『安井かずみの時代』のついでに(?)読んでみた。かつて(というより大昔)何度か行ったことがあるお店の創設者の物語だった。ここに登場するきら星のような人たちより、そのお店が醸しだす雰囲気ををクールに見ていた人のインタビューが興味深かった。というより、むしろそちらの人に惹きつけられたのが賞直なところだった。
ハンバーガーインにしろニコラスにしろあの時代でしか輝けなかったように思う。まだ暗い街だった六本木を思い出したりはしたが、なにも行き場のない人たちがいたのは東京(や横浜、横須賀)だけではないはずだ。
そこにいなかった彼ら、彼女たちはどこで何をしていたんだろう、と反問したくなる。川添夫妻の生き方は、確かに今風にいえばカッコいいのかもしれないが、それもシニカルにいえばそもそもの出自の違いだったといえばそれまでだ。川添氏が高松宮の秘書になったのも昔風にいえば閨閥のひとつだろうし、川添夫人もとても庶民の出自ではない。もちろんそれは別に悪いことではない。誰しも自分人生の半分は自分自身から疎外されているものだから。
川添氏はその全ての財をかけて文化を求め、その一つとしてこの店を作った。文化は確かにパトロンを必要とする。けれど彼らを置いて走って行くのもまた文化だと思う。今の六本木・飯倉は川添夫妻が生きていた頃とはまるで違う街になっている。
この本にも同時代に開店したお店としてでてくるニコラスもさまがわりした。(そういえばニコラスの舞台裏を描いたノンフィクションもあったけ)キャンティは(多分)今も、昔のままにいるのかもしれない。そこに私たちが見るものはなんだろうか。誇り…伝統…歴史に裏付けられたなにかなのだろうか。明々と一角を照らしたロウソクは見事に燃え尽きて、新しいロウソクになっているのだろうか。でもそれが映し出すものは、今は昔の物語なのだろうか、いつでも今が生きているものなのだろうか…。
ところで同名の全国チェーン店(1号店になっているところも何度か行っているのですが)と関係があるのかしら。キャンティ物語 (幻冬舎文庫)/幻冬舎

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