分からないポーズしながら雄叫びをあげてるようにしか見えなかったんだけど。あと単語が独特すぎて怖い」


ンマソ
「亜矢、勝ッタヨ。殿ノ、ホンミィィィン炸裂ヨ」


亜矢
「ごめんどれがそれかわかんない。でもやったね!」


タージュ
「ま、まだだ!まだあと二回勝負が残ってる!」


ンマソ
「アト二回モ楽勝ヨ。」


タージュ
「次はこちらが勝負の方法を指定させてもらうよ!次は……アヌォルクィンで勝負だ!」


ンマソ
「ア、アヌォルクィン……!?何テ戦イヲ チョイス スルンダ……!」


亜矢
「え、何それ!?」


タージュ
「アヌォルクィンはコンポ族の言葉で円環という意味だ……
この世の森羅万象の名を借り、それを交互に発することにより、魂の円環を完成させる。
その円環を崩した者の負け。昔は円環を崩した者が矢で射られることもあったとか」


亜矢
「そ、そんな恐ろしい戦いが……!」


タージュ
「日本で言う山手線ゲームだよ」


亜矢
「説明が悪い!!」


ンマソ
「アアアウゥゥアアアアアアアアアア!」


亜矢
「いやっ!?何殿どうしうたの!?あ!これも最初の儀式か!」


タージュ
「いや、これは普通に叫んだだけだね」


亜矢
「自分への鼓舞が怖い!」


タージュ
「儀式はここからだよ!魂の浄化の為の儀式なんだ!」


ンマソ
「アマラッサアアアアアアアアアアンンンン!」


タージュ
「アマラッサアアアアアアアアアアンンンン!」


亜矢
「だから怖いって!」


ンマソ
「ワンプモ!ワンプモ!」


タージュ
「ワンプモ!ワンプモ!」


ンマソ
「フムル!オワソン!ヤマノテ!」


タージュ
「フムル!オワソン!ヤマノテ!」


亜矢
「山手って言った!?」

ンマソ
「ムッチャッ!パンパン!チョンパク!」


タージュ
「パンパン!ヌヌッシル!」


ンマソ
「パンパン!ニョワド!」


タージュ
「パンパン!コココス!」


ンマソ
「パンパン!ウェミウェミン!」


タージュ
「パンパン!カ……カ……!アァー……!」


ンマソ
「……」


タージュ
「……」


亜矢
「……」


タージュ
「勝った!!!」


亜矢
「そうなの!?何か詰まったっぽかったけど!?」


タージュ
「日本の山手線ゲームとは少しだけルールが違うんだ。」


亜矢
「少しだけ!?本当に少しだけ!?」


ンマソ
「少シハ ヤルヨウダ……!コレデ一勝一敗……!面白クナッテキタ!」


タージュ
「この調子で僕が勝たせてもらうよ!」


ンマソ
「ツギノ勝負ハ……アレデイイカ……?」


タージュ
「そうか……!三回勝負の最後……!ついにアレで戦うのか……!」


亜矢
「アレ!?アレって何!?そんなにヤバい戦いなの!?」


タージュ
「ああ。コンポ族の最後の勝負と言えばアレしかない……」


ンマソ
「ソウ!最後ハ 指スマ デ勝負ネ!!!」


亜矢
「指スマ!?え!?日本で言う指スマとかじゃなくて!?」


タージュ
「そう、指スマはこっちでも指スマなんだ」


亜矢
「そんなことある!?」


タージュ
「ちなみに指スマはコンポ族の言葉で「二本の御神木」という意味なんだ」


亜矢
「たまたま指スマっていう言葉が被ってるの!?すごいな!」


ンマソ
「サンクサァァアアアレェエエエエエエ!」


タージュ
「始まった!指を御神木にする儀式!サンクサァァアアアレェエエエエエエ!」


亜矢
「指を御神木にする儀式!?何それ!?」


ンマソ
「サンクサァァアアアレェエエエエエエ!」


タージュ
「サンクサァァアアアレェエエエエエエ!」


亜矢
「これもうほんと怖い!慣れないんだよな、成人男性の大声!」


ンマソ
「セーノッ!指スマイチ!……アァ!ミスッタ!」


タージュ
「よし!指スマニ!……やった!」


ンマソ
「クソッ!指スマサン!……アッ!ダメダ!」


タージュ
「よし!これで最後だぁぁぁあ!指スマァァァァアアア……ゼロッッッ!!!」


ンマソ
「アアアアアアアアア!!!」


タージュ
「いよっしゃぁあああああ!!!」


亜矢
「殿弱ぁー!指スマのストレート負けってあんまり見たことないよ!?」


タージュ
「これで亜矢さんは僕のものだ!」


ンマソ
「悔シイガ仕方ナイ……!コンポ族ノ男ニ 二言ハナイ……!亜矢ハ サボ ノモノダヨ……!」


亜矢
「ンマソ……!」


ンマソ
「亜矢……!ゴメンネ……!勝テナカッタヨ……!」


亜矢
「ンマソ……!ンマソ……!」


タージュ
「ママ、さあこっちに来て。日本に帰ろう。」


ンマソ
「ママ……?ママ……!?……ソウカ……ソウイウ事カ……」


亜矢
「ンマソ!私あなたと離れたくない!ンマソ!」


タージュ
「ママ、やめて。勝負はもう決まったんだよ」


ンマソ
「……サボ、君ガ最後ニ出シタ「指スマゼロ」ハ一子相伝ノ技。殿モ父ニ習ッタヨ」


タージュ
「……」


ンマソ
「君ハサボジャナイ。我ガ息子ダナ?」


タージュ
「殿、嘘をついてすみません……」


ンマソ
「我ガ息子ヨ。キット未来デ何カ アッタンダネ。ソレデ時渡リノ秘術デ コノ時代ニ ヤッテキタ。違ウカイ?」


タージュ
「そうです。殿の言う通りです」


ンマソ
「キット亜矢ノ身ニ何カアッタ。例エバ メチャクチャ ホームシック ニナッテ 地元ノ電車ノ話トカ シテル。違ウカイ?」


亜矢
「殿物分かり良すぎない!?最初の話聞いてた!?」


タージュ
「そうです。殿」


ンマソ
「……。亜矢ノ事ハ愛シテル。コレカラモ ズット一緒ニ居タイ。デモソレデ亜矢ガ苦シムナラ、殿ハ悲シイ」


亜矢
「ンマソ……」


