only you,only (GUSH COMICS)/海王社

¥710
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う~~ん、すごく良かったです。

表紙からしてアダルティーだしw、シリアスで痛いんだろうな、とは予想してましたが、予想に違わずと言った感じでした。
この作品、BLをたくさん読んで酸いも甘いも噛み分けた、お姉様方が唸る一冊なんじゃないかな~なんてチラッと思いましたよ。

なんかね~、読後感が、小説を読んだ後みたいな感じがしました。
内容が濃いのはもちろん、それに加えて言葉に重みがあるような気がしたな~。

印象的な表情だけで見せる所ももちろんあるんだけど、大事なことは全て言葉になってるし、その言葉がダイレクトだったり、厚みがあったりするので、ものすごく響いてきました。

あくまで個人的な印象ですが、内容も含めて、木原音瀬さんの小説を読んでるような感覚がしましたね~。
すごく読み応えがありました。

男が、いろんなものを捨てて、男と生きる覚悟をするまでのお話です。

シリアスで重いお話だし(笑う所がいっこもないw)、ちょっとドラマチックですが、そうゆうのが好きな方には強くおススメできる本ですよ~(^-^)/


※以下感想ネタバレします。ご注意下さい※

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親族経営の企業の常務の息子で、いずれは跡継ぎになる予定の須藤(攻め)と、その上司でありお目付役の真木(受け)。

ある日須藤は、社内でゲイだと噂のある真木の乱れた姿を二丁目で見かけ、それをネタに、興味本位で「俺と寝ませんか」と迫ります。
最初は相手にしていなかった真木だけど、須藤からのしつこいアプローチに折れて、体を重ねるんですね。
実は真木は以前から須藤のことが好きだったんです。

「君の好奇心が一日でも長く続くといいな…」自分のことを一途に想う真木に、須藤は惹かれて行きます。
次第にこの関係に溺れていく2人。
でも、須藤を結婚させたい常務に妨害されて、一度は別れますが…とゆうお話。


まずね~、この会社、須藤が二丁目にいたとか、女性をヤリ捨てしてるとか、見合いするとか、そうゆう社員のゴシップがいちいち一斉メールで流されるんですよ。
なにこの会社、マスコミ部でもあんの!?悪意がありすぎで気分が悪くなりましたね~(`ε´)
こうゆうのが出回る社内風紀が問題だって、須藤も言ってましたが、ほんとそうだよ~。プンスカ。

いきなり怒っちゃいましたがw

まぁそんな居心地の良さそうじゃない会社で働く2人の話なんだけどw、須藤はもともとノンケで、ただお硬い主任の乱れた顔が見たくて、興味本位で近づいてくるんですね。

でも真木の方は以前から須藤が好きで、須藤でなければ誰でも同じって、一夜限りの相手と淋しさを紛らす為に寝まくってるんです。(薄幸で不憫な淫乱受け;)

真木は最初は須藤をあしらっていたんだけど、一度体の関係を持ったらタガが外れたようになるんですね。
すっごいデレでw、須藤の言いなりなんですよ。
カラコンつけたり、ホクロ書いてみたり、須藤のリクエストにいちいち応える真木がすごく健気で可愛いです。
えっちの時も、ものすごく須藤を求めるんですよね~。見てて痛々しいくらいに(´_`。)

で、そんな真木に須藤が惹かれて始めて、真木を大切に思い始めた頃に、2人の関係が常務である父親にバレるんです。

常務はまず真木にプレッシャーを与えるんだけど、このへんのやり口も正直、胸くそ悪かったですね~。(←思わず言葉が汚くなるw)
常務からの重圧に絶えられなくて、次第に弱っていく真木。

でもね、2人とも今の関係を続けて行けないことを、ちゃんとわかってるんですよ。

真木はもとより須藤の出世の邪魔をしたくないので、別れを告げるんです。
そしてそれに応える須藤。
須藤も会社での自分の対場をわかってるし、これ以上自分のせいで弱る真木を見たくないんですね。

なんかここ、悲しいけど、リアルだな~と思った。
学生とは違う、社会的地位も責任もある男同士の恋愛。
やっぱりすんなりとは行かないですね…(´_`。)
(ここでちょうどページ的には半分くらいなので、このままいかないよね…って祈る気持ちで読み続けましたが:)


