目についた大きい家の屋根で月光浴をするのが最近の楽しみである。
気配を消しているので人間にはばれない。
街を見下ろすと、まだ明かりがついていて綺麗だったりする。
「はぁあ…やばい…眠くなって…き…」
眠たくなって瞼を閉じる。

ドサッ

「…痛い」
どうやら屋根の上で寝てしまったら落ちてしまったらしい。
やばい、民家の庭に落ちちゃったよ…人間に見られる前に逃げなきゃ…
「まって」
立ち去ろうと羽を広げた瞬間、後ろから声が聞こえた。
まさか…見られた?
振り返ると障子は閉じているが、明かりがついていて、女性の影が見えた。
「まって…寂しいの、行かないで」
綺麗な声だが、寂しさが混じったそんな弱々しい声をしていた。
朝陽は、帰ろうとしたが女が気になって声をかけた。
「お嬢さん、眠れないのかい?」
「ええ、そうなの。お願い、私が眠るまで、ここにいてくれないかしら」
朝陽まいったなぁと思いながらべつに構わないと答えた。
「私ね、親から外へ出てはいけないって言われてるの。だから障子を開けられないの。あなたは優しいわね、私の我が儘に付き合ってくれて。あなたの顔が見てみたいわ」
「…それは無理だよお嬢さん。俺の事は見てはいけない」
影の女は首をかしげた。
「どうして?あなたもしかしてお化けなの?」
「…そうかもな」
女はしばらく黙ってしまった。
怖くなってしまったのか?
「あなたお化けなのね!なら障子とか通り抜けたりするのかしら?」
さっきより少し明るい口調で語りかけてきた。
「…それはないかな」
「そうなんだ…」
女は少しガッカリした口調で言った。
「ほらお嬢さん、眠るまでだろ?横にならないと眠れなくなってしまうぞ?」
「そうね、その前にあなたの名前を聞かせてくださいな」
「俺か?」
「ええ…そう。」
女は横になったのか、灯りを消した。
「俺は朝陽だ。あさひ。」
「朝陽…朝陽さん…」
だんだん女の声が聴こえなくなってきた。
「なぁ、お嬢さんも教えてくれよ」
「………………………」
返事か来ない。
寝たのか。
帰ろう。
なんだか眠い。
朝陽はその場を離れた。
ふと、女との会話を思い出して朝陽はまた来てみようかなと思った。