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John's BOOROCKSブログ-I Love The Beatles, Fender Guitars & Movies!

ハンドメイド・エフェクター・ブランドBOOROCKS(ブロックス)のスタッフによる、音楽(BEATLES & Fender)と映画の気ままなブログ。

 今回もまた事実に基づいたフィクションをお送りします。お楽しみください。

 

 

レオ

 

 彼は必死になっていた。彼は深く悩んでいたのだ。「近くに住むカントリーミュージシャンから歪みのないクリーン・トーンのギターアンプを欲しいと言われた。先日は黒人のブルースマンから良く粘り良く伸びる音の出るアンプがいい、と言われた。どちらが正しいのだろう。俺には分からない。俺はギターが弾けない。ただし来店してくれた客には喜んでもらいたい。」そうなのだ。彼は本職のラジオ屋の片手間に、電子機器の知識を活かしてギターアンプを作っていたのだ。この時代、まだ市販のギターアンプなどなく、このように必要に応じてオーダーするのが普通だった。
「最近開発されたピックアップに合うようにアンプを作れるかい?」
「そのピックアップの付いたギターがあれば何とかなるよ。」
 
 何となく分かる。磁石にコイルを巻き磁界の中を動く鉄の弦が電磁誘導で電流を引き起こす。
「要はピックアップとはそう言う装置だろう。」
 こんな会話が続いたのだが、この時期まだピックアップも貴重なら、そのピックアップの付いたギターも貴重だった時代だ。
『であれば自分でも作れるかもしれない。』彼はそう思った。
 
彼の偉かったのは。実際にギター製作を試みたことだ。1946年にそのための会社も設立した。ロサンゼルスの田舎、フラートンに土地を買って、小さな工房も建てた。彼の思う通りの製品ができたのは四年の後である。 1949年、彼は最初のギターを世に出す。ブロードキャスター、後のテレキャスターである。
 
 ご承知の通り『小さな工房』とはフェンダーのことである。また『彼』というのはもちろんレオ・フェンダーである。ブロードキャスターは商標権の問題でその名をすぐにテレキャスターと変更される。当初、板きれギターと罵られていたこのギターも、次第にその便利さゆえに人気を博すようになる。何しろネックが反ったら交換できるのだ。この合理的な製法により、安価で大量な生産が可能となり、ビートルズが生み出したただ単に『ロック』と呼ばれるジャンルを普及させるのに大いに役立っている。
 
更に1961年、レオは世界初のエレクトリック・ソリッド・ベース「プレシジョン・ベース」を発売した。同時に世界初のベースアンプ「ベースマン」も発表している。このアンプはギターアンプとしても秀逸で、マーシャルアンプの手本となった。  
 そしてその後フェンダーはストラトキャスターという名器を世に出し、多くの類似品を生み出した。すなわち、レオのアイデアがなかったら、『ロック』はなかったのだ。と言うのも。大音量のアンプが増えて、それに対応できるソリッドギター、ベースをレオが発明しなければ、ロックは成立しなかったのだ。だからこそレオは多くのアーティストと共に『ロックの殿堂』入りしているのだ