発射秒読みに入った北朝鮮のミサイル「テポドン2号改良型」は、射程1万キロの米本土に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発途中にある。このため米国は安全保障上、今回の成否に重大な関心を寄せている。一方、今春の失敗に続き年に2度の発射命令を下した金正恩第1書記は、「2度目の失敗」というリスクも背負っている。さらに轟々の非難と制裁強化が待っている。それでも発射を強行する金正恩氏の勝算とは?
(久保田るり子)
■「金正恩氏は、失敗を恐れていない」
韓国国防部の試算によると、北朝鮮が1998年以来、長距離弾道ミサイル開発に投じた費用は推定約30億ドル(約2500億円)という。目的は核弾頭の運搬手段としてのICBM。ターゲットはワシントンだ。
ICBMを目指す「テポドン2号」の発射はこれで4回目だ。北朝鮮は中距離弾道ミサイル「ノドン」の完成と配備(現在約320基)が90年代に完了、その後着手したのがICBM開発で、98年に原型として「テポドン1号」を試作、その後06年、09年と時間をかけ慎重に開発してきた。
4月に打ち上げ、失敗した「テポドン2号改良型」は今回と同型だ。発射約1分後、上空150キロ付近で1段目ブースターが爆発した。ミサイル開発では通常、失敗した場合は1年以上かけての原因解明と改良を行うのが西側諸国の常識だ。8カ月後の再発射は異例で、父親の金正日氏もやらなかった「金正恩方式」ともいえるが、それだけに「技術的な問題を本当に克服したのか」との指摘も少なくない。
今回の発射は、金正日氏の死去1年の弔砲と金正恩氏の執権1年の祝砲の意味がある。また一斉に政権交代もしくは交代途中の中国、米国、韓国、日本への「揺るぎない金正恩世襲体制」というメッセージもあろう。だが、失敗してまた爆発したり落下すれば、国内の威信は低下し国際的非難も受けるというダブルパンチとなるはずだ。
しかし、専門家の見方は少し違う。北朝鮮の体制と政治動向に詳しい韓国の康仁徳元統一相は「金正恩氏は失敗を全く恐れていないだろう」と分析する。
「4月のミサイル発射失敗で金正恩体制に何か変化はあったのかといえば、全くない。情報公開されている社会ではないから、失敗しても体制維持のリスクになることはない」(康氏)
確かに今回、北朝鮮はミサイル発射について国内報道を行っていない。
「金正恩にとっては発射することに意味がある。発射を大々的に宣伝するだろう。今回は金正日死去1年、韓国大統領選、対米強硬姿勢など多目的だが、一番の狙いは『強盛大国の大門を開く』(金日成生誕100年の2012年に思想、政治、軍事、経済大国を完成する)としてきた年を、ミサイル発射というリーダーシップで締めくくり、体制を引き締めることだからだ」(康氏)
■勝算は「核とミサイル」の対米交渉力
米国の対北警戒感のなかにはシニカルな意見もあるようだ。
「米共和党の対北強硬派の一部は、『北朝鮮にテポドンを完成させたほうが、先制攻撃の口実になる』という意見がある。ミサイル発射の結果次第ではこうした軍事戦略も現実味を帯びてくるだろう」(米議会関係筋)
金正恩体制の「勝算」は金正日時代に確立した核ミサイル戦略だ。日韓両国は1990年代までにスカッドB、Cやノドンで北朝鮮の射程内に入った。長距離弾道ミサイルのテポドン開発は米本土への直接脅威による力を背景とした対米交渉力で、ミサイル開発と同時進行の核弾頭小型化がセットになっている。
北朝鮮はICBM完成を急ぎ、米国は先制攻撃をちらつかせる。その心理戦は今回もすでに始まっている。
米メディアによると米軍は今回、高性能レーダーと迎撃ミサイルを搭載するイージス艦「ベンフォード」と「フィッツジェラルド」の2隻を日本近海やフィリピン沖に派遣、ミサイルの探知や追尾を行い、不測の事態にも備える。さらに2隻を周辺海域に追加派遣する可能性もある。
ロックリア太平洋軍司令官は6日の記者会見で北朝鮮の動きを「注意深く監視している」と述べており、米軍があらゆる手段で今回のミサイル情報を収集していることをうかがわせている。
ミサイル発射は成功、失敗にかかわらず国連安保理決議(弾道ミサイル発射を禁止した1718号および1874号)違反。今年2度にわたる発射への国際的非難と対北包囲網の縛りがきつくなるのは確実だ。米韓はあらたに金融制裁実施についても検討を始めたともされる。
朝鮮半島に詳しい軍事専門家はこう解説する。
「核とミサイル開発について金正日路線を変えることはあり得ない。来年には核実験も実施するだろう。それ以外に、彼らが対米交渉を行う上での自国の安全保障はないからだ」
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