一条 薫のブログ

一条 薫のブログ

ブログの説明を入力します。

Amebaでブログを始めよう!

             心のグラス


とある、小さな場末のバーでカップルが言い争っていた


たわいのない喧嘩のように思えたが、彼氏は帰ってしまった


残された彼女はゆっくりとバーボンを飲み干した


やるせない表情を浮かべて頬に手を当てる


「何かお飲みになりますか?」バーテンが声をかける


「あっ、それでは、ソルティドッグを」彼女は驚いて注文した


「かしこまりました」バーテンは、すばやくグラスを取り出した


「よくお二人でお見えになりますが、今日はお一人ですか?」


バーテンの気遣いに彼女は、「彼と言い争いになってしまって、」


気まずそうに言う彼女にバーテンは微笑んで


「なぁに、若い人は、ちよっとした事で言い争いになるものです」


クルクルパーマのこのバーテン、ちよっとコロンボに似ている


「そうなのでしょうか?」彼女は、不安そうに答える


「もちろん、うちのかみさんと何度喧嘩をしたのか、覚えちゃいません」


ゆっくりと出されたソルティドックを思わず、飲み干す彼女、


「お客さんは心の中にグラスがあると言うことをごぞんじですか?」


「えっ、どんなグラスなんですか?」彼女の目が輝く


「あっ、これは、かみさんの友達の話なので、詳しくは知りませんが、


人の心にグラスがあって、悲しみ、涙、絶望、などのエッセンスを


入れると死にたくなるらしいです」


「えっ、怖いですね」彼女の顔が青ざめる、


「でも、そのグラスに希望と未来、幸福、などのエッセンスを入れたら、


どうでしょう、心のグラスに七色の虹が見えると言われています」


バーテンは話を続ける、


「お客さんに一杯、カクテルを奢らせてください、あっ、でも、これは、かみさん


には、内緒と言うことで、何しろかみさんが嫉妬深かくて、」


バーテンが作ったカクテルは、炭酸が小雨のように降っていたが、止むと


青空のような青色に、その中に七色の虹が確かに見えた