Robert Smith's Critical Guide to Robert Smith

(サンバーン訳)
21/09/1985-The Hit


●スタイル・リーダー

「僕はその日に着たいと思った服をを着るだけなんだ。1度、同じスーツを一山買ってきたことがある。あれは当たりだったな。だって、何を着たらいいか考えなくて済むし、誰も見分けがつかないしね」

「よくレザーやブーツを身に付けてたとき。あれは実は、みんなの反応を見るためのスタンスだったんだ。もうあんなスタイルでいようなんて思わないよ。同じような服が好きな人にしかアピールしないし、趣味が違う人からはアホだと思われるだけだしね」

「僕は学校に通ってたころから化粧をしてたんだ。これも他人の反応を呼び起こすためさ。大抵は反感を買うだけだったけどね。バンドが進化するにつれて、それが激しくなっちゃってさ。それで少しトーンダウンすることにしたんだ。でもステージでは、やっぱりメーキャップしなくちゃ。だって、そうしないと、誰も僕の口がどこにあるか分からないだろ」

●初期のキュアー

「僕らの古い曲はなんであれ、今じゃ僕はほとんど聞かないな。歌っていうのは、いったん録音されてビニールに収まってしまえば、もう誰かほかの人たちのものなんだ、僕のものじゃなくてね」

「僕らは変わったと思うよ。でも、その変化ってのは論理的なものじゃないんだ。僕らはポップなレコードを作ることから出発した。たとえば"Boys Don't Cry"みたいなね。完璧な世界の中だったら、あの曲はきっとNo.1だったろうな」

「当時、僕らは成功しようなんて思っていなかった。だって、彼らはこれこれを歌ったグループだ、なんてふうに思いだされても仕方ないからね。僕らが最後にアメリカに行った時だったな。オーディエンスはティーンエイジャーの女のコばっかりでさ、みんな" Lovecats"が僕らの最初のシングルだと思ってるみたいだった。でも別にウンザリはしなかった。僕は何時も、オーディエンスにも変わっていって欲しいと思ってるんだ。同じオーディエンスと一緒に年取っていくなんて、それより最悪なことはないと思うよ」

●チャート

「最初から僕らが好きだったファンなら、ほとんどが"Lovecats"は買わなかったろうね。僕らを好きになった原点から言ってね。でも、あの曲は、僕らが作ったどの曲よりも売れちゃったんだ」

「僕らは他のバンドよりも正直に仕事をしてると思うよ。だって、何か前のと似たような曲を作ったり、同じような感じの曲を作ったりはしないからね。僕らの仕事のしかたは、とても自分本位なんだ。僕らがレコードを作るのは自分の楽しみのためなのさ」

「どんな犠牲を払っても有名になりたいなんて考えは、僕にはまったく興味ないな。僕は手に負えなくなる前に"Lovecats"の成功を葬ってしまおうと思って、ほんとに苦労したよ。あまりに大きな成功は、僕らが前にやってきこたとや、将来やろうとしてることを、むしろ覆い隠してしまうだろうからね」

「バンドとしては、キュアーはロックンロールの神話の延命に手を貸す気はないよ。すべてがお伽話みたいなもんだからね。バンドでいるってことは、とても面白いことなんだ。正しい理由でやってさえいればね。もし自分が"Top Ten"なんかにいたら、僕はインタビューなんかやめて、しばらく消えちまうね。僕は自分たちがビッグ・グループなんかになるのは許さない。そんなことになったら、僕はすぐにバンドを壊しちゃうと思うよ」




●Siouxsie & The Banshees

「バンシーズの頃を思いだすと複雑な感じがするね。僕はあれを楽しんでたんだ。スージーとギターを弾くことをね。でも、終わりの方は少しゴタゴタしちゃって」

「少しの間だったけど、僕があれに参加した理由。それはキュアーをやってて、シンガーでいるってことに飽き飽きしてたからさ。ほかに理由なんてないよ。でも結局は、あれもフラストレーションの種になっちゃった。みんながしてることをコントロールできなくなってね」

