「あのアルバムには俺たちが今までやってきた曲よりハードなやつもあればポップなやつもある。メロウなサーフ・ソングみたいな曲もね。「BOSSANOVA」にはそんな曲を自由に散りばめてあるんだ。あれはTop 40にはならないだろ、きっと!そんな類の曲とは違うんだ。あれが完璧にオリジナルだって言ってるんじゃないよ。でも、とにかく違うものなんだ」

そう、彼は正しい。このバンドが「BOSSANOVA」以前にやった曲はどれも、「Ana」の物思いに沈んだような雰囲気はなかったし、 「Havalina」の夢のような感じもなかった(たぶん、「La La Love You」を除けば)。

そして・・・これらは確かにポップ・チャート入りを目指したものではない。

だが一方では、「DOOLITTLE」が持っていた個性の大半、アンダーグラウンドから完璧な信頼を寄せられていたあの個性、痛ましい悲鳴のようなボーカルや熱狂的なリズムは「BOSSANOVA」では捨て去られている。

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「俺たちは気まぐれな感じのする曲とか、スピード感のあるナンバーを外したんだ」チャールズは認める。

「俺のボーカルは叫ぶような感じじゃない。でもそれは俺の中ではオーケーなんだ。そうしたかったからさ。叫び声には飽き飽きしてたんだ。もし俺に本物のシャウトができたら、あのHenri Rollinsみたいにできるんなら、きっと俺はもっと叫んでたと思うけどね」

「今の俺ならかなりうまくシャウトできる」彼は自己弁護するように、コミックな感じで付け加えた。「2年前よりは、ずっとうまくね」 確かに。彼はそれを「BOSSANOVA」で証明してみせた。あの中の信じがたい「Rock Music」で。

「俺はライブ・ショーのテープを聞いたときのことが忘れられなくてね。そこじゃあ俺はもっとシャウトしてた。それは何か、すごく悩ましい苛立たしい感じだった。けたたましい自分の声を一晩中聞いてさ。で、俺は思った。もうちょっと歌ってみようってね。努力することにしたんだ。結局のところ、俺たちはバンドだし、俺はシンガーなんだからね」

この最後の言葉が引き金になって、チャールズの中に怒りの反応が噴き出した。「あのメロディ・メーカーの野郎。糞レビューを読んだろ?誰かさんは歌のレッスンに行ってたみたいだね、だとさ」怒れる彼が引き合いに出しているのは、「BOSSANOVA」の最初のシングル「Velouria」のレビューのことだ。

「まったく糞いまいましい。"Aをあげる"、だとよ。俺がそのシンガーさ。誰があの歌を歌ってると思ってるんだ。まるで俺が今まで歌っていなかったみたいなことを書きやがって。前のレコードじゃ俺は散文を読んでるみたいだったけど、今はシンガーになってるんだとさ。あーあ、どうもすいませんねぇ、歌っちゃって」

彼はスティーブ・マーチンみたいな感じでこう締めくくった。「僕をスタンダードにさせたくないんだってさ」