ンマソ
「亜矢……日本ニ帰ッテクレ……。ココデ オ別レダヨ……」


タージュ
「そういうことだよ、ママ。さあ、日本に帰ろう」


亜矢
「わかった……。ンマソ。私のことを想ってくれてありがとう。私は日本に……帰ります……」


  タージュ、身体から発光し少しずつ透けていく。


タージュ
「よかった。これでママがとんでもないホームシックになることはないんだ」


亜矢
「え……?タージュ?身体が透けてる!?どういうこと!?」


ンマソ
「……亜矢ガ日本ニ帰ルトイウコトハ……殿ト結婚シナイトイウコトハ……我ガ息子ガ生マレナイトイウコト……」


亜矢
「そ、そうか!タージュは生まれなかったことになって消えてしまう……!」


ンマソ
「ソウイウ事ダ……!」


亜矢
「タージュ!何で自分の命を懸けてまで私のことを救おうとしたの!?」


タージュ
「そんなの簡単さ。僕はママのことを愛している。僕の命よりも、ママが笑っていてくれることの方が大事なんだよ」


亜矢
「タージュ……!」


タージュ
「ママはホームシックになって全然笑わなくなってしまった。日本に帰って違う人生を歩むなら、もっと沢山笑ってね……」


亜矢
「タージュ!待って!消えないで!」


タージュ
「もう運命は変わっちゃった。僕の存在はなくなり、やがて二人の記憶からも消える」


ンマソ
「タージュ!コンポ:タージュ!」


タージュ
「殿、ありがとう。最後に殿と勝負できたこと、誇りに思うよ」


ンマソ
「コンポ:タージュ!コノママ消エテモ、我々ガ家族ダッタ事実ハ消エナイ!」


亜矢
「そうよ!私達は家族だからね!」


タージュ
「拝啓、親愛なるお母さんへ」


亜矢
「え……?」


タージュ
「未来のママが書いてた手紙に、必ず書かれてた言葉、そして僕が初めて覚えた日本語!親愛なる、ママ!殿!ずっとずっと、大好きだよ!」


亜矢
「タージュ!」


ンマソ
「タージュゥウ!」


タージュ
「ありがとう、二人共。僕、二人の息子でよかったよ。それじゃあね、ママ沢山笑ってね……」


  タージュ、完全に消滅する。


亜矢
「うっ……ううっ……タージュ……タージュ……!」


ンマソ
「亜矢……ダイジョウブ……コレカラ我々ガ 愛シ合ッテ、マタ タージュ ト家族ニ ナレバイイ」


亜矢
「そうね……!私、もう一度タージュに……」


ンマソ
「……。……ン……?」


亜矢
「……ん?タージュ……?って誰……だろう……?」


ンマソ
「亜矢、急ニ何ノ話?タージュッテ?」


亜矢
「わからない……。」


ンマソ
「ソンナコトヨリ、早ク家ニオイデヨ」


亜矢
「ンマソ、そのことなんだけどね。私、日本に帰ることにするわ」


ンマソ
「ソンナ!ソレハ何デ!?」


亜矢
「私は自分探しの為にこの国に来たわ」


ンマソ
「ソウダネ」


亜矢
「でももっと大事なものが日本にあるような気がするの……ある意味、私の自分探しの答えが見つかったのかもしれない……」


ンマソ
「ヨクワカラナイ……」


亜矢
「私、日本で笑って暮らしたくなった。それが本当の幸せなのかもしれないって思うの。何でかしらね?」


ンマソ
「……。亜矢ガ日本デ暮ラシタイナラ仕方ナイ。コンポ族ノ男ハ 去ル者ヲ 追ワナイ」


亜矢
「ありがとう、ンマソ。お互い幸せに生きましょう」


ンマソ
「亜矢……マタネ……」




【 間 】



亜矢M
「拝啓、親愛なるお母さんへ。私は今……」


ンマソ
「亜矢!重たい荷物は僕が持つよ!」


亜矢M
「旅先で出会った愛する夫と、日本で暮らしています」


ンマソ
「まったく……もう一人だけの身体じゃないんだから……」


亜矢
「ああ……ごめんごめん……」


ンマソ
「もう……無理しないでね」


亜矢
「うん、ありがとう」


ンマソ
「いやーしかし日本まで亜矢を追いかけてきてよかった。おかげで今はこんなにも幸せだ」


亜矢
「急にどうしたの?」


ンマソ
「ふとそう思ったんだよ。日本は僕にとても合ってるし!」


亜矢
「それはそうだね。とても楽しそうだし、言葉もすぐ上達したもんね」


ンマソ
「ああ。日本の環境が合ってるのもあるけど、亜矢と一緒に居られるのが幸せなんなんだ」


亜矢
「ふふふふ、すぐそうやって」


ンマソ
「亜矢は沢山笑う。それは幸せなことだ」


亜矢
「ンマソのおかげだよ。……あ……!今お腹蹴ったよ!」


ンマソ
「本当!?」


亜矢
「ええ。とても元気な子」


ンマソ
「生まれてくるのが楽しみだね!」


亜矢
「うん!早く生まれてきてほしい!名前はコンポ語で"愛"を意味する"ター"と"結晶"を意味する"ジュ"」


ンマソ
「僕らの愛の結晶、タージュ。コンポ:タージュ何だか美味しそうな名前だけどね」


亜矢
「いいじゃん!私は気に入ってるんだ!」


ンマソ
「亜矢もタージュも幸せにするからね」


亜矢
「ンマソももっともっと幸せになるんだからね!」


ンマソ
「ははは、そうだね!みんなで幸せになろうね!」


亜矢
「……うん」


亜矢M
「お母さん。家族ができるって、母になるって、素敵なものですね。今度タージュを連れて遊びに行きます。待っていてください。敬具」





〜幕〜




ツイキャス等の配信でご使用する際は許可を取る必要はありません。ご自由にご使用ください。アーカイブが残る配信も同様です。

投げ銭制度の配信でご使用する場合も許可を取る必要は一切ございません。

枠名等にタイトルを書いて頂けるとありがたいです。これに関しては決して強制ではありません。(勝手かに覗かせて頂き、勝手に嬉しがります。)

