「霧の5次元 / Fifth Dimension」 (1966)



66年にジーンが脱退し、4人編成での初のアルバムとなった本作。主力の脱退もなんのその、メインソングライターに昇格したマッギンとクロスビーは、見事バンドの新境地を切り開くことに成功している。
宇宙信仰をのぞかせる「5D」、「Mr. Spaceman」は"スペース・ロック"、12弦ギターが幽玄な音を奏でる「Eight Miles High」は"ラーガ・ロック"と呼ばれ、ともにサイケデリックシーンの土台を築いた。
初期のバーズ作品の中でも、最もオリジナリティに溢れる本作は、ファンや評論家たちの評価も高い一枚である。



「昨日より若く / Younger Than Yesterday」 (1967)



前作のラーガ/サイケ路線をさらに追求した作品。マッギン、クロスビーに続いて、クリス・ヒルマンがメイン・ソングライターに昇格したため、収録楽曲はかなり充実している。
もっとも頑張っているのはそのヒルマンで、2曲のサイケ・ナンバーを書いているほか、「Time Between」など、完成度の高いカントリー曲も提供している。
クロスビーも前作に増して才能を伸ばしているが、マッギンとの折り合いがつかなかったようで、「It Happens Each Day」のようなクロスビーらしいナンバーは残念ながらアルバムに収録されなかった(再発盤にはボーナスとして収録)。



「名うてのバード兄弟 / The Notorious Byrd Brothers」 (1968)



バンドの主導権がもっとも激化していたころの一枚。The Beatles「Sgt. Pepper's」の影響をうけ、本作では、バーズもトータル・アルバムの製作を目指している。
何よりもまず、Gary Usherの魔術のようなスタジオワークだ。ポップさに欠ける楽曲が多いなか、アルバムをここまで魅力的な作品にまとめあげた彼の功績は評価に値する。
収録内容は、Carol Kingの「Goin' Back」のカバーなど。それまでのバーズのキャリアに照らしてみると、かなり大胆な選曲だ。これには、ファンだけでなく、メンバーのクロスビーすら抵抗を示していた。結局それが元となって、本作の録音中、クロスビーはマッギンによってクビを切られてしまう。ボーナストラックでは、クビになった男のやる気ゼロ・コーラスが聴ける(笑)



「ロデオの恋人 / Sweetheart Of The Rodeo」 (1968)



グラム・パーソンズを迎え、再出発を果たしたバーズは、カントリー方面へ本格的に傾倒していく。
本策に収録された楽曲のほとんどはカントリーのカバー。そして、ハイライトはグラムの代表曲「Hickory Wind」だ。
後にカントリー・バンド、フライング・ブリトウ・ブラザーズを結成し活躍するグラムとヒルマンは、この作品でも素晴らしいプレイを披露している。一方、リーダーのマッギンは裏方に甘んじた印象が強いが、彼もまた、2曲のディラン作品で十分力を発揮しているほか、各曲にバーズ色を加えようと奮闘している。
各メンバーの努力の甲斐あって、この作品は、発売当初こそ振るわなかったものの、今では世紀の名盤として君臨している。



「バーズ博士とハイド氏 / Dr. Byrds & Mr. Hyde」 (1969)



「ロデオの恋人」で好感触をつかんだグラムとヒルマンは、その後あっさりとバーズを脱退してしまう。マッギンはついに、唯一のオリジナル・メンバーとなってしまった。
この時期を境に、バーズは、商業的に低空飛行を続ける地味な時代へ突入していく。だが、これ以降のバーズには、数々のベテラン・ミュージシャンが参加することになる。そして彼らは、しっかりと名演を残しているのだ。
本作より新たに加入したクラレンス・ホワイトとジーン・パーソンズは、バーズに新たな代表曲を与えてくれた。それが「Nashville West」。カントリーの味が効いた、2分程度のインスト曲だが、これこそがベテランの味というものだ。滑らかで、楽しい演奏。
ここに現れているのは、新生バーズの意地と気合い、そして音楽愛だ。



「タイトルの無いアルバム / Untitled」 (1970)



いよいよ70年代に突入。
CSNをはじめ、元メンバー達は輝かしい成功を手にしていたが、マッギン率いるバーズは商業的な問題に直面していた。
しかしマッギンはここで再度発奮。ベーシストに大ベテラン、スキップ・バッティンを加え、年間200本のライブに打って出る。
ファンを拡大し、演奏力を磨き上げ、満を持して製作されたのがこの「タイトルのないアルバム」。力強いライブ音源と、バッティンをメインに据えた新曲で構成されている。
努力の甲斐あって、バンドは再びウエスト・コーストの主役へとカム・バックした。唯一のシングル「Chestnut Mare」は、英国でスマッシュ・ヒット。バーズがまだまだチャートにアプローチできるバンドであることを証明した