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三人寄れば文殊の智恵とはよく言ったもんです。一昨日のkoganeharaさんとyoctoさんのコメントは鋭い観察だ。

鳩オジサンはかっての鳩オジーサンの子か孫ではないか。この世界にも世襲の弊害がはびこりだしたのではないか。by koganehara

その鳩オジサンはIT会社の元経営者で、会社を売って今は悠々自適。鳩と遊んで暮らしてるのでは?

by yocto

実を言いますと、お二人の視点は、不肖、70rockにはまったく欠けていた。汗顔の至りです。昨日は反省反省で1日を過ごした。家の柱にはワタシの手のアトがペッタリついてます。ワタシは人間としてまだまだ甘い。飴とチョコレートの食べ過ぎだ。少し減らします。

アリエルさんのコメントによれば、可愛いお子さんは3才でこの世界に乗り出している。三輪車に乗りながら鳩ぽっぽに餌をあげている。鳩幼児だそうです。

鳩オジーサンから鳩オジサン、そして鳩幼児。ワタシのノーベル賞の夢は今や完全に崩壊した。昨日はショックで寝てました。

『最近の鳩はクロばかりでパクが少なくなった』

CIAとイスラエルの諜報機関モサドが交わしてる会話のよう
な謎めいた断定。このマル秘情報もkoganeharaさんから寄せられた。

彼は岡持ちの世界だけでなく、鳩業界に関しても並々ならぬ知識をお持ちのようだ。

情報は世界を変える。これはホントです。

koganeharaさんは「インドの怪人、タイチくん」の伝説を書いておられる。これを愛読しているお蔭でワタシは岡持ちの世界にモノスゴーク詳しくなった。

タイチくんは無類の健脚。その才能が買われて寿司屋で岡持ちのアルバイトをしていた。ところが才能があり余ってこぼれるのか、週に1度は上寿司を道端にバラマイテてた若者です。鳩の影の餌係だ。

週に1度の割合で出前に失敗していればですよ、当然クビになると思いきや、そうでない。これで立派に岡持ちのローテーションの一角を担うことができたんだそうです。巨人の投手陣にもいます。こういう人が。

そうか。週に1度の失敗はナンデモナイことなのか。それはシランカッタ。

片手に寿司桶やザルソバの桶、片手に自転車のハンドル。そんな昔であれば週に1度の失敗もわかる。しかしラッタッタの後ろにバネ仕掛けのナントカいう配達機械がついている現代社会で週に1度の失敗が許される。目からウロコが落ちるようでした。

以来、ワタシの世界にはひとつ緊張が加わった。ワタシの安定した世界にヒビが入った。出前を頼むたびにワタシは緊張する。手に汗を握るようになった。決死の思いです。.ワタシのお寿司が宙を舞ってバラバラと地に落ちる白昼夢に悩まされる。


ソバや寿司の出前でこんなにドキドキできるとは思わなかった。


あれ。ワタシ、なんの話をしてるんだっけ。また一歩もススマンカッタ。


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鳩オジサンは元IT企業の経営者でヒルズ族のひとりだった。それがホリエモン事件に出くわし、思うところあって業界を引退。会社を売り払って今は悠々自適。都会の世捨て人として公園の鳩に餌をやる日々。

うーん、芥山賞も狙えそうだ。

現実の鳩オジサンはいつも帽子をかぶってます。『可能を不可能にする男』、ゴルゴ・ナインティーンが被ってるような帽子です。ワカンナイ人はわかんなくていいです。

帽子を取ると頭蓋骨の中は精密なICの集積。集積回路が集積したアインシュタイン級の脳。

ほとんどアリエマセン。鳩オジサンが帽子を取ると造花か鳩が飛び出してきそうだ。きそう本能です。

まっ、それは置いといて。


第3の鍵が見つかった。

3.ワタシが通り掛かった場所は鳩オジサンの縄張りだった。

ショバの選び方に関しては鳩オジサンはヒジョーに鋭い。鳩オジーサンたちに比べると一日の長がある。鳩と時計は切っても切れない関係にありますからね。オーソン・ウェルズの「第三の男」を見るまでもない。

事件の全貌がやっと浮かび上がってきた。長かった。コアラの腸より長い。普通なら1回で終わる話がワタシの手にかかるとこうです。

構わず整理してみましょう。ワタシは:

1.今にも空が泣きだしそうな雨模様の日

2.鳩オジサンと同じようなママチャリを押して

3.鳩オジサンがいつも餌をやっている時計台の下を通りかかった。

もうワトソン君にだって事件の真相は溶ける、いや解ける。

雨が降り出したが最後、鳩は餌にありつけない。今のうち食い溜めしておこう。鳩オジサンはまだか。鳩オジサンはまだか。鳩の群れは時計を横目にジリジリしてた。

そこに、「ホモ・スター・・・ハムスター・・ほほ、似てる」埒もないことを考えながらワタシが通りかかる。

で、鳩オジサンと鳩だけが知っているお約束のゾーンに入る。その瞬間。

バサバサバサ。

現場に人間はワタシひとり。空は雨模様で、こんな日に公園に来るのは鳩オジサンぐらいだ。ママチャリを押して時計台の下を通り掛かったワタシを鳩オジサンと間違えたんでしょうね。

よほどの近眼なのか。それとも餌に目がくらんで我を忘れたのか。人違いの相手がワタシだからよかった
。鳩に目がない欧米人だったらどうなったか。欧米かよ、じゃすまない。フライパン行きです。

ここで教訓をひとつ。

人は金に目がくらみ 鳩は餌に目がくらむ
虎は死して皮を残し 人は死して名を残す

どうです? 並べても遜色ない。ワタシが作った対句。もちろんワタシのほうが上だ。自慢じゃないが上です。

あっ、出来映えのことじゃないですよ。位置のことです。ワタシのほうが上です。[続く]