夢破窓在のブログ

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放射線とは何か?
放射能とは何か?
福島事故とは何か?

黒い煙

今頃になって、2021.03.11に日テレが放送した番組をツベで見ました。
10年企画番組のようです。

最新技術で"新事実"判明 原発爆発”黒い煙”の正体は?(2021年3月11日放送

言っている事は以下の通り。
「3号機の爆発について詳細に調査した資料がない」
「爆発は4階で起きていた」
「何かが5階より先に4階で起こっている」
「輪郭をはっきりさせる画像処理を行った」
「大きな瓦礫が高く上がっているのが確認された」
「黒色は格納容器の下に配線されているケーブル類がメルトダウンで燃えたから、可燃性のガスが発生した」
「可燃性のガスが燃焼しつつ上昇したので、勢いよく高く昇った」
「東京電力は解析に真剣に向き合っていない」
「そうだ、そうだ」原子力規制庁の役人が相槌を打つ。


原子炉建屋は上半分は石膏ボードで覆われています。
高圧や爆発物を扱う建物では、万一の時の圧力を逃がす為に上部は壊れ易く作ってあります。
内部では5階建てとなっているようです。
破裂は「水素の層」と「空気の層」の「境界」で発生しました。
水素の層の厚さの分だけ天井から離れた場所で発生します。
4階で起きたのは層の厚さがそれだけあったという事で「当たり前」の話です。
新たな発見かのように言う感覚が理解できません。

水素は軽い物質で簡単には空気とは交じり合いませんから、教師が管の先で混ぜ合わせて、頃合いを見計らってマッチを投入する、理科の「爆鳴ガス」の実験のような破裂は起きません。
5階より先に」と言っていますが、境界より上で何かが起きる事はありません。
境界で発生した火が天井からも漏れて観察されただけです。

ネットで多くの写真を見ましたが、撮影出来たのは福島テレビの現場から17km離れたテレビカメラだけのようです。
どの写真も遠くからの映像を静止画像にする為輪郭をはっきりさせる処理をしているようです。
この番組では画像を黒く処理して「黒い煙が」と言っていますが、元の画像を見れば煙の色は明らかに「屋上の塵埃の色」であることが確認できます。
前回の当ブログの特集の10回目「3号機 噴煙」で、破裂の瞬間の写真はコラージュがなされていると指摘しました。

福島テレビの映像が正しいとすると、煙の色はこんなに濃くないし、中央部の煙の勢いは明らかな捏造です。

同じ映像から切り取ったもののようですが、こちらは現実に近い画像になっています。
番組で何度も映される破裂の映像、こんな暗闇のような世界で破裂が起きてはいません。
建屋の色に合わせたとか言っていますが、当時の福島はこんなに暗くなかった。
写真が撮れていたかのような画像はすべてそのままでは受け取れません。

煙の高さについては、切り取るタイミングにもよりますが、以前私が指摘したような中間部を切り取って高さをいじった気配はなく、こんなもののようです。
この部分の捏造指摘は私の誤りです。

「大きな瓦礫が高く上がっている」との指摘がありました。
ボードは境界での破裂で吹き上がりますから、バラバラにならずに、数枚のボードが連なって高く昇ったものも幾つかあったようです。もし「爆発」なるものが起きていたら、ボードは粉砕されて、大きな”瓦礫”が飛ぶ事はないと思います。
天井のボードは、これを固定する薄い材木共々押し上げられました。

福島事故で原因不明の話が私の中で2~3個残っていました。
その一つがタービン建屋に空いた穴。


「瓦礫」なるものが飛び散ったのであれば、もっとたくさん穴が開いていて良い筈です。
2号機の屋上など傷一つない、それなのにタービン建屋のあの穴は何なのだ?
どうやら高く上がったひと連なりのボードの一つが斜めに落下して穴を開けたようです。
タービン建屋も高圧を扱うので天井は石膏ボードです、簡単に壊れます。
大きな「瓦礫」は数個ほどなので、二つが建屋天井に落ちた。
その他に木材が散見されますが、これも吹き上げられた天井の一部のようです。
ボードはもっとバラバラになって吹き上がっているものと思っていました。
この番組を見た唯一の収穫です。

建屋の下半分は石膏ボードではなく、ワイア入りのモルタルで作られています。
殆どが壊れずに残っていますが、一部に砕けたところがあります。
現場にいた人が「瓦礫」が飛んできて「死ぬかと思った」と語っています。
当時はそう思っても不思議はないのですが、「瓦礫」と呼べる「モルタルのカケラ」は幾らも飛んでいません。
命を奪われる心配はありませんでした。
吹きあがった石膏ボードを「瓦礫」と呼ぶのはやめて欲しいものです。
建屋の地上で目に見える部分はそれ程頑丈に作られてはいません。
原子炉は地表より下に存在しますが、こちらは中性子を遮断する目的の厚い鉄筋コンクリートで囲まれています。

