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暗い森のどこかから、獣の息づかいが聞こえてくる。冷たい空気を裂きながら近づいてくるそれは、獰猛な気配をはらんでいる。

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やがて姿をさらしたその獣は低く唸った。空に重く垂れ込める暗雲の、その向こうに隠れた月を見上げるようにして。

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雲が晴れる。にわかに空気がざわめき出す。満ち行く赤い月の光を背に受けながら、その獣は雄々しく吠えた。

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空気が震え、戦慄する。凍て付く空気が雲を払う。満ちた月は燦然と輝き、獣の姿をいよいよ神々しく照らし出した。