株探特集・・・防衛力整備計画43兆円の潮流、地政学リスクの高まり

米国株市場、世界的に株式市場が不安定な値動。トランプ米政権関税引き上げ策に世界が翻弄。

米国ではここにきてリセッション(景気後退)懸念、株式市場にネガティブ材料。


 ウクライナとロシアの戦争、ロシア側が即時停戦に合意しないという駆け引き、地政学リスク。

欧州では防衛コストの上昇、ドイツですら国防費などの増強を目的に債務抑制策を緩和する方向る。


 日本も近い将来に中国によって台湾有事、防衛力強化に向けた動きは大きな政治テーマ。政府による27年度を最終年度とする5カ年防衛力整備計画では総額で約43兆円の予算が掲げられている。ちなみに19~23年度の5カ年計画ではおよそ17兆円。

今回部門別で計画の目玉の一つは、攻撃の届かない安全な距離で敵部隊に対処する「スタンド・オフ防衛能力」の強化であり、前回計画の2000億円から一気に約5兆円まで大幅に増額された。このほかミサイルの多様化など空からの脅威に対処する「統合防空ミサイル防衛能力」や、宇宙やサイバー領域などを含めたすべての能力を融合させて対応を図る「領域横断作戦能力」などに予算枠を大きく強化する方針。

防衛関連三羽烏
 

防衛省との取引額で群を抜く三菱重工業 7011 [東証P]。陸・海・空を網羅する中核企業としての位置付けは不変。
川崎重工業7012 [東証P]。防衛省との取引額第2位、哨戒機や輸送機のほか、潜水艦については三菱重と双璧の存在。

IHI 7013 [東証P]。航空・宇宙分野に強み、戦闘機エンジンの設計・製造などで実績が高い。

 

 

このほか東京市場では、防衛予算の拡大が業績面に強い追い風をもたらす“リアル防衛関連株”への物色が広がっている。

兵器の開発・製造を祖業とし、国内唯一の火砲システムメーカーである日本製鋼所 <5631> [東証P]。

防衛用航空機向け電装品で高い競争力を持つシンフォニア テクノロジー <6507> [東証P]もスタンド・オフ防衛分野で着目。水陸両用の救難飛行艇「US1」や「US2」で名を馳せる新明和工業 <7224> [東証P]

レーダー機器など航空機搭載用電子機器及び艦艇向け航法装置の開発・生産を行う東京計器 <7721> [東証P]

自動警戒管制など指揮統制・通信機器システム分野では、

NEC <6701> [東証P]が三菱重に匹敵する防衛のシンボルストックともいえる存在。

富士通 <6702> [東証P]もNECと同様に情報システム分野で力を発揮し、防衛施設向けなどで受注実績。

防衛用航空機や船舶のレーダーシステムやミサイルでは三菱電機 <6503> [東証P]が実力上位

 国内長期金利の上昇傾向、株式に対する相対的な割高感はあるが、それはあくまで全体論。個別株ベースでは世界的なテーマ買いの動きを考慮して、防衛関連株の物色人気は当面色褪せることはない。



投資資金が攻勢前夜の有力候補7選

◎日本アビオニクス <6946> [東証S]、防衛・産業用機器メーカー、レーダー装置、電子機器など陸・海・空の自衛隊向けで高い評価。信号・画像処理技術情報システムに強みを持ち、防衛予算の増加で同社の優位性が発揮される可能性が高まっている。防衛業界の双璧であるNECと三菱重を主要販売先。中期経営計画では27年3月期に売上高300億円、営業利益40億円を数値目標に掲げている。なお、25年3月期は売上高が前期比22%増の220億円を予想し、営業利益は同19%増の26億円と35年ぶりとなる過去最高益更新が見込まれている。

◎沖電気工業 <6703> [東証P]、情報通信システム、ATM及びプリンターなどを主力、ここ最近は防衛関連の案件が増加基調で業績に貢献。独自に研究開発水中音響センシング技術は、水中の対象物を検出・分析する技術。超小型光集積回路チップの開発。24年3月期に営業利益が前の期比7.8倍化した反動もあり、25年3月期は営業14%減益を見込むが、26年3月期以降は再び2ケタ増益路線に復帰しそうだ。時価予想PERは8倍台、PBR0.6倍前後と割安感が際立つ。配当利回りも3%を超えバリュー株素地も内包。


