昨日も遅くまで残業で
また帰りが朝になってしまった
とある秋の日の早朝
眠気に霞む目をこすり
マンションの階段を
重い足取りで上がっていく
「ただいま…」
こんな朝方の時間
勿論、誰も起きてはいない
私は溜め息をつきながら
コート片手にリビングに向かう
「これじゃ…せっかくの休日も
半日は動けず終い…か」
この所、立て続けの残業で
息子の顔をあまり見れていない
ソファーに崩れ落ちた私が
目蓋に手を当てていると
廊下の方から足音がして
「…おかえりなさい?」
スリッパを軽く鳴らし
私の様子を伺うように
妻の美咲がリビングに来た
「ごめん…起こしたかな?」
「いいえ、帰る頃かと思って」
そんな私を見ながら
美咲は隣に腰掛け
「…いつもすまない」
私の口から出る詫びに
彼女はただただ首をふる
「ねぇ優太さん…昨日のこと
やっぱり気にしてる?」
「まぁ…その、ね」
昨日は本来、久しぶりに
家族3人で外食の予定だった
その約束をすっぽかした訳だし
楽しみにしていた息子は
さぞかし残念がっていただろう
私の表情からそれを察してか
「勇樹、初めは顔に出てたけど
でも、それ以上は何も」
何も言わなかったから、と
感慨深そうな横顔でそう呟く
その言葉の意味を
遅れて察した私は
「小学生の子どもにまで
気苦労させてるとはね…」
息子の成長にはよく驚かされ
その度に、そばで見守れない
惜しさだけが残り
「なぁ……私はあの子の父親を
やれているのかな?」
会社と家庭のバランスを
上手くとれない今の生活には
不安を募らせている
しかし、そんな私が
つい漏らす弱音を
美咲は聞き逃したことがない
「大丈夫、あの子の優しさは
アナタ譲りですから♪」
と、私の暗い胸の内を
優しく和らげてくれる
父親らしさとは何か
それを考える中で私は…
「そうだ…私が目を覚ましたら
勇樹にどこへ行こうか…」
「聞いておきますね?」
美咲の言葉に安堵した私は
疲れが限界を迎え
目蓋が重くなってきた
気付けば窓の外は
薄いオレンジ色になっていて
朝日が昇りかけている

私は、それを眺め
元気に遊ぶ息子を夢想し
「今日は少しでも長くそばに」と
胸に決め眠りにつくのだった…