ですが、YouTube等の動画投稿や、舞台、CDなどの、金銭が発生する媒体へご使用の場合は一声お掛け下さい。(ないと思うけど。)

約束事はさほどございませんが、これからもしちさいの台本を末永くご愛好下さいませ。
宜しくお願い致します。



連絡用Twitter ID→【@7xi_dadada】

台本の書き方上全ての不問キャラを男口調で書いていますが、女性が演じる場合は口調、一人称、好きに変えて頂いて構いませんし、ご自身の言いやすいお言葉(方言など)で演じて頂いても結構です。

アドリブに制限は一切ありません。ですが、共演者の方々リスナーの皆さんに迷惑のかからない範囲で、自己責任でお願いします。



客 :不問
マスター:不問
強盗:♂




とある喫茶店。
客、喫茶店のカウンターでコーンポタージュを飲んでいる。
マスター、カウンター越しに立っている。



客 :はぁ……美味しい……。マスター、この店のコーンポタージュが一番美味しいです。

マスター:そう言っていただけると嬉しいです。

客 :休日の昼下がり。この喫茶店でランチセットを頼んで大好きなコーンポタージュを飲む。
   それが至福の時なんです。

マスター:ありがとうございます。

客:今日も最高の一日だ。


  強盗、勢いよく扉を開けて入ってくる。手には包丁を持っている。


強盗:おい!強盗だ!全員手を挙げろ!

客 :ええー!!!

マスター:ご、強盗!?

強盗:いいから早く金を出せ!

客 :今日は最低の一日になりそうだー!

強盗:おい、お前ら騒ぐなよ!騒ぐと殺すからな!

マスター:は、はい……。今お金を……って……え……?ドッキリ……?

強盗:ドッキリな訳あるか!ゆっくり手を下ろしてレジを開け!

マスター:いや、だって……君……。

強盗:何だ!?下手な真似してみろ!殺すからな!

マスター:君……常連の中村くん……だよね?

客 :え!?常連さん!?

強盗:……何故そう思う?

マスター:いや、だって顔見えてるもん……。

強盗:……。

マスター:目出し帽とかじゃなくてキャップ被ってるだけだし、全然変装できてないよ……。

強盗:え……あ……。

客 :……。

マスター:……。


  考える間。


強盗:うるさい!金を出せ!

客 :ええー!?

マスター:今、一回考えたよね!?

強盗:そんなことはない!いいから金を出せ!

マスター:普通こういうのって行きつけの店でやらないでしょ!良心とか痛まない!?

強盗:痛む!だがそれとこれとは別だ!金を出せ!

マスター:痛むの!?そしたら他の店でやった方がよくない!?

客:そうですよ!こういう喫茶店じゃなくて銀行とかでやった方が!

強盗:銀行で強盗したら銀行強盗になるだろ!

二人:はぁ!?

強盗:銀行強盗は犯罪だろ!

マスター:喫茶店で強盗するのも犯罪だよ!

強盗:何だ!?説得しようとしても無駄だぞ!

マスター:いや、説得じゃない説得じゃない!

客 :ていうか、アンタ何で強盗なんてするんですか!?常連なんでしょ!?

マスター:そうだよ!いつも美味しそうにご飯食べてたじゃない!

強盗:……。

マスター:……一年くらい前かな、初めて店に来てくれたのは。

強盗:ああ……。

マスター:あの時、君はお金がなくて、店で一番安いバケットしか頼めなかったんだよね。

強盗:……そうだ……それを見かねたマスターがコーンポタージュを出してくれた……。

客 :何それ、いい話じゃないですか……。

マスター:お金がなくてお腹が減っているのは辛い。それから私は君にタダでご飯を食べに来てもいいと言った。

強盗:……ああ……それから毎日のようにここに来て、ご飯を食べさせてもらった……。

マスター:今はお金がないかもしれない。でも一年後にはしっかり就職して、今まで食べた分のお金を払ってくれたらいいから、そう言ったね。

強盗:……ああ……そしてその言葉に甘えた……とても助かった……。

客 :何それ、めちゃくちゃいい話じゃないですか……。

マスター:そんな君が何でウチで強盗しようとするの!?

強盗:今日は初めてこの店に来てからちょうど一年だ。

客 :そんな日に何で強盗なんか!?

強盗:一年経ったから今までのツケを払わなきゃいけない。

マスター:そう……だね……。

強盗:今、ツケを払う金が……ないんだ……。

客 :……。

マスター:……。

客 :ん!?どういうこと!?

マスター:今までのツケを払ってくれようとしてるってこと!?

強盗:ああ……もちろんだ……。

マスター:でも払うお金がない!?

強盗:ああ。だからこの店で強盗して、この店のツケを返す!

客 :……。

マスター:……。

客 :怖ぇー!!!何それぇ!!!

マスター:言ってることもやってることも無茶苦茶だよ!?

強盗:俺はマスターに恩を感じている!だからツケは絶対に返したい!

マスター:そしたら強盗しないで!?

客 :ツケ返さないのより強盗する方が恩を仇で返してるよ!?

強盗:確かに強盗するのはいけないことだ!でもツケを返さないのはもっといけない!

客 :向こうの正義がこっちの正義とズレてる!戦争ってこうして生まれるのかなぁ!?

マスター:ツケを返せないなら素直にそう言ってくれればいいのに!

強盗:言ってもどうにもならないだろ……!

マスター:そんなことないよ!もう一年待ったり、帳消しにしたりもできたよ!

強盗:そんな……!本当に……?

マスター:ほんとほんと!

客 :マスターとインディアンは嘘つかないよ!

強盗:……流石にツケを帳消しにしてもらうことはできない……。

マスター:そ、そうかい!?

強盗:マスター、そしたらお言葉に甘えて、もう一年だけ返済待ってもらってもいいかな?

マスター:いいよ!君の好きにしたらいい!だからその包丁を置いて!ね?

強盗:ありがとう……。


  強盗、包丁を机の上に置く。


二人:ふぅ……。

強盗:マスター、本当にごめん。

マスター:ああ……人間誰しも間違うことはあるから……。一番いけないのは、お腹が空いていることだよ。

強盗:はい……。

マスター:いつものコーンポタージュでいい?

強盗:え……?

マスター:まずはお腹を満たそう、ね?

