「美味だねえ」
夕餉を次々と平らげていく勒七に呆れが宙返りをする。
悠助が思わずため息をついた時、急に戸外が騒がしくなった。
「(血腥い……)」
「あれや、参ったねえ」
流石に箸を置いた勒七、それを横目に廊下に出る悠助。
勒七は慌てて跡を追う。
暫く歩いた二人が見たものは、血塗れの床や壁、人間。
そして血刀を持った血達磨の女将だった。
「派手にやったもんだねえ」
呑気に構えている勒七に悠助は鋭い視線を向ける。
「死にたくなければ気を抜くな」
「おや、心配してくれるのかい」
「其程死にたいのならば協力してやろう」
桜姫の切っ先を勒七の喉元に突き付けて言えば、流石に不味いと思ったのだろう。
顔色が悪い。
「ひ、引き込めておくれ」
悠助は黙って刀に力を入れ、刀が風を切った。
聞えてきたのは、悠助の苦しげな声と……刀が交わる金属音だった―…