格納容器の底の配線がメルトダウンで燃え上がって可燃性のガスが・・・。
格納容器の中には酸素はありません、燃え上がりようがない。
配線が燃えたのに、なぜ可燃性のガスは燃えずに建屋に還流したのか?
話が矛盾しています。
メルトダウンとなれば熔けた燃料の温度は2800℃を超えます。
これに関わればケーブル類は銅線も含めて気体になります。
銅の沸点は2562℃。
発生するガスも何も、銅線丸ごとガスになります。

建屋に還流したガスは高温ですから、還流直後は上から順に、水素、キセノン、水酸化セシウム親和水蒸気又は水蒸気、建屋の空気の層となります。
この後に暖められた空気が、冷やされた上部の重たい気体と入れ替わって行きます。
もしも配線から生じた可燃性のガスが存在したのなら、空気と交わった時点で燃えてしまいます。
上昇中に燃えて煙の勢いを増すとは考えられません。

可燃性のガスが生じたとして、建屋の空気と合わさると黒い煙が生じるのか?
映像を見る限り「黒い煙」など生じていません。
どう見ても、あの色は屋上に溜まった粉塵の色です。
ネットに幾つもの写真がありますがソースは同じ、福島テレビの遠方(17km)からの映像です。
各社切り取ったタイミングが異なり、鮮明にする処理を行っているので煙の下の部分の形状が異なっていたりします。

     格納容器圧力上昇    建屋破裂       時間差
1号機 11日20~21時  12日15時36分   18時間36分
2号機 15日03時00分     なし
3号機 14日07時44分  14日11時01分    3時間17分

燃料棒からキセノンと気体のセシウムが吹き出しました。
キセノンとセシウムの温度は約700℃。
セシウムは290℃の水蒸気と反応し、水素と水酸化セシウムが作られました。
両者の温度は(290+700)/2≒500℃
これらのガスはすぐに格納容器に噴出しました。
噴出時の温度はキセノン700℃、水素500℃、水蒸気290℃、セシウムは水酸化セシウム(500℃)になって水蒸気と絡み合いますが、1個の水酸化セシウムに何個もの水の分子が絡みますから、水酸化セシウム親和水蒸気の温度は320℃といったところでしょうか?

水素やキセノンは格納容器の壁面で冷やされます。
水蒸気も壁面で冷やされますが、一方で水素やキセノンに接して暖められたりもします。
3号機で格納容器に噴出した気体は3時間ほどしか冷却されていません。
1号機では18時間半、その差は15時間を超えます
どのくらい温度に差が出るのか私には計算できません。
建屋噴出時の温度を仮に以下の通りとしてみます。

        1号機        3号機      比率
 キセノン   400℃      600℃    
 水素     250℃      400℃
 水蒸気    180℃      250℃
 炉の熱出力 1380MW    2380MW    1.725
 建屋体積  41x41x49  45x45x85  1.524  

水素やキセノンは熱出力に応じた量が生成され建屋に還流しました。
高圧の気体が還流した事により、建屋の上半分のボードは膨らみ気味でした。
生成されたガスの量と建屋の体積を比べると、3号機建屋の方が幾分か圧力が高くなる計算です。
気体の温度差と膨張を考えれば更に圧力差は大きくなります。

破裂は水素の層と空気の層の境界で熱による分子運動で交じり合いが起こり、高温である事と、下からキセノン133、セシウム137のガンマ線を浴びて発生しました。
温度の高い3号機の方が混合層が厚い為、3号機では1号機に比べて熱出力差以上の大きな破裂が起こりました。

建屋の上部に水素が入ったアドバルーンがあると考えて下さい。
常温でも3号機のアドバルーンは1号機の1.725倍の大きさです。
天井を開けて開放すれば二つのアドバルーンは空に向いますが、大きい方が浮力が大きく、勢いよく高く空を目指すでしょう。
福島のケースでは水素量の差以外に、熱膨張で大きさに3倍以上の差があり、破裂の大きさも3倍以上ありますから、アドバルーンの上昇の勢いには大きな差が出来ます。

1号機では建屋天井のボードが十分に持ち上がらず、煙は斜め方向に向っています。粉塵の多くは下に落ちて色合いに差が出ました。
破裂の大きさと温度差により3号機の天井のボードは高く上がりました。

原子力規制庁の人々は建屋の破裂のメカニズムを全く理解していないようです。
ガスの温度、圧力を解析した気配すらありません、それで「ケーブルが焼けて黒くなった」なんて工事現場の焚火じゃあるまいし、黒い煙なんて上がっていないでしょうに。
この元長官と言う人はガッコで物理や化学を習っていたのでしょうか?

「原発の再開を」と口では言いながら何もせず、こんな名前の役所を放置している馬鹿がいますが何とかならないものでしょうかね?

https://www.youtube.com/watch?v=vFVpTZExt-Y

( 終 )