強盗:ありがとう……。

マスター:伊藤さんも、コーンポタージュ冷めちゃったでしょ。温め直すよ。

客 :すみません、ありがとうございます。


  マスター、伊藤の前にあるコーンポタージュを一度下げる。


マスター:中村くん、ツケを払うメドが立たなかってことは仕事は?

強盗:一度、就職が決まって働いてたんですが、その会社が倒産しちゃって……。

客 :そうだったんですね……。

強盗:その後、数ヵ月自分探しの旅をしたんですけど、結局自分は見つからなくて……。

マスター:だからやけになって強盗なんてしちゃったのかもね。

強盗:言い訳になるかもしれないけど、確かに心の余裕はなかったかも……。

マスター:そしたらこのコーンポタージュを食べて、心に余裕を作ってよ。


  マスター、強盗の前に温かいコーンポタージュを置く。


強盗:ありがとう、マスター。いただきます。

マスター:はい、伊藤さんの分も温め直したよ。


  マスター、伊藤の前に温かいコーンポタージュを置く。


客 :あ、すみません。いただきます。


  2人、コーンポタージュを飲む。


客 :うん……!やっぱりマスターの作ったコーンポター……

強盗:マズッ……。

客 :えっ?

マスター:えっ?

強盗:マッズー……マスターなんかこれいつもと味違くない?

マスター:そ、そうかな?いつもと同じレシピだけど……。

強盗:うーん……てか、何かぬるいし。俺、熱いのが好みって知ってるよね。

マスター:あ、あぁ……まぁごめん……。

強盗:まぁいいけど……。


  強盗、再びコーンポタージュを飲む。


強盗:ん!?ちょっと待って!?これ……髪の毛入ってんだけどぉ?どうなってんの!?
   おい!何だよ、この店は!?人に髪の毛入りのコーンポタージュ飲ませんのかよ!?

客 :アンタやりたい放題か!?!?自分探ししたのに人としての軸がブレブレだな!

マスター:いや、ああ、ごめん……。

客 :マスターもこんなクズに謝る必要ないですよ!

強盗:あぁ!?誰がクズだ!?


  強盗、机の上の包丁に手をかける。


客 :いや、うそうそうそうそ!言ってない言ってない!

強盗:嘘つけ!今しっかりクズって聞こえたぞ!?

客 :あー!……あの!……確かに!クズとは言った!

強盗:ほらみろ!

客 :いやー、コーンポタージュにクズが入ってたんだよ!だからクズって!

強盗:何だ……そういうことか……。

マスター:え……あぁ……ごめん……。

客 :あぁ!マスター落ち込まないで!嘘ですから!

強盗:あぁ!?お前嘘ついてたのか!?

客 :いや、嘘じゃない!クズ入ってる!入ってるから!

マスター:……ごめんね……衛生面終わってる店で……。

客 :あわわわわ!マスター、ごめん!!!

強盗:ちっ……マスター、ピザトースト1つ

客 :我が道行き過ぎじゃない!?

マスター:ああ、はいピザトーストね……あぁ、いや……。

客 :どうしたんですか?

マスター:なんか、素手でパン持つのめちゃくちゃ申し訳なくて……。

客 :衛生面でトラウマ植え付けられてるじゃないですか!

マスター:あ、そうだゴム手袋があった。

客 :それ付けたら安心ですね!

マスター:ちょっとトイレ行ってくるね。

客 :待って!そこに置いてるゴム手袋はトラウマどころかバイ菌も植え付けられてるから!

マスター:ああ、そうか、ごめんね……。

客 :だ、ダメだ……一度心が折れたマスターがこんなにもポンコツだなんて……!

マスター:ごめんね……生きててごめんね……。

客 :病んだ時の言葉の代表格みたいな事も言い出したし!

強盗:いいですよ。

客 :なんでアンタが許すんだよ、アンタだけは絶対違うだろ!

強盗:違う。「やっぱピザトーストキャンセルでいいですよ」ってことだ。

客 :ゴーイングマイウェイが過ぎるって!

強盗:いいだろ!俺はパニックになったらなりふり構わず行動しちゃう性格って分かったんだよ!

客 :自分探しの末最悪な自分と邂逅してるじゃん!

強盗:こっちは今気が立ってるんだよ!落ち着くためにやっぱり一番好きなの頼みたいだろ!

客 :アンタ人の軸だけじゃなくて情緒もブレブレだな!?

強盗:マスター!たまごサンド!

客 :コーンポタージュじゃねぇのかよ!さっきのマスターとの出会い話は何だったんだ!?心温まったのに!

マスター:ご、ゴム手袋……!


  マスター、フラフラとトイレに向かう。


客 :トイレに向かうな!マスター落ち着いて下さい!
    マスターのその歪んだ優しさがこんな自己中情緒イカレモンスターを作り出してしまったんですよ!
    せめて今はしっかりしてください!

マスター:そ、そうだね、私がちゃんとしないと……。

客 :ちなみに、そのツケっていくら位あるんですか?

マスター:だいたい45万円くらいだよ。

客 :まあまあ飲み食いしてんな!

強盗:毎日1000円ちょいはツケで食わせて貰ってたからなぁ……懐かしいな……。

客 :懐かしむな、戒め自分を。

強盗:会社も倒産して一文無し……そして世話になった店で強盗未遂……もう笑うしかないな!

客 :なんであなたが笑う側なんだよ。

マスター:ははっ、ははは!

客 :マスター気を遣って愛想笑いしないでください。歪んだ優しさまた出てます。

マスター:そういえば、どんな会社に就職したんだい?

強盗:学ランの裏に貼るワッペンを作る会社です。

客 :果てしなく潰れそう!しかもなんでワッペン限定!?

強盗:仕方ないだろ!151社受けて最終的に俺を取ってくれた会社がそこしかなかったんだ!

客 :むしろなんでそこからしか取られなかった!?

強盗:もう他の会社の面接を受ける勇気すら出ない……。

客 :強盗する勇気はあるのに!?

マスター:……だったら、うちで働いてみないかい?

強盗:え?

マスター:この店も私だけで切り盛りしているからね、色々と大変なんだ。バイトとしてだけど、どうかな?

客 :……これはどっちだ……?普通の優しさか、歪んだ優しさか……!?

マスター:そもそも優しさに歪みってあるの?

強盗:マスター……!いいんですか、俺なんかを……?

