〜日本企業が米国式特許ビジネスで成長するために〜
★特許の誤交付はなぜ起こるのか
現在の米国の特許制度で最もガッカリするのは、米国特許庁によってそもそも特許化されるべきではなかった数多くの技術に特許が交付されていることです。特許庁では特許審査の経験を積み、技術にも精通した審査官を雇っていますが、特許の認可のプロセスには特許の誤交付につながりかねない側面がいくつかあるのです。
まず、特許庁は仕事を抱えすぎており、審査官は限られた時間の中で出願された一つ一つの特許を評価しなければなりません。そのため、特許の認定の拒否につながりうる最新の先行事例を見つけられないこともありますし、たとえ先行事例を見つけたとしても十分に精査できない可能性があるうkめいはのです。
また、訴訟は当事者間の争いとなりますが、特許庁の特許審査手続きは基本的に一方通行で行われます。審査官は出願された特許を慎重に調べる責任を負っていますが、出願者は長い年月をかけて審査官と何度もやりとりをし続け、時には先行事例よりも自分の特許を認可するよう審査官を説得することもあります。
特許の認可のプロセスにおいて、特許出願者が偏った意見を持つ当事者であることは明白です。彼らは自分の特許が認可されるよう、先行事例の特徴を自分の有利な形で述べるかもしれません。しかし特許認可のプロセスでは、一般的に、競合相手やその他の第三者が審査官に異なる視点を提供することはありません。そのため、粘り強い特許出願者が審査官を実質的に根負けさせ、本来交付されるべきでない特許を確保することが珍しくないのです。
❇︎米国の特許申請は先発明主義で、審査の時は発明者の発明が本当に自分のものだという証拠の提示が必要
★訴訟で特許の無効化を求める
訴訟においては、特許侵害で訴えられた側に、「特許庁がその技術に特許を交付したのがそもそも誤りだった」ことを証明する機会が与えられます。特許侵害訴訟の被告が、特許庁が発見したものよりもよい先行事例を見つけたり、問題となっている発明が過去に他者によって開示あるいは販売されていたことを証明したりすることも少なくありません。もしその特許が無効化されれば、特許侵害の主張を完璧に退けることができます。
しかし、訴訟には費用がかかりますし、「その特許は無効である」と認定されるまで何年もかかることがあります。その頃には、被告は何百万ドルもの訴訟費用を支払っていることでしょう。特許が無効化されたことに満足しても、そこに至るまでにかかった時間や抱えた不安、コストや本業に集中投下できなかった資源の膨大さ等により勝利の満足感は確実に色褪せるはず。また、特許侵害訴訟は、特許を無効化するための環境としてあまりふさわしいとは言えません。
大多数の特許侵害訴訟は陪審裁判で行われます。陪審は自分たちの判断を、経験豊富な特許庁の審査官の判断より優先させようとはしません。陪審は、かなり強力な先行事例を前にしても特許を発行した特許庁の決定を尊重します。さらに陪審は陪審説示の中で「特許侵害訴訟の被告は、明白かつ説得力ある証拠をもって無効を証明しなければならない」と聞かされています。これは非常に厳しい立証基準です。
特許の無効化を求める訴えは、かなり専門的なものになる可能性があります。先行事例となる文献の言語は特許が認められた国の言語と異なる場合が多く、通常は技術に疎い陪審に対し専門家証言による説明を行う必要があります。少しでも異なる見解や、別の解釈を行う余地があれば、特許権者は「先行事例は別物だ」と言ってくれる専門家を必ず見つけてきます。こうして訴えは結末の見えない、専門家同士の戦いと化してしまう可能性もあるのです。
★特許庁での再審査手続き
ただ、幸いにも特許を無効化する、別の手続きも存在します。特許侵害で訴えられた側は、特許を認めなかった特許庁の判断を再度見直すよう、特許庁に要請することができるのです。この手続きは、かつて「再審査」と呼ばれていましたが、上院による特許手続きの見直しの結果を受け、内容はほとんど変わらないものの、「当事者系再審査」と呼ばれるようになりました。さらに、最近の特許法改正により、さまざまな方法で、特許への異議申立てができるようになりました。
こうした異議申立ての手段は、特許侵害で訴えられた側にとって強力な武器となります。訴訟で主張されている特許の有効性について、裁判所でなく、特許庁に異議を唱えることができるからです。
特許庁に異議申立てをするメリットは次の通りです。
①以前に下した特許認可が誤りだったことを証明するものがあった場合、「無効」を主張できる
②特許侵害で訴えられた側がその特許に関する訴訟手続きの停止を求めることができる
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