[シリーズ70年代の新宿,ロック喫茶ライトハウス]の2


『デビッド・ボウイ初来日の頃』-その4



4.

初来日の頃に戻ろう。

ボウイが能舞台の役者のように次元を超える旅をしている頃、太平洋のこちら側では女のコたちがじりじりと首を長くして待ち焦がれていた。


セツ・モードセミナーの生徒でウェイトレスのバイトをしていたshinobu。それに友達のritaという女のコは、僕の顔をみれば、ねぇねぇ、いまボウイはどのへんまで来てるの?なんて聞いてきたものだ。


日1日とボウイのスター・イメージは輝きを増していく。それは太平洋を越えてくる船とは裏腹なスピード感だった。


『ジギー・スターダスト』の光はボウイの過去のアルバムまで復活させた。


『スペイス・オディティ』 『世界を売った男』 『ハンキー・ドリー』。




ボウイの過去のアルバムがまるで新譜のような扱いを受けてターンテーブルを回り続けた。


「これボウイの新譜?」そう聞いてくる女のコたちが何人いたことか。


ボウイがやっと日本に上陸した日。架空のスター、ジギー・スターダストの前には本物のスーパースターへの階段が用意されていた。[つづく]