去年の春に彼氏ができた


あの時は
もう2度と人を好きななることはないと思っていた

今でも心の中に亡くなったあの人がいる

それはずっと変わらない

あるとき、友人が言った
忘れて欲しいとは思っていないけれど前を向いてほしい
そう感じ取れる

その言葉を聞いてから
あの人が見守ってくれているような気がして
恥ずかしくないように生きていこうと思った



それから彼氏と出会った

出会いマッチングアプリだった

会う前から転職して遠くへ行くことは聞いていた
だから暇つぶし程度というか遊び半分で会った

友達と遊んだ後に少しご飯くらいにと

彼は1日空いていたようで
冗談で言った、手作りクッキー待ってる という言葉に本気で応えてくれた

初めて作ったらしいそれは、
いびつで何度も焼けているか確認した跡があった

クッキー何点?と聞いてきた彼にお店に出すなら30点かななんておどけて見せたけれど、
彼の優しさと素直さが詰まったそれは
どう考えても食べる前から100点満点のクッキーだった

それからも転職までに3回ほどごはんに行った

転職してから1ヶ月程でゴールデンウィークだった

その時にこちらへ帰ってきた彼

なんかデジャブだなあ…というのは置いといて笑

素敵なお店に連れて行ってもらい、夜景も見に行った帰りに告白してくれた。

好きです、付き合ってください。

段々と語尾が小さくなっていったのを覚えている。

そこからは月に1.2回交代でお互いの場所を行き来した

1回というのも2.3連休とって連日で会った

知らない土地でのデートは新鮮でとても楽しかった

でも毎回、遠距離だし何があってもおかしくないしこれで最後かもしれないなあ なんて思わずにはいられず、最後になってもいいように悔いが残らないよう全力だった

いつしか終わる なぜかそんな気がしていた

バイバイの時に泣きそうになるのを堪えるのに必死だった

そのくらい彼との時間が幸せだった

半年が経ち、やっとそう思わなくなってきていた。

お互いの信頼関係が築かれ、未来も考えられるようになっていた



そんな時、私は何か腑に落ちなかった



私の人生、こんなに幸せでいいんだっけ。



そう思ってしまった

それからは何故か、彼が優しすぎることに不安を覚えた

仕事も楽しくて彼と過ごすのも楽しくて順風満帆なはずだったのにおかしくなってしまった

私はもともと1人の時間が必要な性格だった

彼とは毎日電話をしていた

それを私も楽しみにしていた

だけどLINEは面倒だった

朝、おはようとくる
出勤しながら返さないとなあと思う

休憩中、LINEがくる
ゆっくりしたいのになあと思う

帰宅後、電話

本当はLINEできる時間はあるけれど
返信をする心の気力がなかった

好きだったらLINEしたいと思うでしょ?っていうのも分かる。

好きだからこそLINEしたいって思う気持ちは凄く分かるんだけれど、それは心を消耗し始めていた

仕事は楽しいけれど、ラクではない
忙しく動き回り常に頭を回転させ効率よくこなす

そんな仕事が苦ではないけれど当然疲れる

私はそんな状態で彼を考える隙間がなかった

自分の容量を全て仕事に回し、
新たに仕事をもらい、
休憩中でも仕事のことが頭にあった

疲れているからこそ癒しがほしい
そう彼は言っていた

それは共感するけれども
私の場合、それは夜の電話がそうだった
だからLINEに重きを置いていなかった

連絡していたい彼
一人の時間が必要な私

私はそれも分かっていた
分かっていたからこそ彼の気持ちを無下にしているような自分を許せなかった

きっと元々の恋人への価値観がかなり違っていた

それを私たちは上手く合わせられなくなっていった

大好きでどうしようもないのに、
それ以前に自分が自分でどうしようもなくなっていた

私は強がった

ひたすらに強がった

毎晩、休憩中にも仕事中にも涙が出るほどに
仕事への責任と期待に答えようとする重圧
彼への申し訳なさとが重なって

うつ状態だった

何度も話を聞こうとしてくれたのに
自分でなんとかするものだと思って拒絶した

もともと人に頼るのが苦手だった

もっというと、自分のことで困らせるのが嫌だった

結果、彼は私に愛想を尽かした



これでよかったんだと思う。



彼も忙しかった

寝る間を惜しんで私と電話をしてくれていたことにも感謝している

友人もいない環境下で
個人的な重いものも背負っていて
それでいて私にも気を回してくれていた

そんな中での私の彼への態度は
彼を酷く傷つけていた

それすらあの時の私は考えられないほどにいっぱいいっぱいだった

彼の素直さ、実直さが好きだった

そんな優しい人を私は壊してしまった



気づいた頃には遅かった

別れ話の時には目も合わず、
初めて聞くなんの気持ちもこもらない声だった

取り返しの付けようもなかった

自分を悔いた

彼の心の傷を思っては涙が止まらなかった

何をしていても、出勤中も仕事中も退勤中も涙を堪えるのに必死で

ほどんど何も食べられない日々が続いた

眠れるわけもなく、嗚咽が漏れる毎日

連絡も拒絶され私は何もできなかった

何もしないことが1番なのかと思ったほどだった



別れてから3ヶ月程経ち
彼の家に置いていた荷物を持ってきてくれると連絡があった

会って荷物を受け取り
いくらか会話もした

自分の思いを押し付けないようにと思いながらも
思っていることは伝えた



結局それは無駄に終わった

連絡を拒絶された

でも不思議と吹っ切れていた



別れたあとの彼の私への態度
それはもうあのころの彼とは別人で

彼は変わってしまった

私は付き合っていた時の彼が好きだった



あの頃の私が、あの頃の彼を好きだった



それだけになってしまった

私も彼も変わっていた

私が好きなのはもう彼ではない

でも確かに付き合っていた時の私は付き合っていた彼を愛していた

もう涙も出ない

9ヶ月と少しの付き合っていた期間は
たった3ヶ月で思い出となっていた

とても幸せで大好きで愛していた

付き合っていた時の私は言わなかったんだよなあ

やっぱり強がりだ





最近、再開したアプリで彼を見つけた

プロフィールに書かれている言葉は嘘だらけだ

そっとブロックしておいた





今までありがとう、とても幸せでした

あなたと過ごしてきた日々は宝物です

多くの感情を知り、得たものも多く感謝でいっぱいです

もうあなたに望むものもなにもないけれど、
どうぞ私のいない未来で幸せに過ごしてください。

さようなら