もし、天国へ行くのに置いて行っちゃった体だけを抱いたことがある人は連絡下さい。多分遺体って言うんだろうけど、抱っこしてみたら遺体って言葉には当てはまらないような姿で。遺体っていうとすごく遠い、違和感というかなんていうんだろう。実際抱いてみるともうほんっとうに今にも目を開けて泣き出しそうであの子だけ時が止まってるような、そんな感じ。でも魂っていうかあの子の心とか気持ちとか、中身じゃなくって。重い。すごく重い。5キロもないはずなのに10キロぐらいに感じるような。でも中身だけはあるけど、心はないんだな。ってそういうのはもうここにはないんだろうなってわかるような感じ。抱っこできた瞬間はなんかほっとしたというか。重さがあって寝てるような綺麗さでもう本当に起きるんじゃないかってくらい。でも腕がだらんと落ちたままで拾って載せてもすぐバランス崩して落ちちゃう。じゃあもうわかっちゃうんですよね。体だけなんだ。って。それがわかるともうだめ。全部に気がついちゃう。5キロもないはずの体がすごく重くて冷たくて硬くて。服にはちょっと解剖した後のあたりに血があって。なんか夢を見て現実から逃げてる自分を客観的に見えてきて自分が嫌になって。何もしてないのに現実から逃げて姉に何もしてあげれなかった。沢山のものをもらっておいて返すべきだった時に何も返すことができなかった。背中を後ろから見ることしかできなかった。手を貸すことも声をかけることも、何も。姉の大事な息子を、家族、家庭を守ることができなかった。自分で精一杯で守ろうとさえしなかった。辛い辛いって自分は可哀想だと心のどっかで思ってたのかな。隣にもっと辛くてぼろぼろででも前を向かなきゃいけない人がいたのに。いつも笑って冗談を言い合って、強くて、自分で言うのもアレだけど、すごい仲のいい姉妹だったと思う。そんな姉の背中はちっちゃくて、あんなにちっちゃくなかったのに気付けなかった。見てなかった。
もしやり直せるなら甥を抱いてから家に帰りたい。いってしまったあの夜に戻って抱っこしてから家に帰りたい。あの夜会いに行ってたのに抱っこしなかった。言い訳になるけど、寝てたから。起こしちゃうと思って。でもそんなこといいから泣いても抱けばよかった。抱いて一度起こしたら今は生きてたかもしれない。次の機会にって思って帰らなかったらよかった。なんで当たり前に次があるって思ったんだろう。次ってお通夜になってしまった。15歳で甥っ子を失くすなんて思ってなかったし、考えたことすらなかった。でもそれが問題なんだろうな。当たり前が当たり前じゃないっていうけどこれが当たり前にならないっていうのはすごくしんどい。辛い。これくらい当たり前でいさせてよって思うことダメって言われるような。だってまだ生まれて40日とかだから。それくらい思ってもいいんじゃないかな。ダメだったんだよね。甥を抱くのを諦めたあの夜から次に抱くのがお通夜だなんて思っても見なくて、この後悔を、気持ちを吐き出せる人もいなかった。家族はみんな自分で精一杯で、隙間は姉に使うから。それが当たり前なんだけど。わかってるけど。本当にそうだし、姉を支えるべきでそっちに専念して欲しいのが本心だけど。誰にも弱音を吐くことができなくって、後悔を口に出して誰かに受け止めてもらえなくって。落ち着いてからでいいかと思ったけど落ち着いたら落ち着いたらで自分のせいでまたみんながあの頃に戻ったり姉が自分を責めることが分かってたから。そうしてるうちにもうこの気持ちを吐き出すのを諦めちゃって。でもたまに思い出してしんどくなって辛くなって。誰かに聞いて欲しい。でも誰に。っていう繰り返しで。
