「サイボーグ009」「ジュン」などの作者、石ノ森章太郎さんの自伝的漫画を2冊紹介します。

ネタバレ注意。

 

石ノ森章太郎の物語

発行:2018年9月19日

購入:新書(Amazon)

目次

〇青いマン華鏡
〇トキワ荘物語
〇僕の部屋にはベートーベンのデスマスクがあった
〇トキワ荘のチャルメラ
◎ドボン
◎まんが寄席
◎時ヲすべる トキワ荘1961
◎時ヲすべる スタジオゼロ1963
◎ゴルフ友遊録どっこいショット
〇小川のメダカ
〇風のように……背を走り過ぎた虫
◎MYフレンド
◎鋏
◎怪談噺チャーイ
◎吸血

日本漫画家大全 石ノ森章太郎
発行:1997年8月15日
購入:古書(Amazon)

目次
◎手塚治虫の逝った日
〇トキワ荘のチャルメラ
〇青い万華鏡
〇小川のメダカ
〇僕の部屋にはベートーベンのデスマスクがあった
◎ボクののらくろ
〇風のように…
◎藤本氏の描き方
◎凸凹コンビ 藤子不二雄伝
◎アンポハンターイ
◎孤独な手紙
◎雪男

2冊とも内容は共通のものが多いです。
(◎印が共通しないもの)
 
☆青いマン華鏡
 元のタイトルは青い万華鏡
故郷のデパートでのサイン会に出席するために電車に乗った主人公(石ノ森章太郎)が、隣の席の男の子から借りた万華鏡で、自身の記憶を追体験します。
 お姉さんの説得が10代女子の説得とは思えないのですが、30過ぎた弟が早世した姉を”良いように”描いたからこうなったのか、文学少女が高じて本当にこう言ったのか……。
 
☆トキワ荘物語
 部屋の戸を開けたら汽車から始まる無声マンガ
虫プロ商事の「COM」に掲載されました。
 
☆僕の部屋にはベートーベンのデスマスクがあった
 音楽とともにあった青春の話。
お姉さんが「音楽が好きというだけでも人生は豊かになるんじゃないかなア」と言いながら薦めてくれるマドンナの首飾りは石ノ森作品の中のお姉さん像に近いです。
……ところで、赤塚不二夫さんの絵の団子鼻の下の縦長の丸は何でしょうか?正面画は全部この丸がついているのですが、常に口を開けているのか?ほうれい線なのか?

 
☆トキワ荘のチャルメラ
 夜食のラーメンが夜鳴きラーメンからインスタントラーメンに代わり、マンガが個々の作品からインスタントメディア/芸術へ変貌していく過渡期の話。
 
☆ドボン
 石ノ森さん・赤塚不二夫さん・安孫子素雄さん・園山俊二さんの4人でドボン(トランプのブラックジャック)をして独り勝ちする話。字自体がマンガみたいな字でただの字なのに何故か面白いです。
 
☆まんが寄席
 落語調にいろんな人のマニヤなものを紹介していく話。
サイボーグ009連載の3年前の作品なのですが、「古き良き子供マンガ」という感じです。
実子の小野寺丈さんはまだ産まれていない時代で、作中の太郎君は架空の子です。
 
☆時ヲすべる トキワ荘1961
 現代で幽体離脱を練習中の青年が、トキワ荘で「龍神沼」を執筆をアシスタント中の山谷さんに憑依(?)します。
山谷さんに「ギャグマンガを描いている」と予言された赤塚さんは、「嘘でも嬉しい」と涙を流します。
 
☆時ヲすべる スタジオゼロ1963
  現代でアニメーターの男性が、雷に打たれ(?)スタジオ・ゼロ発足時の唯一の平社員・伊東君に憑依(??)します。
雨漏り激しい”スタジオ・ボロ”に手塚治虫さんが訪問し、鉄腕アトムの『ミドロが沼の怪人』の制作を依頼します。

※時ヲすべる は20話迄連載されましたが、1話のトキワ荘、8話のスタジオゼロの回が自伝的マンガです。
 
☆ゴルフ友遊録どっこいショット
 漫画家はもちろん有名企業社長等錚々たるメンバーとの、ゴルフを通じての交友記録。
さいとう・たかおさんが『ズルむけの穴狙いの股好き』として登場します。
 
☆小川のメダカ
 父として、息子たちの情操教育の為に自身の子供時代の話をし、すっかり近代化してしまった故郷へも連れていきますが全然子供達には響きません。
 最終的にロードショーの「イルカの日」を見て涙する子供たち(……これでよろしいんじゃないでしょうか)
 
☆風のように……背を走り過ぎた虫
  手塚治虫さん追悼漫画
「ジュン」連載打ち切り騒動など。
作中の対談での手塚治虫さんのセリフ
「マンガは残りませんよ 作者と一緒に時代と共に 風のように吹き抜けていくんです -それでいいんです」
とは裏腹に、AIでの復活を果たしました。
石ノ森さんの提唱した「マンガは”萬画”だ!」は……。
結局全然浸透しませんでしたね。死人に口なし。
 