マスター:ああ。もちろんお給料からツケの分は少し引かしてもらうけど。
     うちで働けば、賄いだって出る。今よりお腹を空かせることは無くなると思うな。

強盗:マスター……!週3からでお願いします……!

客 :なに4日休もうとしてんだ!その休日またツケでご飯食べる気だろ!

強盗:賄いと休日のツケでプラマイゼロだし。

客 :3日賄い4日ツケで食うならマイナスワンなんだよ!

マスター:まあまあ、人それぞれの始め方でいいから。じゃあ、よろしくね中村くん。

強盗:任せて下さい!俺がここで働くからには、この店を有名店にしてみますよ!

客:50万近い借金持ってるニートなのにこの自信はどこから湧いて出るんだろう……。

強盗:マスター、俺はまず何をすればいいですか。

マスター:最初はホールで働き方に慣れてもらおうかな。

客 :じゃあ包丁は使わないですね……!そのずっと握りしめたままの包丁こちらに渡して下さい……!

強盗:ほら。


  強盗、刃物側を客に差し出す。


客 :人に渡す時は刃先を向けるな!幼稚園で習わなかったのか!

マスター:伊藤くん、申し訳ないけど中村くんの研修のお客さん役で付き合ってくれないかい?

客 :え、えぇ……ま、まぁ、いいですけど……。

強盗:なんだよ、不満そうだな。

客 :逆に安心出来る要素を教えてくれよ。

強盗:マスターとインディアン嘘つかないって、インディアンどこから出てきたんだよ。

客 :いつの事気にしてたんだよ!嘘つかないでウエスタンを思い出したんだよ!

マスター:それじゃあ中村くん、お客さんから注文をお聞きしてみて。

強盗:柄は龍か虎どちらになさいますか?

客 :学ランの裏に貼るワッペンじゃねえ!

強盗:しまったあの頃の癖で……。

客 :癖付くなそんな特殊な文章!

マスター:メ、メニューにあるものを聞いてね?

強盗:はい。お客様ご注文は?

客 :えっと、コーヒーとトーストで。

強盗:ノリ付けタイプでいいですか?

客 :だからワッペンじゃねえ!

強盗:直接刺繍となるとウチでは取り扱っていません。

客 :だからワッペンじゃねえ!!

強盗:あ、ゴッホとかピカソみたいに直で絵を描くタイプですか?

客 :それはラッセンじゃねえか!

強盗:忘れられないもんだな、あの頃の事は……。

客 :アンタ一年も働いてないだろ!
    ていうか、今のが会社の正式対応なの?業務関係なく潰れて当然だな!

マスター:はい、コーヒーとトーストですね。

客 :諦めるな飛ばすな!

強盗:いや、辞めます。

マスター:ええ!?もう退職!?

客 :完全ニート宣言!?

強盗:いや、やっぱり俺にはホールなんてちゃちな仕事向いてない……!

客 :全国のホールスタッフに謝れ。

強盗:キッチンだ。マスター、俺にキッチンの仕事をさせて下さい!

マスター:えぇ……キッチンか……。
     うーん、そうなると私がホールになるのか……。
     だとすると、お客さんと接する機会が増えるな……。
     うん、いいよ!

客 :良いわけあるか。包丁握った問題児が作る料理なんて食べれるわけないでしょ。

マスター:でも、私がホールに出るとお客さんのケアをもっと出来るし。

客 :ダメだこの人周りを見れないタイプのいい人だ。損する生き方だ。

強盗:じゃあ今日から俺がキッチンだな。

マスター:うん。

強盗:うん?

マスター:え?

強盗:うん?って?

マスター:……あ……はい。

強盗:よし。

客 :そこ変わっただけで上下関係は別に変わる事はないから!謎の圧力やめろ!

マスター:あ、そうだね。もしかしてキッチンの方が偉いんじゃないかと思っちゃったよ。

客 :いい人過ぎて流されやすいってもう心配になっちゃうよ!

強盗:キッチンになったからには色々とレシピを覚えないとな。

マスター:だったらまずは、うちの看板メニューを覚えてもらおうかな。

客 :あ、やっぱりあれですか。

マスター:うん、ナポリタン。

客 :コーンポタージュじゃないんだ。

強盗:いや、コーンポタージュからだ!

マスター:え、そうする?でも、コーンポタージュは……。

強盗:まずは思い出のコーンポタージュから覚えたいです。お願いします。

客 :その思い出をディスりまくってたのは誰だよ。

マスター:いや……まあ、いいけど。

客 :マスター、なんか歯切れ悪いですね?

マスター:いやだって……!まあ、いいか。じゃあまず小鍋で牛乳を沸かして。

強盗:はい!……小鍋……お客さん、両手貸して貰えませんか?

客 :嫌だよ!なんで人の両手を小鍋として扱おうとしてるんだよ!

マスター:小鍋はこれ使ってくれたらいいから。


  マスター、小汚い小鍋を強盗に手渡す。


強盗:うわボロっ。

客 :本当にこの店に恩感じてます?

強盗:小鍋に牛乳……入れました。

マスター:牛乳が温まったらこの缶詰を開けて。

強盗:……はい、開けました!

マスター:じゃ、それ牛乳の中に入れて。

強盗:缶ごとですか?

客 :そんなわけないじゃん?

マスター:それでゆっくり混ぜつつひと煮立ちさせたら完成。

強盗:……え、終わり?

マスター:うん。

客 :……ここのコーンポタージュ、缶詰だったんだ。

マスター:だからあんまり教えたくなかったんだよね。

強盗:……違う。

マスター:え?

強盗:俺が求めてたのはこんなのじゃない!

マスター:えっ、でも美味しいよ?最近の食品メーカーは凄いんだよ?
     これでもナポリタンに次ぐうちの人気メニューなんだから!

客 :他人のふんどし自慢しないで下さい。

強盗:そうか、この店が繁盛しない原因はこのコーンポタージュだったのか!

マスター:ナポリタンに次ぐのに!?

強盗:今から俺が究極のコーンポタージュを作ってやりますよ!
   それをこの店の看板メニューにしてみせます!

客 :凄い!なんて不安しか感じない言葉なんだ!

マスター:で、でもコーンポタージュなんてどう作っても大抵味一緒だし、
     色んな缶詰使ってきたけど結局今の一番安いのがそれなりに美味しいし楽だよ!