須藤と別れて、ただ会社で須藤を盗み見して、”好きでいるだけ”と決めた真木。
久しぶりに二丁目に来て男遊びをするんだけど、須藤とのことがチラついて、できないんですね~。
「触るな 上書きされる」って言葉が、非常に痛かったです(>_<)
もう須藤を知らなかった時の自分には、戻れないんですね…。

電車の中で須藤の問いかけを思い出して、「うん…うん…嬉しい…頑張ろうね」って、泣きながら独り言を言うシーンがあるんだけど、真木の答えられなかった想いが溢れ出てて、すごく切なかった(T_T)

こんな風に乱されるから、人を好きにならないように気をつけてきたのに…。そんな真木の心をさらに乱す事件が起こります。

須藤の婚約が破棄されるんですね。

理由は、須藤が子供を作りにくい体質であること。

打算づくめの政略結婚だから、そうゆうこともあるのかもしれないけど、それにしても…って感じ…(´_`。)

そんな須藤の元に、真木は駆けつけるわけですが。

ここでね、真木は
「彼女が(君を)いらないんなら 僕が欲しい 僕が欲しい」って叫ぶんですよ。
なんてストレートな言葉なんだろうって、すごく胸を揺さぶられましたね~(T_T)


(関係ないけど、BL読んでるとたまにビックリするくらいグッとくる台詞がありますよね。だいたい受けの告白なんだけど…。私にとってこれもその一つになりました。)

ここまで言われて、やっと「好きです」と告白する須藤。
真木と生きて行く、腹をくくるんです。

なんかね、ちょっとこの攻めは、好き嫌い分かれるだろうな~と思いますf^_^;
打算的だし、大事なことは伝えないまま最終判断を相手に委ねるし、ズルい所があるんですよね。

でも私は、そうゆう弱さも含めて人間らしいな~と思う方です。
BLの攻めって、弱くてヘタレた所があってもなんだかんだ言ってスーパーマンが多いんだけど、この攻めは違います。
弱くてズルくて、ギリギリ状態の受けの心をもらって、やっと立ち上がるってゆう。
ここが少し、木原さんの書く、人間臭くてどろ臭い男と似てるな~と思いました。


その後は、ゆきずりの相手としか寝て来なかった真木が、初めて恋人と呼べる人と寝る幸福が、これでもかって言うほど描かれてましたね。

今まで偽名を使ってきたから、セックス中に初めて本名を呼ばれて、真っ赤になっちゃうとか。
ゴムを外されるのが怖くて、バックでやったことないとか。切な過ぎる(´_`。)

須藤に「後ろからやらせて」って言われて、最初は怖くてガチガチになるんだけど、手を握られた瞬間、安心して感じることができて、もう、どんだけいじらしいの~と思いました(T_T)
良かったねぇ、真木……。


そして、須藤は親を説得します。
男といてなんの得になる?とゆう問いに、
「それよりあの人の存在が大きくなった ただそれだけなんだよ」と。

ただこの親もね、憎くて言ってるわけじゃない。子供を作って、普通に幸せになって欲しいってゆう愛情ゆえなんだけどね…。


でね、最後に私が一番感動した、須藤のモノローグがあるんだけど。

「男と男 それでも 俺たちがなにも生まないなんて思わない」

これね~、BLで、よくぞここまで言い切った!って、拍手喝采したい!!(TωT)

捨てるものもたくさんある。諦めなきゃいけないこともたくさんある。
それでも愛する人と過ごす毎日こそが、かげがえのないものなんだ、って。

まさにそこなんですよね、私がBLで読みたいのは。その想いなんです。
男同士の恋愛は、不毛なんかじゃない。


全部読み終わった後は、タイトルの「only you, only」もすごく意味深いものに思えました。
「あなただけ、ただそれだけ。」

この言葉を2人が言うのに、どれだけの痛みと覚悟を伴ったか…(T_T)

*****

全体的に、胸に刺さる言葉もたくさんあったし、心に残る一冊になったのは間違いないんですが、ただひとつだけ思うのは、
須藤がもし普通に子供を作れる体質だったら、この結末じゃなかっただろうな~と。

ここも賛否両論ありそうですが…。

それでも私は、須藤の本当の幸せはこっち(真木と生きること)にあったんだよって、強く思いましたね。


なんか全然上手く書けなかったけどf^_^;、とっても良い本でした。




読んでくれてありがとう(^-^)/黄色い花
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