The Pixies



ブラック・フランシスと呼んでもいいしチャールズ・トンプソンと呼んで もいい。お好みならビッグ・キャディ・ダディと呼ぶのも自由だ。彼はザ・ピク シーズのシンガーで、バンドの曲も主に彼が書いている。

彼らのニュー・アルバム「BOSSANOVA」は、「SURFER ROSA」や「DOOLITTLE」が やり残したところを取り上げたものだ。これについてチャールズは言う。自分が 書いたミステリアスで謎めいた詩は自動記述によるもので、特に意味はない、と 。

だが・・・サーフィンをモチーフにしたこれらの詩が一山のメキシコ豆以上の何 かであることは間違いない。

彼を釣り上げるための罠は仕掛けてあった。この牧歌的なまわりの風景だ。牧歌的とは言っても、ロンドンの下町の中心で感じられる限りの、という条件は付く が。

ブラック・フランシスと僕はサセックス・ガーデンズと呼ばれている小さな公園 のベンチに座っている。周りには、昼食を食べている会社の秘書の女のコたち、 お腹をすかせた鳩、それに道に迷った観光客たちがいる。かわいそうだが親切に 道を教えてあげられる時間は僕にはない。ほかに大仕事があるからだ。僕にはブ ラック・フランシスの嘘の尻尾を捕まえるという大事な使命がある。

これまでの4年間。そう、ザ・ピクシーズが活動を始めてからというもの。この バンドのリーダー兼シンガーで、主たるソング・ライターでもあるブラック・フ ランシスは、曖昧でしばしば解読不能とも言われる自分の詩についてこう主張し てきた。なんであれ、本当にそこには意味はないと。

「これは自動記述なんだよ」と彼は言う。「押韻の決まりに合うように言葉を一 緒くたに投げこんだだけさ。言葉がまとまると何かいい感じになってるだろ」

またそう言って逃げようってのかい。僕は言う。

ピクシーズがアメリカのインディー・シーンから出てきた最近5年間で最も重要 なバンドのひとつであることは間違いない。そのバンドが、語るべき重要なこと など何もないなんて一体ありえるのだろうか?