◎理経 <8226> [東証S]、IT機器の輸入販売商社、官公庁向け、防衛省との取引も活発。連結子会社エアロパートナーズを通じて防衛省向け航空機部材や保守点検ビジネスが好調。VR技術でも先駆しており、ヘリコプター用VRフライトシミュレーターなどで実績が高い。業績は前期から飛躍期に突入している。営業利益は24年3月期に前の期比2.6倍、25年3月期も前期比36%増の7億7000万円と大幅な伸びを見込む。しかも、なお保守的で一段の増額修正が視野に入る。26年3月期も防衛予算拡大による恩恵は大きく、豊富な受注残を武器に利益成長トレンドを確保する公算が大きい。
300円台前半の株価は値ごろ感が魅力なほか、出来高流動性にも富んでおり人気化素地を内包する。昨年の大納会と今年2月10日に367円でダブルトップをつけているが、ここをブレークして中勢400円台活躍を目指す。

◎細谷火工 <4274> [東証S]、火工品メーカーで防衛省への納入実績も豊富。自衛隊向け発煙筒や照明弾、救命胴衣・エアバッグに使われるインフレーター(ガス発生装置)など。会社側は保守的な見通し。25年3月期は営業利益段階で前期比3%増の2億円を予想するが、第3四半期(24年4~12月)時点で前年同期比2.8倍の3億6100万円と大幅に超過している状況にある。通期も会社側予想から大きく上振れして4億円を上回る公算が大きい。また、防衛関連株の位置付けでは以前から人気素地に富んでおり、株価に急騰習性がある。1000円トビ台で売り買いを交錯させているが、出来高流動性が高まれば意外高に発展する可能性を内包している。

◎放電精密加工研究所 <6469> [東証S]、金属放電加工の専業として抜群の技術力、特殊工程認証で業界随一の実力を有する。航空・宇宙関連のエンジン部品、環境・エネルギー関連のガスタービン部品。主要販売先である三菱重と昨年1月30日付で資本・業務提携、現在、三菱重が放電精密の発行済株式数の約34%を保有する筆頭株主。防衛装備品を含む航空宇宙関連部品の受注は増勢一途で、今後も防衛予算拡大を追い風に収益成長が続きそうだ。25年2月期は売上高が前の期比7%増の129億5600万円と過去最高だった22年2月期の水準見通し。営業利益も同7割増の3億9100万円を見込んでいる。


◎ナブテスコ <6268> [東証P]、制御装置(モーションコントロール装置)の大手メーカー、産業用ロボットの関節部分に使われる精密減速機はグローバルベースで約6割と群を抜く商品シェア。自動ドアでも世界トップクラス。航空機の3次元の動きを正確にコントロールするFCA(フライト・コントロール・アクチュエーション・システム)では国内シェアを独占。防衛省案件も追い風。25年12月期売上高は前期比4%増の3360億円を予想しており、これは2期ぶりに過去最高更新となる。営業利益は同27%増の187億円を見込む。

2月中旬に発表した24年12月期決算が減収減益だったことで株価はマドを開けて急落、その売りも一巡。2300円台は下値限界ゾーン。今期業績回復を織り込む形で早晩マド埋めから2000円台後半を目指す展開へ。

◎菱友システムズ <4685> [東証S]、情報処理やシステム開発、情報機器販売など製造業向けを中心に総合情報サービスを手掛ける。同社の3割強の株式を保有する三菱重向けが売上高の約半分。防衛・航空宇宙関連向けに高度な解析シミュレーションサービス(解析・設計エンジニアリング)が会社側の想定以上に好調で業績押し上げ効果。23年3月期以降トップラインの伸びが鮮明で、つれて増収効果に伴い利益の伸び。25年3月期営業利益は従来見通しの40億円から46億5000万円(前期比30%増)に上方修正しており、連続過去最高更新となる見込み。PER11倍台と割安感がある。