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サミー・ヘイガー「彼の歌はいつも本物っぽい感じがした。普通は年の功なんだけど。煙草すって酒飲んで喉を潰せば若くてもああいう声になる。その代わり25才にもなれば歌えなくなる。彼は若い頃からそういう声をしていて俺はまいっちゃったんだ。これこそ本物だよってね」 

バードン「サングラスに黒っぽいスーツの出で立ちで、まるで秘密スパイみたいだった」

マイクとの独占契約だった。ゴー・ゴーに4 夜連続で出て、毎週金曜の夜にはダウンビートに出て、そして土曜の夜はまたゴー・ゴーに早番で出た。初めて出たのはダウンビートだった。3 階席まで完売だった。

ジョン「最高だった。押すな押すなの騒ぎだった。熱っぽい歓声。とっても楽しかったけれど、所詮ローカルなものだった。レコードを出すとか全国的なレベルでは考えていなかった。でもマイクは違った。きちんとしなきゃ駄目だとか言って、マネージメント契約書を突きつけられた訳だ。あっけにとられてね。ロンドンで仕事の口があると言うんでサインしてしまった」

バードン「田舎町から脱出するには音楽の道が一番早道だって気付いたんだ。マイクが悪い奴だってことは皆分かってたさ。でも彼こそ僕等にとって都会行きの切符だったんだ」

サミー・ヘイガー朝日のない町を聞いて鳥肌がたった。俺はフォンタナという鉄鋼の町で育った。イギリスで言えば多分ニューキャッスルやバーミンガムみたいな所。典型的な鉄鋼町だ。汚れていて空気が煤臭くて、大人になったら毎晩真っ黒になって帰ってくる親父みたいに黒くなって働くのか、嫌だな、ここから出なきゃって思うんだ。だからあの歌はジーンと来たんだ。(続く)