金欠なのに、また1万円の美容液を買ってしまった。
生活習慣のせいで効果はあまり期待できないだろう。
でもいいんだ、今の私にとって、1万円の美容液は治療薬として荒んだ心を潤すのに必要だから。
1万程度で立ち直れるようになるなんて私も強くなったものだ。いや、こんなの所詮1万程度の傷なんだから、1万で十分なのよ、こんなの。今回は必ず1万で寛解に持っていく、この程度に1万以上使うのは金の無駄。

顔面課金は私が生きるのに欠かせない。

スキンケア(おおよその値)
・導入美容液:17000
・化粧水:7000
・美容液(ビタミン):12000
・美容液(美白):10000
・美容液(鎮静):7000
・乳液:7000
・アイクリーム:10000
・クリーム:8000
・泥パック:5000
・フェイスパック1枚あたり:500
・洗顔フォーム:4000
・首用化粧水:5000

以上を4〜5ヶ月毎に買い換える。
だからといって綺麗になっているわけではなく、生活習慣とマスクのせいで肌荒れは治らないのだが。

化粧とか諸々
・ブラシ:7種合計20000
・ベースメイク:合計23000
・アイシャドウ:6000×3
・リップ:5000
・眉サロン:月6000

化粧はデパコスだけ上げてみた。これは人からのプレゼントも含む。

元から趣味だったわけではない。化粧を覚え始めてから徐々に増えていって、気づいたらここまできていた。
正直化粧はまあまあ研究した。ここでいつも私がやっていることを一部披露しようと思う。

まず、私の顔面に対する期待は、1.目がもう少し近づいて欲しい、2.余白をなくしたい、3.おでこを広げたいこと。パーソナルカラーはブルベ夏、骨格ウェーブ。

1.レッドブラウンのアイシャドウは目尻ではなく目頭側から置いて目を中心に寄せる
2.涙袋にあえて似合わないオレンジのアイシャドウを置いて目を下に下げる
3.かきあげておでこは見せる、眉間にハイライト置いて光を下に集める

が一部。他にも色々。

スキンケアは、説明面倒だから割愛。まあ、入浴後1時間はかけるとだけ触れておこう。

何が言いたいって、スキンケアと化粧はすごいってことだ。この子達はフラフラな私を外界にいざなってくれる。どんなに緊張した場にだって自信を持って立てるし、勝たなきゃいけない場面でも気持ちでは負けることがないのはこのおかげもあるかもしれない。
だからどれだけ寝坊しようとも、絶対にスキンケアと化粧はやって外に出る。どれだけ酔っ払って帰ってこようとも、ヘベレケになりながら、化粧は必ず落として、スキンケアをやって寝る。


別に、男にモテたいわけではない。綺麗だと言われたいわけではない。拗れたコンプレックスがあるわけでもない。 





顔面課金は私が精神衛生を保つための手段だ。





精神が荒れるたび、高価な美容品を買って徐に顔面に塗りたくる。時には涙を流しながら、あぁ、明日目が腫れてくれるなよと念じてむくみとりをしながら、ビタミンCのピリピリが直に心の傷に染みていくのを感じながら、一心不乱に顔面に塗りたくる。そして問いかけるのだ、1日あたり数百円かかるこの顔面で、何を傷つくことがあるだろうかと。

高価な美容品は一つ一つ、立ち直りの結晶なんだ。レシートは捨てない、捨てたら無かったことになるみたいだから。あの時、30,000円分メンタル回復に必要でしたっていう証拠が必要だから。





私は、自分自身にプライドを持っている。
自分が何よりも大事で、自分に誇りを持っていて、自分が好きだ。どれだけ自己中で荒々しいと言われようとも、生まれ変わったらもう一度自分に生まれ変わりたいと思っている。たとえ辛かったことを繰り返すとしても、4度の受験はもう二度とやりたくないしあんな失恋も二度とごめんだけど、それでも同じ自分に生まれ変わることを望む。トンデモな経験も、人に迷惑をかけるほどの欠点も含めて、私は私を愛している。


だけど、時にプライドに傷がつけられることがある。


私は、想定以上に自己愛が強くて、それに今気づいたなんてかなり恵まれていたようだった。
私は、私が代替可能とされることが、私じゃなくてもいいとされることが、無下に扱われることが、初めてで、かつ意外にも耐性がなかったようだ。

酒を飲みさえすればとりあえずその場はもつ、
酒をしこたま飲んで、フラフラになりながら家に帰る途中、今回の傷を査定する。こんなの1万程度の軽傷です、気休め程度に買っておきなさい、クラランスの美容液をネットで注文する。

いいや、何を傷つくことがあるだろうか、寒空の下深夜12時半、一人笑ってしまう。今まで比べ物にならないほど辛いことなんてたくさんあったじゃあないか、笑いと同時に涙が頬を伝う。



家に着いて深夜1時、私は鏡の前で崩れた顔に化粧をした。
自分を保たせてくれる顔面課金の完成形をどうしても今見たかった。
ディオールのパウダーをはたいて、真っ白な肌に頬紅をのせる。
涙袋はちょうどよく腫れてくれている、目が大きく見える。
マスカラがうまくいかない、すぐににじんでしまう。
震える唇に、シャネルの真っ赤なリップを塗った。

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ?」
白雪姫の女王様も奥底にこんな気持ちを抱えていたんだろうか。

笑わないと、笑顔は女の武器なんだから。
流れるものはそのままに、鏡の自分に微笑む。
綺麗にしたはずの顔は、既にぐしゃぐしゃだった。

誰か、こんな私を綺麗だと言ってほしい。



化粧を落とし、スキンケアをする。
一心不乱に美容液を塗りたくる。
明日目が腫れてくれるなよ、ビタミンCが傷にしみる。
こういう時こそ念入りに。
大丈夫、私は綺麗。鏡に映る自分に泣き笑いを浮かべる。
顔面課金が、今回も私を助ける。  



こんなことでやられるほど私は弱くないのよ、
私は努力ができるから、欲しいものは何でも努力で手に入れられるから。
誰かに媚びたりなんかしなくとも、私は魅力的だから。
自分に負けさえしなければ、自分の手で絶対に幸せになれるから。
哲学を捨てるな、流されるな、
余裕の笑みをたたえて高みの見物をしていよう。




そうやってこれからも、私は白鳥のように誇り高く生きていく。