
こうの史代「この世界の片隅に」上中下巻
ドラマで放送され、漫画本を購入しました。
劇場アニメは観ていなかったのですが、先日放送されました。
また漫画の本を読み返していました。
主人公の、すずは広島県草津で海苔を作っているおばぁちゃんがいます。すずも兄弟も小さい時から手伝いに来ています。

出来た海苔を渡しに行くときに人さらいにあいます。もう一人男の子もさらわれていました。
なんとか二人は逃げ出します。
そして男の子は成人し、すずを探しだし結婚を申し込みます。
すずは、絵を描くのが好きな、ぼんやりした子供なので覚えていません。
なんだかんだ祝言をあげることになります。戦時中で食べ物もあまりない時期でしたが、のり巻きやお煮しめなど御馳走が並びます。

美味しそうですねぇ。のり巻きが食べたくなります。
初夜を迎えるわけですが…

すずは、おばぁちゃんに「晩に婿さんが傘を一本持って来たか言うてじゃ、ほしたら、はい、新(にい)なのを一本持って来ました。言うんで、ほいでむこうが、さしてもええかいの言うたら、どうぞ言うええか?なんでもじゃ」
そう聞かされていました。傘はあるかと聞かれて緊張するすずでしたが、干し柿を取るためでした。
二人で食べますが美味しそう。
キスシーンも二回くらいある漫画ですが、その時代からキスはあるんですね。そんなことを考えてしまいました(笑)
嫁いだ次の日なのに誰よりも早く起きるすず。

水汲みやらご飯を炊いたり。まだ勝手もわかりません。年齢も18くらいです。姑は足が悪くて任せきりですが優しそうです。
分からないことは聞いたりしています。まるで就職したてのようです。新人の頃を思い出します。
初夜をおえて、こういうことは初めてなのにシミジミする間もなく日常はやってくるんですから大変ですよね。
実際円形脱毛になっていました。
この漫画の魅力の1つに当時の節約料理を見れる所ですね。
配給が、どんどん減ります。
野に咲く花なども使ってます。


この辺りまでは、まだほのぼのとも読めますが、だんだんと戦争が激しくなります。
義姉の子供と一緒に居たところ爆弾が。
子供は亡くなり、すずは片手を失います。
義姉からは責められ、空襲の多さに呉から実家に帰ろうと思います。
同じ広島県でも、すずの実家は空襲が少なく、手を無くしたすずに妹も帰ってくればいいと言います。
すずは精神的に追い詰められますが、義姉は片手でもはけるゴム入りのモンペを作ってくれたり、あんたが悪いわけではないのは分かっていると和解します。
そんな時に8月6日ピカッと呉が光りました。
新型爆弾が広島に落ちたのです。
離れていた呉は被害にはあいませんでした。
しかし、すずの両親は亡くなり、妹は原爆症になります。
見舞いに行った、すずに妹すみは腕を見せます。
「うち、こんなしみが出来てしもうて…なおるかねぇ?すずちゃん、うち治るかねぇ?」
治るよ、治らんとおかしいよ、と言うすず。
このあと妹がどうなったかは描かれていません…。父親は原爆症ですぐに亡くなりました。すみは生きていてくれるといいのですが…。
帰り道、母を亡くした子供が、すずに寄り添い、子供が出来ないすずは、愛情を感じ連れて帰ります。
どこにでもある愛…
帰宅すると、なんせシラミが凄くて義父母やおばさん達は、風呂に入れさせるか、服を熱湯で煮るかとバタバタわいわい。義姉は亡くなった子供晴美の服を出してきて、晴美の服じゃ、こまいかねぇ…
方言も魅力の漫画です。こまいは小さいって意味なんですね。
そして、8月15日正午、玉音放送にて終戦が伝えられ、義姉は子供の名を呼び陰で泣きました。すずも地面に手を付き泣きに泣きました。
相変わらず物はないです。塩もないので遠くにある海で海水を持ってきます。
行列に並ぶ、すずと義姉。なんの行列? すずは「何でもええですよ、何でも足らんのですけぇ」
方言が本当にいいですね。
待つ間、ギブミーチョコレートとアメリカ兵にねだる子供達を見て、義姉は、娘も生きていたらあがいなマネしたじゃろか…と呟きます。

お待ちどお様!
紙くずが入った占領軍の 残飯雑炊でした。
おそるおそる食べますが…

『uma~~』
うま~と、なんとも美味しかったようです。
しかし、わたしらだけよばれても家で待っとる者が…そう言う義姉。とても家族思いです。

すずは子供に間違えられ米兵さんにチョコレートを貰ったようです。
その時のチョコレートはハーシーズみたいですね。
ほのぼのとした絵柄に静かに感じる反戦。
戦時の生活が、だらだらといい意味で描かれていて、そこに幾つも転がっていた筈の、誰かの生や悲しみ、そしてきらめき。
今よりも幸せの基準が低いんですよ。塩味に幸せを感じていたりしますから。そういうのを見ると、アレもコレもと欲張る自分に反省です。モノを大事にしなければいけませんね。
ちなみに晴美の服は、孤児の子供は着れたようです。あとがきに、服を着たイラストが小さく描かれていて、笑みがもれました。