客 :ナポリタンに次ぐ人気メニュー、コスパ重視だったんだ……。

強盗:まず出汁を取る!

客 :こいつはこいつで話聞いてないな!ていうか出汁!?

強盗:料理の基本中の基本は、出汁だ!

客 :和はね!?思いっきり横文字の料理だけど!?

強盗:お、いい所に乾燥したトウモロコシが。

マスター:ああ、お店の飾り付けに置いてあるやつだね。

客 :ああ、レトロなお店でたまに見るやつですね。

マスター:雰囲気でるかなぁって買ったんだよ、乾燥してるから痛むこともそうそうないし。
     気に入ってるんだ。

強盗:これをフライパンで焼きます!


  強盗、フライパンに乾燥したトウモロコシを投入する。


マスター:私のお気に入りが!

客 :せめてマスターの確認取って!?

強盗:焦げ目が付くまでじっくり火を入れます!
   そうする事によって出汁を取る時に香ばしさもプラスされます!

客 :それは魚の出汁を取る時!

マスター:それに、乾燥トウモロコシは熱すると……!

強盗:え?


  フライパンで熱されたトウモロコシが次々にポップコーンになり弾ける。


客 :うわっ!?あつっ!?痛っ!?ぽ、ポップコーンになって弾け飛んできた!

マスター:あつっ!痛っ、ふ、フタ!フタ閉じて!

強盗:不測の熱っ!事態にも熱っ!落ちつ痛っ!落ち着いて対処しましょ痛っ!

客 :もはやテ熱っ!テロ熱っ!テロだよ!

強盗:焼き終わった物がこちらです!

客 :空のフライパン見せてどうするんだよ!

マスター:ああ、キッチンがポップコーンだらけだ!

強盗:フライパンに水を注ぎます!

客 :それただの水洗いじゃない!?

強盗:このフライパンには先程のコーンの魂が宿ってます!

客 :料理にオカルト持ち込むな!

強盗:見事コーンの出汁が取れました!

客 :焦げたコーンが浮いてる水だよ!

強盗:これをふた煮立ちくらいさせます!

客 :ひと煮立ちの上はふた煮立ちとかじゃないから!煮立ちは単位じゃないから!

強盗:なんだこの感覚……!料理ってこんなに楽しかったんだ……!

客 :そりゃそんだけ好き勝手やれば楽しいでしょうよ!

マスター:あまりお店の食材好きに使われると困るんだけど……。

強盗:そうか……!俺は料理人になる為に産まれてきたのかもしれない……!
   これが……これが本当の俺だったんだ!

客 :こんな時に自分探しするな!

強盗:ここに塩コショウで味を整えます!


  強盗、フライパンに塩コショウを振りかける。


客 :整える味がないから!それがファーストテイストだから!

マスター:ああそれは小麦粉!それはつまようじ入れ!


  強盗、フライパンに小麦粉とつまようじを入れる。


客 :整えられてすらないな!

強盗:つまようじが一本ずつ出るタイプのつまようじ入れはコショウの入れ物と勘違いしやすいので気をつけましょう!

客 :どんなワンポイントアドバイス!?

強盗:さらにさん煮立ち!

客 :煮立ちは単位じゃねえ!

強盗:いい感じにトロミが付いてきました!

客 :小麦粉でドロドロになってるだけだ!

マスター:ダマになってる所ホグしてあげて!

客 :何のアドバイス!?まずこの奇行を止めろ!

強盗:ここでマヨネーズをたっぷり入れます!

客 :うわあ!見た目が汚いどんどん素材がゴミに変わってく!

強盗:全体の色味が黄色になるまで入れます!

客 :コーンポタージュの色味マヨネーズで代用しようとしてる!?

強盗:最後に乾燥パセリを適当に散らせば完成!

マスター:それは小ネギだよ!

客 :何もかもが違う!

強盗:さあ!お客さん、どうぞ!

客 :どうぞじゃないよ!食べれるわけないでしょ!

強盗:食わず嫌いは良くないですよ?

客 :食べれる物じゃないよ、焦げたコーンとつまようじが浮いてるマヨネーズ溶かしたドロドロのお湯だもの!

強盗:マスターどうですか。これを真の看板メニューにもう一度やり直しましょう!

客 :なんでアンタの中で一回マスターは落ちぶれてるんだ!?

マスター:まあ……好きな人は好きかもね……。

客 :マスター歪み切った優しさは時に残酷ですよ。

強盗:じゃあ、これからよろしくお願いします!

マスター:あ、それはやっぱりごめん。

強盗:え?

マスター:いや、この十数分見てわかったよ。君はこの仕事に収まる器では無いと。

客 :あのマスターでさえもドン引きして即クビにしてる……。

強盗:そう……ですか……。

マスター:あ、いや、本当にごめんね。ただなんていうか、君のやる気と気迫は凄いと思ったよ。
     真に迫るというか、思わず身震いする程に。

客 :つまりヤバすぎて怖かったんじゃないですか。いや確かにヤバかったけど。

強盗:……すいませんマスター、じゃあ一年後に、また来ます。

マスター:え……ああ……う、うん……。

強盗:一年後、本当の自分を探して戻ってきますよ!

客 :職探せ。




〜幕〜




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台本の書き方上全ての不問キャラを男口調で書いていますが、女性が演じる場合は口調、一人称、好きに変えて頂いて構いませんし、ご自身の言いやすいお言葉(方言など)で演じて頂いても結構です。