☆MYフレンド
 家にやってくる「友だち」のポコにマンガを教えます。
まさか石ノ森作品に登場するミュータントモグラ
がブレーン役だったとは……。
 
☆鋏
 明るく茶目っ気のある由香と、由香の紹介でやってきた美子と「ぼく」は、由香たちが高校生になってからも連れだって映画を見たり3人で一緒に遊んでいました。
 しかし「ぼく」の婚約により関係は破綻。美子は失恋を苦に精神を病み、鋏で腕を切り自殺未遂をし精神病院に入院。由美もまた手首を切り、自傷に使った鋏を「ぼく」のもとに持ってきます。
 
☆怪談噺チャーイ
 ナガラ族(コーヒーを飲みながらマンガを描く)の「わたし」は、ウエーター・珈奈子会いたさに、行きつけの喫茶店である可否茶館に日参し、数回のデイトをします。
 ですが、可否茶館のマスターが入れてくれるチャーイに含まれるカフェインのせいか、『親猫が”一種の愛情”により子猫を喰ってしまう』という”幻覚”に囚われるようになります。
やがて可否茶館は珈奈子の病気のために店を閉めます。
 珈奈子は本当に病気だったのか?マスターが実の父娘であるにもかかわらず愛し合った結果、殺されたのでは……?
 何もわからないまま、”幻覚”に悩まされる日々は終わりましたが、今度は違う喫茶店に通っても、しばらくすると珈奈子そっくりのウエイターが現れるようになります。
 
☆吸血
 漫画家の「ぼく」は吸血鬼騒動が起きた!と行きつけの喫茶店でウエイターの麻里に伝えるのですが、話している最中に麻里のノドにドラキュラの吸血痕のような傷を見付けます。
 麻里が何かしらの秘密を抱いていると知りつつ取材を進めていた「ぼく」は、「黙っているのが辛くなった」という麻里に、犯人は麻里の幼馴染の夕起夫であると告げられます。
 麻里は夕起夫も一緒に上京しないかと打診しますが、夕起夫はそれを断り、麻里の首に噛み付き吸血します。
 麻里は夕起夫が病気であると考え、「ぼく」は病気の治療法を模索し始めますが、夕起夫の吸血は治療可能な病気ではなく、コウモリの羽を持つ異形の生まれからくる特性でした。
 夕起夫はなんかよくわかりませんがコウモリと一体化して死にます。
 「ぼく」は漫画家の考察として、超未来の地球で暮らす、「コウモリ状の羽と、愛を確かめ合うための吸血の習慣をもつ人間たち」が、地球最後の瞬間に体内の子供たちを過去の地球へ送り出した結果、夕起夫のような超能力者が現代に生れ落ち、「愛のかたち」を吸血という行為で示していたのではーー。と結論付けます。

☆手塚治虫の逝った日
 巻頭カラー。
手塚治虫さんの訃報の直後に描かれたものだと思われます。マンガの神様が宇宙人に……。
 
☆ボクののらくろ
 手塚治虫作品に出会う前の、”まんぐわ”との出会いの話。
終戦直後の読み物のない時代、納屋で見つけた少年倶楽部の「のらくろ」を見付けた小野寺少年とお姉さんは、自分たちの読む本を作り出しました。
 
☆藤本氏の描き方
 似顔絵を描きあっているトキワ荘メンバーの、藤本弘(藤子・F・不二雄)さんの描き方。ベレー帽にパイプ、三角座りの藤本さんです。
 先の赤塚不二夫さんの絵もそうですが、似顔絵のデザインが画一されたのはきっとトキワ荘が脚光を浴びた頃で、実際にトキワ荘で描きあっていたのは写実的なこういう絵なのでしょう。
(「藤子・F不二雄の世界」より)

 
☆凸凹コンビ 藤子不二雄伝
 まんが以外共通点のない凸凹コンビの固い友情の話。
コンビ解消はこの漫画の12年後。
安孫子素雄(藤子不二雄Ⓐ)さんは滅茶苦茶お洒落なんですよね。なんだこの色使い。ファッションモンスターか。

 
☆アンポハンターイ
  安保反対を謳ってゲバ棒を持って戦う活動家も、実際はハゲの髭の妻子持ち……。という。
石ノ森作品には手塚作品のような時事ネタメタモリモリは少ないので珍しく感じましたが、余り読んでいないので見つけられなかっただけでしょうか。
 
☆孤独な手紙
 自分で自分に恋文を送る男性。
……。という解釈で良いのでしょうか。
今ならざっくりサイコパスとか言われるのでしょう。
 
☆雪男
 住めなくなった火星から来た異星人が、地球人にイエティと呼ばれ迫害を受けながら、家族を愛し、生活し、かつての自分たちのように滅亡していく地球人を予見する話。