8.
こうして先代ホムレさんと彼の愛犬ハチ公は
千閣乃公園から永遠に姿を消した。
その場所を通るたびに
私は思い出す。
ホムレさんとハチ公を引き裂く斧のように、
背後から音もなく忍び寄る
2人の保健所の職員と、
すべてを知って運命を受け入れているホムレさんと、
なにも知らずに運命にその身を曝していたハチ公を。
運命が通りすぎたあとの
誰もいない風景を泣かせていた
木枯らしの音を。
あの日、
いったい何が起こったのか。
その場所を通るたびに
私は自問自答した。
そして、
あの運命のドラマのシナリオらしきものを編んだ。
ただ自分自身を納得させるために。
[つづく。次回で完]