アドリブに制限は一切ありません。ですが、共演者の方々リスナーの皆さんに迷惑のかからない範囲で、自己責任でお願いします。









佐藤・不問


田中・不問


鈴木・不問









田中「えええ……!マジで行くの……!?」


佐藤「行くって言うかもう来ちゃったよほら」


田中「うわマジじゃん嫌だなこれ」


鈴木「なんだかサクサクしてきたね!」


佐藤「それを言うならワクワクだろ。何食感楽しんでんだよ」


鈴木「すげえ真っ暗だ!夜なのに!」


佐藤「夜だからだよ。お前、爽やかな馬鹿だな」


田中「ねえもうマジで止めよ?なんでこの時期に肝試しなんかすんだよ?」


佐藤「まあまあ、肝試しに季節なんか関係ねえって」


田中「普通夏だろ!?こんな、的はずれな時期のなんもない日にやることねえじゃん……」


鈴木「さあさあレッツゴー!」


田中「いやああああ!」


佐藤「……おい鈴木。ちゃんと田中が怖がる仕掛け、セットしてくれてるよな?」


鈴木「任せといてよ。こういう事させると右に出る者はいないって近所で評判だったんだ」


佐藤「悪口言われてるぞそれ」


鈴木「僕のセットした仕掛けに田中も驚いて、昇天ものだよ。まさに、高い所で他界ってね!」


佐藤「どっか登るのか?」


鈴木「登らない」


佐藤「なんで言った?」


田中「うわなあここ誰の家だよ!勝手に上がっていいのこれ!?」


鈴木「大丈夫大丈夫!ここは僕の従姉妹の学校の先生の孫のおじいちゃんの教え子の従姉妹の家だから!」


佐藤「つまり鈴木の家じゃねえか」


田中「もうそれだけで怖ぇよ……」


佐藤「どこが!?」


鈴木「この家……どう見ても普通の家なんだけど、ちょっとしたいわく付きなんだ……」


田中「えっ……!?」


鈴木「ごくごく普通の幸せな家庭だったはずなのに、ある日家族全員が家の中で心中しちゃったんだよ……!」


田中「や、やめろよ……」


佐藤「お前よく住んでんな」


鈴木「それからというもの……この家に住んだ人は夜寝る時、枕元に誰かが立ってる様な気配で、コーヒーを飲んだのに全然眠れない」


佐藤「コーヒー飲んだからじゃね?」


鈴木「そしてやっと眠れたと思ったら、夢の中に血まみれの男が出てきてこう叫ぶんだ……お前が鈴木か!」


田中「うわああああああああ!」


鈴木「……ってね」


佐藤「実体験か何か?」


鈴木「それ以来この家には誰も住み着かなくなってるのさ……」


佐藤「え、お前ん家だよな?」


田中「佐藤マジで!マジで帰ろうって!」


佐藤「お前これで怖がれんの逆にすげぇな」


鈴木「さあ田中、ドアノブを握ってみてよ……」


田中「え……な、なんで……!?」


鈴木「バチッて……来るから」


佐藤「なんでそれ先言っちゃう?」


田中「う、うわああああ……怖ぇぇ……!」


鈴木「分かってからの方が怖いでしょ?」


佐藤「怖がらせ方のジャンルが違ぇよ」


鈴木「ほら……田中、早く君が開けないとみんな入れないよ……。みんなの人生という名の時間を君が無駄にしてるんだよ……?君に僕たちの貴重な時間を返せるの……?返せないよね?ねえ……?時間を無駄にするって……怖いよね……?」


