個人的に興味のある話題だったので,番外編としてデータを出してみました.

甲子園は投手有利の打低球場として有名です.だからこそ,阪神の周囲からは「打てないのだから守備重視のチームに」や「スモールベースボールを」といった声が聞かれています.

 

ここ数年の阪神は金本監督を筆頭に世代交代を推し進め,打撃を中心としたチーム作りを行って(もともとの投手力もあいまって)2017年には貯金17を記録し,おそらく黄金期広島に被ってしまう不幸がなければ,例年のセリーグであれば優勝していてもおかしくはないほどのチームを作り上げました.

しかし2018年,阪神は突然の貧打に襲われホームであるはずの甲子園で全く勝てない日々が続き,最終的には優勝争い候補から一転,最下位でシーズンを終えることになりました.

これにはホーム甲子園で62試合21勝39敗2分:勝率.350,とてもホーム球場とは思えない勝率を記録してしまったことが主要な要因としてよくやり玉にあがっています.そして甲子園で勝てなかった原因は阪神が極端な貧打にあえいでいたからだ,とも.

 

これに対してwRC+等の打撃指標をもって「阪神は貧打のチームではない」とする反論も聞かれています.しかしシーズン全体の打撃指標はホームゲームやビジターゲームを総合的に評価したものであり,これだけでは本当に甲子園で打てなかったのか?という疑問に答えることはできません.

そこで,今回は甲子園で行われた試合のみを抽出して阪神の試合ぶりがどうであったのかを探りたいと思います.

 

まず,評価対象のデータとしては2018年に甲子園で開催されたセリーグ同士のリーグ戦計53試合を取り出しています.

交流戦もそれぞれの本拠地で9試合開催されていますが,試合数が少ないことやパリーグの投手との対戦での成績が入り込んでしまうため今回は除外しました.

 

この53試合の成績を集計し,今回は簡易的にTHE BOOKにおけるwOBAの係数を用いて各種打撃指標を算出しました.

このような形にすることで,甲子園という球場の影響を取り除いて阪神の打撃が他チームと比較してどうだったか?を数値化することができます.

※THE BOOK wOBA(scale調整前) = ((0.62*(BB-IBB)+0.65*HBP+0.77*1B+1.08*2B+1.37*3B+1.70*HR)/PA)

  wOBAscale = LgOBP/LgwOBA

 最終wOBA = 調整前wOBA * wOBAscale

 

53試合の成績を抽出したものがこちらです.

これを見るとやはり阪神は得点創出が低いことが分かります.しかし,これは特定の一球場での試合のみを取り出していることに注意が必要です.

すなわちビジターチームは必ず阪神投手陣としか対戦していないし,阪神打線はビジターチーム投手陣としか対戦していない,というバイアスがかかったデータなのです.

ですからこれを対戦投手陣の違いに合わせて補正しなければなりません.

今回はビジター5チームはすべて平等に阪神投手陣と対戦していますから,阪神打線の成績に阪神投手陣を基準とした補正をかけることとします.

 

その方法ですが,「日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog」さまより「PFを考慮した各チームのFIP」を参照して,阪神投手陣との比率を求めました.

たとえば,広島投手陣のPFを考慮したFIP-は103,阪神は99ですから広島投手陣は阪神投手陣と比較して103/99=1.04だけ相手打者の成績が良くなるのだろう,という想定をしたものです.この数値で阪神の各球団別のwOBAを除することで阪神投手陣を基準としたwOBAに補正しました.

 

こうして得られた対戦投手補正後wOBAを用いて打席数による加重平均を求め,全体の対戦投手補正後のwOBAを算出しました.

その結果が以下の通りです.また見た目に分かりやすくするためwRAA,wRC,wRC+(甲子園試合のみ版)を同時に算出しています.

ということで,やはり阪神は対戦投手の違いによる条件の違いを取り除いても甲子園で打てていなかったことが分かりました.

wRC+にして93程度なのでは?と思われるかもしれませんが,甲子園は阪神のフランチャイズですから全ての試合に阪神が関わっています.すなわち阪神の成績が半分の割合を占めていることがポイントとなります.

阪神の成績が平均値を半分の寄与率で作っているにもかかわらずwRC+が100未満として出力されてしまっている,ということは阪神の打撃成績がビジターチームの成績を確かに下回ってしまっていたというわけです.

単純計算にして阪神93:ビジター107ですから、阪神はビジターチームよりも1割以上得点創出に劣っていたということになります。


そしてこの阪神の得点創出を唯一下回ったのが横浜であり,その横浜が唯一甲子園で阪神に負け越した,という非常に分かりやすい勝敗表の結果となっています.

 

ただ,上の表では得点創出にあまり差のついていないヤクルトが勝率.800と阪神に完勝していることが説明がつきづらいことに気付かれることでしょう.対戦球団別の成績を見てそれぞれの対戦成績を考察してみます.

実は阪神打線を最もよく抑えていたのがヤクルト投手陣であったということなのですね.巨人と並んで投打に阪神を圧倒していたことが分かります.

対して中日は阪神打線を抑えられていなかったことが分かります.実際勝敗も4勝5敗(阪神目線)ですから,紙一重の対戦成績でした.

広島はごくごく平均的な投手成績ではありますが,やはり自慢の打線の力で打ち勝っていたようです.

横浜もそれなりに阪神打線を抑えていそうなのですが,自分たちがそれ以上に抑えられて唯一の負け越しチームとなってしまいました.例年言われている阪神と横浜の相性なのでしょうか?

 

ちなみに甲子園における阪神の投手成績はビジターチームの打撃成績を見ればよいわけですから,2つ上の表を見ていただくのが分かりやすいと思います.wRC+123の広島ですらOPS.730ですから,阪神投手陣が如何に相手チームを抑えていたか(そして阪神打線が如何に抑えられていたか)がお分かりになると思います.

ということで,阪神低迷の原因としてはやはりちまたで言われているように甲子園で阪神打線が打てなかったから,とするのが妥当なのではないでしょうか.

 

特に今回の検証は甲子園という打低球場の影響を排してのものですから,阪神打線は甲子園によって低く貶められている,のではなくて地力で他球団に後れをとっているのかもしれません.

甲子園だから,と諦めるのではなくさらなる打撃力強化をすることが阪神の立て直しには必要なのではないのでしょうか.