ローチが次に取った行動は、正解とは程遠いモノだった。
この津波の中、ローチが生き延びるには、一切動かずにこの体勢を保つ事が絶対条件であるが、逆にローチは一歩前に踏み出たのだ。
ローチは、何か作戦があってそんな行動を起こしたのではない。そう、何も考えず一歩踏み出したのだ。
『パズルの顔面に一撃を入れてやろう』それしか、ローチの頭に浮かんだ事がなかった。
だが、その行動は、ローチが考えている以上に不味かった。
ガゴッ!という大きな衝撃音が、頭部のヘルメットに響き渡ったのだ。まるで頭だけ大砲で撃たれた様な衝撃に、ローチは思わず、また一歩踏み出していた。
また一歩動いた事により、今度は左肩に壮絶な衝撃が襲う。
ヘルメット内に表示されていた赤いモニターが、点滅を繰り返し、ビシッビシッ!とモニターに亀裂が入る。
『想定外行動により、自動修復が強制中断されました。ただちに現在地から離れ、安全なセフティーゾーンに移動して下さい』
女性アナウンスの意味は、ローチが動いた事により修復が中断されたので、この津波から逃れ、安全な場所に移動しろ・・・ということだ。
しかし、この津波から出る事など、ローチに出来る訳がなかった。そう、修復が中断された事により、体の自由を奪う程の衝撃から、身を守る方法が無くなり、ローチは今にも、津波に体を持っていかれても不思議ではない状況に置かれたのだ。
「おいおい!お前バカなのか?!動かなきゃ~お前の勝ちだったのによお!」
確かにパズルの言う通りだった・・・一歩踏み出したりしなければ、ローチの勝利は間違いなかっただろう。その失敗がローチを冷たく、突きつめる。
だがローチは、諦めていなかった。体中のフレームが崩れてゆく中、パズルの視線を真直ぐに睨みつけたのだ。
「僕は、戦友と約束した・・・『必ず守る』と!」
ローチはそう言って、また一歩前に踏み出す。いや、もうローチはパズルを殴るつもりで前に出ていた。