佐藤「ジャンルが違ぇんだよ!」


田中「うぅ……!ごめん……二人ともごめんなぁ……!!俺……怖ぇよぉ……!」


佐藤「田中ってノリいいよな」


田中「つ、掴む……!せーので、掴む……!」


佐藤「頑張れ田中」


鈴木「まだ?」


佐藤「お前最低だな!」


田中「……せーのっ!……あれ、バチッて……」


鈴木「来ないよ」


佐藤「なんだったんだこの流れ!」


鈴木「さあ勇気を振り絞ってドアを開けてごらん……」


田中「あ、あぁ……」


鈴木「佐藤、ここからが本番だよ……」


佐藤「すげえ不安だけど期待してるよ」


鈴木「ドアを開けた先には……真っ白いパジャマを着た女性がそこに!」


田中「うわあああああああああ!」


佐藤「鈴木のお母さんだよな」


鈴木「快く協力してくれた」


佐藤「無駄にノリがいいお母さんだな」


鈴木「そのパジャマ女はなんて言ってる……?」


佐藤「ていうかなんでお母さんパジャマ?そんでパジャマ女って何?お前のお母さんだよな?」


田中「う、うわあああああああああ!?」


佐藤「田中!その人はなんて!」


田中「い……いらっしゃいって……!」


佐藤「そりゃ言うだろ」


鈴木「田中、ゆっくり目線を下げてみて」


田中「え……?ひっ!?うわあああ!?あ、脚がある!?」


佐藤「そりゃあるだろ」


鈴木「その人……生きてるんだよ!」


田中「うわあああああ白いパジャマ着てる!」


佐藤「良いだろ別にお母さんのパジャマセンスは!ダサくはねえだろ!いや子供の友達の前にパジャマ姿で現れるのはあれだけども!」


田中「こ、こっちへどうぞ……って」


鈴木「行ってみよう。玄関を抜けた先には……縛られた女性の目の前で、男がジンギスカンを焼いているのさ!」


田中「ぎゃあああああああああ!」


佐藤「どういう状況!?」


鈴木「ほぉらほぉら、油が跳ねるよぉ……」


佐藤「やめてやれよ!で、男ってかお父さんだろ!」


鈴木「縛られてる女性は僕の従姉妹だよ」


佐藤「さっきチラッとだけ話に出た人!?」


鈴木「快く協力してくれた」


佐藤「何が目的で!?」


田中「うわああ俺スプラッター系もダメなんだって……!」


佐藤「どこら辺がスプラッター!?」


鈴木「まさに肉汁がスプラッシュやー!」


佐藤「なんでそのレベルでドヤ顔出来んだよ」


鈴木「まだ終わらないよ田中。今度はそこの業務用大型冷蔵庫を開けてごらん」


佐藤「お前ん家すげえな」


鈴木「ペンギンのマークのやつだよ」


佐藤「お前ん家すげえな」


田中「え……え……あ、開けるぞ……。う、うわあああああああああ!?人が入ってる!」


鈴木「学校の先生さ!」


佐藤「鈴木の従姉妹の!?」


鈴木「安全面を考慮して行っております!決して真似しないで下さい!」


佐藤「急に何!?」


田中「うわ!うわあああ!てっ、手を掴まれた!助けて!引っ張ってくる!」


佐藤「おお、これは怖ぇな」


田中「耳元でずっと飛鳥時代の解説をしてくる!」


鈴木「怖いでしょ!」


佐藤「何がだ!」


鈴木「次のテストの範囲は大正時代なのさ!」


佐藤「的外れにも程があるな!?」


田中「や、やっと離してくれた…!」


佐藤「田中、お前すげえビビりだな」


田中「うわあ聖徳太子!?」


佐藤「法隆寺建ててねえわ!」


鈴木「さあ田中、次はお風呂場へ行こう」


田中「ええ!?水場は霊が集まりやすいって言うじゃん」


佐藤「今まで霊的なものゼロだけどな」


鈴木「ほら、早くお風呂場へ行こう」


佐藤「もしかして、そっちが本命か?」


鈴木「ああ、なんたって……丁度よく風呂が沸けてるからね」


佐藤「怖がらせたいの?もてなしたいの?」


田中「なあ、もう帰らねえ?この家薄気味悪いし気持ち悪いって」


佐藤「人の家だぞ」


鈴木「さあ田中、お風呂場に入るんだ」


田中「ええ……!?うわああっ!なんだよこのモヤ!」


佐藤「湯気だよ」


鈴木「じゃあドアは閉めるからね」


田中「ええ!?ちょっと待ってくれよ!こんな所に俺一人って、どうすりゃいいんだよ!」


佐藤「風呂入れよ」


鈴木「はい、閉めたよ。田中、どんな感じ?」


田中「嫌な感じだ……なんか、蒸し蒸しするし、ここにいるだけで、汗が出てくる……」


佐藤「風呂沸けてるからだよ」


田中「変に声も響くし」


佐藤「風呂だからだよ」


田中「嫌だ……え、な、なんだこれ……」


佐藤「田中?どうした?」


田中「な、なんか浴槽の中に……うわああああああああああ!?」


佐藤「田中!?」


田中「うわあああああ助けて!助けて!」


佐藤「田中!?この風呂場の中では一体何が起こってるんだ!?田中!」


田中「開けて!ドアを開けてくれ!ああああああああああ!」


佐藤「鈴木やり過ぎだぞ!いったい何を仕込んだ!」


鈴木「ふふふ、もういいかな。開けるよ田中



田中「ああ佐藤鈴木助けて!浴槽からシュノーケル付けたパジャマ女が出てきて水鉄砲でお湯をかけてくるんだ!」


佐藤「何これどういう状況!?」


鈴木「この日のためにお母さんはスキューバダイビングのライセンスを取っていたのさ」


佐藤「無駄な労力過ぎる!」


鈴木「プロと一緒なら水深12mまで潜水可能だよ」


佐藤「凄さがわからねえ!でも多分1番下のやつ!」


田中「うわあああああこの人脚がある!」


佐藤「だからあるよ!鈴木のお母さんだから!この格好の人を人の親と認識できるかはわからないけど!」


鈴木「田中、出ておいで」


田中「うう……怖ぇ。……なぜかわからないけど、コーヒー牛乳が飲みたい……」


佐藤「え、お前今ので風呂入った感じになってんの?」


鈴木「では次は、僕の部屋に行こう」


田中「ええっ、まだあんの!?もう出てぇよ、こんな得体の知れない気持ち悪い家」


佐藤「人の家だぞ。いやその感想は大当たりなんだけど」


鈴木「まあまあ田中、そう言わずにそう言わずに」


佐藤「おい、まだあるのか?」


鈴木「うん、あとは取っておきがね」


佐藤「今までので全く信用出来ないけど期待しておくとだけは言っておくよ」


鈴木「ありがとう。誇らしいよ」


佐藤「どこが誇れる?」


鈴木「さあ田中、着いたよ。ここが……一家心中の現場の部屋さ!」


田中「う、うわああああ!」


佐藤「お前よくここで寝れるな」


田中「で、でもここら辺のカーペットのシミってまさか……!?」


鈴木「ああ……ジュースこぼしちゃった」


佐藤「ちゃんと洗えよ」


田中「じゅ、銃殺!?」


佐藤「言ってねえよ!どうしたあまりの恐怖に聴力が狂ったか!?今までの何が怖かったんだよ!」


鈴木「まあまあ、取っておきがあるから……」


佐藤「お前の本番本命取っておき全く信用ならねえ」


鈴木「ほら田中、窓の外を見てご覧」


田中「え?な、なんだよ……」


鈴木「わっ!」


田中「うわああああああああああああ!?」


鈴木「怖かった?」


田中「や、やめてくれよ……!」


佐藤「……取っておきコレ!?」


鈴木「ふう」


佐藤「ふう。じゃねえよ!お前何やり切った感出してんの!?」


田中「もしかして、今のがこの家の霊!?」


佐藤「違ぇよ!鈴木のお茶目だよ!」


鈴木「さあ、そろそろ一番の仕掛けかな」


佐藤「お前の中のナンバーワン何個あんだよ!どれもワースト入り間違いなしだけど!」


鈴木「さあ!みんな出番だよ!」


田中「え?う、うわああああああああああああ!?」


佐藤「うわっ、鈴木のお母さんお父さんに、従姉妹に学校の先生!?なんで急に鈴木の部屋に!?」


鈴木「どう?このオールスター感」


佐藤「全くワクワクしねぇ」


田中「ぜ、全員脚がある……!?」


佐藤「まずそこ確認するんだな。変なトラウマ出来ちゃったな」


鈴木「さあみんな!クラッカーを持って!」


田中「えっ!?えっ!?」


佐藤「は?」


鈴木「はい、パァァァァァンッ!!」


田中「ぎゃあああああああああああああああああああああ!?」


鈴木「サプライズ!田中、誕生日おめでとう!」


佐藤「……え?」


鈴木「田中の為に、今日はみんな協力してくれたんだよ!」


佐藤「いや、田中の誕生日、今日じゃねえよ……」


鈴木「……え?」


佐藤「田中の誕生日、夏だよ」


鈴木「……心霊現象?」


佐藤「お前の勘違いだよ」


田中「あ……あばば……ばば……」


佐藤「た、田中っ!?泡吹いて気絶してんじゃねえか!大丈夫か田中!」


鈴木「なんだ、じゃあ帰ろっか」


佐藤「お前マジ最低だな!って帰るってお前ん家ここだろ!」


鈴木「いや、そうだけど違うんだ」


佐藤「は?」


鈴木「この家で心中した家族っていうのは、僕達なんだ」


佐藤「え、何言ってんの?」


鈴木「僕らの遊びに付き合ってくれてありがとう。佐藤、田中、友達になってくれて、ありがとう……」


佐藤「消えたっ……!?じゃ、じゃあ本物の幽霊……!そ……それを田中に見せろよ!」




〜幕〜








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