Songs in the Key of Life (Sunburn訳)
05/09/1998-NME or New Musical Express

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●大騒ぎの夜のためのレコード:「Raspberry Beret/Hindu Love Gods」

「僕が"Raspberry Beret" を初めて聞いたのは80年代。友達の家だった。Princeがこれをリリースした頃さ。みんなベッドの上で飛んだり跳ねたり、叫んだり、大騒ぎだった。それくらい
気に入ったってことさ」

「その後、1990年ごろかな。このバージョンが出たんだ。Warren Zevonというシンガーが歌っていてバックがR.E.M.でね。この曲を再び耳にしたとき、僕の気持ちは前とまったく同じだった」

「この"Hindu Love Gods"のバージョンはオリジナルよりいいと思うね。Warren Zevonの声は本当にチャーミングだし、R.E.M.の演奏もこれぞロックって感じだし。出かける前にこれを大音量で聞けばきっと最高の時間が過ごせる。僕が保証するよ」

●バンドを作りたいという気持ちにさせる曲:「River/Joni Mitchell」

「僕が曲を書き始めたのは1990年ごろだった。それ以前は、僕はただ人に負けまいとしてなにかと大騒ぎばかりしてた」

「これは彼女のアルバム"Blue"の中の曲なんだ。いま振り返ってみると、これは彼女のアルバムの中でも特に好きだってわけじゃない。でも当時はお気に入りだった。アルバム全体はすごくシンプルで、"River"もピアノとボーカルだけの曲でね」

「僕は過剰なくらい80年代や90年代の音楽に取り巻かれてたんだけど、 そんな僕を武装解除してしまうぐらいベーシックなんだ。詩はタワゴトなんかひとつもない。たった一語多いか少ないだけで駄目になってしまう曲を彼女は完璧に仕上げてるんだ」

●ツアーバスを空っぽにすること請け合いの曲:「Live/Mike Reid」

「音楽をかけることに関して、Travisのメンバーがツアーバスで言い争うなんてことは滅多に起こらないよ。その手の事なら、僕たちの好みは似てるからね」

「ただし、ギター・テクニシャンのニックは、よくサービス・ステーションで最悪の音楽テープを買ってくるんだ。最近買ったテープのひとつが、Mike Reidの独演テープだった。"Frank Butcher in EastEnders"をやってるテープでさ。今まで聞いた中でも最悪のもんだったよ。汚らしくて、性差別的で、もう全部がそんな感じなんだ。僕たちはみんなバスの後部座席にすわって、聞けば聞くほどひどくなっていくそのテープを聞きながら縮みあがってたよ」

●1999年のニュー・イヤーズ・イブ(大晦日)の夜。さて、hi-fiで何を聴きたい?:「Bridge Over Troubled Water/Simon and Garfunkel」

「大晦日の夜に何をするか、僕はまだ決めていないんだ。だから、この質問に答えるのはかなり難しいね」

「でも、"Bridge Over Troubled Water"はある種の通過儀礼の歌だよね。だから、年を送る夜には相応しい曲なんじゃないかな。これは静かな曲だろ?僕はとても静かな人間だしね。それに、大晦日には僕のまわりの全てが消えてゆく感じがするよ」

「実際、2000年の1月1日の6時頃、みんな本当にこの曲をかけてみたらどうかな。みんな酔いつぶれて、お祭り騒ぎが終わったあとの虚しさを感じ始める。そしてそのあと、自分たちがどんなに互いを愛し合っているか考える。この歌にはそんな感じがあるんだからね」

●自分のお葬式の時にはどんな曲をかけたい?:「The Circle Game/Joni Mitchell」

「僕は去年、あるジャーナリストの葬式に出席したんだ。故人は、ナンシー・シナトラが歌ってた"These Boots Are Made for Walkin'" のレコードを持ってた。彼の柩は火葬場の窯のなかへと入っていった」

「本当に超現実的な光景だったよ。そこには彼の貧しい家族がいて、彼らは明らかにそれを望んでいなかった。後ろで、例のレコードが大音量で鳴ってたんだ。僕たちはあまりうるさいもんだから、火葬場を出ていかなきゃならなかった。それは本当に可笑しい光景だったけど、ひどく困惑させるものでもあった」

「僕は自分の家族にあんなことをしようとは思わないね。 僕だったら、みんなを泣かせるような何かをしようとするだろうな。自分の葬式を想像してみなよ。誰だって、できるだけ沢山の人が泣くのを見たいだろ?」

「後で彼らが笑っても僕は気にしないさ。でも葬儀の場にいるときは、みんなに少しは涙を流してほしいよ。このジョニ・ミッチェルの曲は、季節の変わり目に関する神秘的でカッコいい曲で、薄いベールをまとった生と死のアナロジーでもある。だから、この曲がいいんじゃないかな」(完)