「もともと僕はハズレてるところがある人間だからね。2つのバンドの間をクロスオーバーするのは難しいことじゃなかった。でも、僕は彼らにとってはいいギタリストじゃなかっただろうな。僕が関わったのは、ほとんどがSteve Severin(バンシーズのベーシスト)との友情からだったんだ。もちろん、僕は常に彼らのファンだったってこともあるけどね」

●The Glove

「僕が最初にバンシーズに参加したとき、スティーヴと僕はレコードを作ることにしたんだ。"芸術的な実験"としてね」

「このレコード作りじゃ、僕たちはとても素晴らしい時間を過ごしたけど、完全に消耗してしまってね。10才ぐらい年取ったような感じだった。僕が思うに、それは互いに最悪のものを持ち寄ったせいだったろうな。なんていうか、これ以上ないような過激なアイデアをね」

「僕たちはスタジオに12週間いたんだけど、実際にレコーディングにかかった時間は5日ぐらいだった。残りの時間はいつ終わるとも分からないパーティーに費やしたんだ。みんなを次々に呼んでね」

「まるで駅みたいだったよ。ある一団が駅から出てきて、どこかへ行ってしまうと、また次の一団がやってくる。そんな感じだった。その間に、はいピアノ、次はドラムっていうふうにレコーディングしてったんだ」

「スティーヴと過ごした時間が終わったあと、僕は肉体的に疲れて自分の歯さえ磨けないみたいになってね。すべてが非現実的な感じだった。夢みたいなね。すぐに繰り返してみたいとは思わない、そんな感じだった」

「ほとんどの時間、僕は本物のアホになってるんだ。ほかの人がどう考えるか、どれがいいことで、どれが悪いことかなんてことは、僕にはどうでもいいんだ」




●The Cure

「僕たちの不動のラインナップで、唯一、"新しい"メンバーがBorisなんだ。彼はThompson Twinsにいて、3年も悩んでたんだけど、今じゃキュアーで自由を謳歌してるよ。このバンドで最高なことは、みんながホントに面白いヤツだってことさ。いつも鋭いユーモアが味わえるんだ。真面目なのか、そうじゃないのか、誰にも区別がつかないみたいなね」

「僕はしょっちゅう遅刻するんで、ほかのメンバーはいらいらするみたいでね。そのたびに色々と言われるんだ。みんなを待たせないように、僕だって頑張ってるつもりなんだけどさ。

僕らはバンドを離れると、あまり一緒につるんだりしないんだ。多分、みんながお互いに1平方マイル以内のところに住んでいて、同じような空気を吸ってるからだろうね」

「フェスティバルなんかで海外に出るときは、僕らは最悪のときでも英国らしい文化と礼儀作法は守ろうと努力してるんだ。ホテルの窓から家具を投げ落とすぐらいなら、僕らだったら仲間のほうを放り出すね。

一緒にプレイするほかのバンドの連中をさ、ボコボコにしてやったことも数えきれないくらいさ。それは僕の楽しみのひとつなんだ。特に、ホテルの玄関で互いに不機嫌な顔で睨み合ったときなんかね」

「どんなバンドだって、起こりうる最悪なこと。それはメンバーの誰であれ、本当に考えていることを言わないってことさ。僕らの場合は、皆とても密接だからね。誰かがなにかの理由で抑えてることがあるかどうかは、皆すぐに分かるんだ。人から何か隠してることを聞き出そうとするのは、ほんとウンザリすることだからね。殴り合いをして床にぶっ倒してでも聞き出したいことがあれば別だけどさ!」

「僕たちがすることは何であれ、6カ月を1つのブロックにして計画を立てるんだ。そうでもしなきゃ、考えるだけで恐ろしくなるだろ。もし僕が明日にはもう飽き飽きしてたとしても、この義務から逃げられるのもそう遠くない、って思えるからね。少なくともさ」

「僕たちは今でもまだ、ますます強力なバンドになろうとしてる。2年前は考えもしなかったけど、僕たちはこれから、毎年ベストのレコードを出していける。そんな風に感じてるんだ」(完)