The Backpages Interview:Paddy McAloon
June/2001-Rocks Backpages


●このレコードには、Jimmy Webbを思い起こさせる瞬間があると思うよ。

「君はまったく正しいよ。Jimmy Nailに提供した曲を書いてたとき、僕は毎朝"ジミー・ウェッブだったらどうするだろう?"なんて考えてた。すると、力強い物語とか、正直な表現の世界に戻ることができたんだ。たまに、"この曲を特定の歌手、例えばウィリー・ネルソンなんかに提供したらどうなるだろう?"って考えることもあったよ」

●Jimmyのことを思い出して感傷に浸れるなんて、本当に素晴らしいことだよ。

「人生の早い段階でミリオン・ヒットを作ったのは別として、ジミーには様々な問題が降りかかった。例えば、彼の歌の題材がヒップじゃないから、彼自身もヒップな人間じゃないって思う人が沢山いたんだ。それが彼を悩ませていた。ほら、"Everybody thinks that just because I play Vegas..."とかさ。ヒップスターっていうのは、クールなことを歌って、それが人々に認められなければならない。僕はいつでも、ジミーはクールだと思ってた。Burt Bacharachみたいにね。そう、彼がどんな政治的信条をもっていようが、派手な黄色の上着を何枚持っていようが、そんなことは関係ないんだよ」

●ジミーに会ったことはあるの?

「彼と仕事をしたことがある。アイルランドまで行ったよ。"An Eye on the Music"っていうテレビ番組に出演したんだ。まあ、ソングライターがオーケストラをバックに持ち歌を演奏するとか、そんな感じの番組さ。依頼がきたとき、"うちのショーには、今度ジミー・ウェッブも出演するよ"って言われた。だから僕は冗談っぽく、"えっ?それって、僕も同じ日に出演できるかな?"なんて返したんだけど、それが結局"『The Highway man』をジミーとデュエットするかい?"ってことになったんだ。僕は他の仕事を放り出して、もちろん行くって答えたよ」

「というわけで、僕は彼に会って、一緒に"The Highway man"を演奏した。僕は凄くあがってね。ちょっと歌詞を変えて歌っちゃったよ。ジミーの歌は素晴らしかった。彼の曲は、歌詞の分量がちょうどいいんだよね。会話みたいで自然だし。ジミーは"By the Time I Get to Phoenix"も歌ったんだけど、最後の部分でメロディーが変わってた。"どうして変えたんですか?"って尋ねたら、"あのメロディは気に入ってないんだ"って言ってた。僕が"でも、Glen Campbellのレコードでは・・"って言いかけたら、"あれはグレンが変えたんだ。私じゃないよ"って返されちゃったよ」


●前作「Andromeda Heights」の話を聞いてもいいかい?あの作品についてはどう思ってる?

「気に入ってるよ。あの作品からは活気とか興奮とか、そんな類の感情を排除したかったんだ。全編、まるで生のバンドが演奏しているように仕上がっているけど、実際はそうじゃないんだよ。そのあたり、色々計算しながら作ったのさ。とにかく、あの作品の出来には満足しているよ。だからこそ、十分に宣伝してもらえなくて残念だったね。"Swans"とか"Andromeda Heights"とか、いい曲がたくさん入っているのにね」

●「Life's a Miracle」もいい曲だよね。凄く感動してしまったよ。

「それは嬉しいね。僕はよく、あの曲を他の歌手が歌ったらどんな風に仕上がるだろう、って想像するんだよ。例えば、Ray Charlesとかさ。彼にはセンチメンタルな曲が凄く似合うからね。それから・・、なんか僕はバカみたいだけど・・、"Wonderful World"を歌うLouis Armstrong なんかも想像するよ。"Life's a Miracle"という言葉は陳腐な感じがするけれどね、ポップ・ミュージックにはそういう言葉の方が似合うと思ってる。メロディーによって言葉が活気づけられるからね」

●色々と進行中のプロジェクトがあるみたいだけど?

「未完の脚本みたいなものが溜まってしまってる。まだ引き出しの中ってところかな。でも、詳細を誰かに話せば資金が調達できるというなら、僕はそうするつもりだよ」

「あまり元気がないときは、簡単なことばかり選んでしまいがちになる。本当はコマーシャルなものを見極めるべきなんだろうけど、そんなものは実際に店頭に出てみないと分からないからね。僕はもう、売れるものもあるし売れないものもあるって結論に達してしまったよ。あまり考えても仕方がないような気がするんだ。なぜって、コマーシャルな成果を求めて、誰かに自分の仕事を任せたとしても、仕上がりに納得できなかったら、どうせ後から自分の思い通りにやりたくなってしまうんだからね」

「10年前は予想もしなかったことなんだけど、僕自身、過去の自分の作品をカバーしたいと思うことがあるんだ。リラックスして出来るだろうし、それに割と簡単なことだからね。これは、僕自身の仕事になるという意味でも良いことだと思うよ。大体、他人が勝手に歌詞を付け足したりする心配もないしね。つまり、"I Never Play Basketball Now"をシェールに歌ってもらう必要なんてないわけさ!」

●気になる新人ソングライターはいるかい?

「僕はもう最近の音楽に注意を払わなくなってしまったよ。ずっと新しいものに目を向けていれば、些細な変化に気づくこともできるんだろうけど。自分のことをやるので精一杯だよ。僕は確実性を求めるタイプだから、今後は20世紀のクラシック音楽に目を向けていくことになるだろう。そこにはまだ学ぶべきものがあるような気がするんだ。そういえば、Tony ViscontiはRufus Wainwrightが凄くいいって言ってたな」