おっちゃんの手ほどき・4
皆が帰った後の、ガランとした事務所。
5分したら、丁度5時になるので、そろそろ私も家に帰ろうかな、と思っていたら、いきなり戸が開いて、
「奥さん、こんばんは~」
と誰かが挨拶した。
振り向くと、魚屋のおっちゃん。
「あれぇ?どぅしたん?今日は月曜日やのに…」
そう、おっちゃんの来る日は、毎週火曜日と金曜日に決まっている。
「それが明日、臨時休業なんで、今日寄ってみたんよ。朝も9時過ぎに来たけど、おらんかったな?」
「ああ~、今日はおっちゃんが来る日じゃないけん、散歩に行っとったんよ」
お魚は、もう、太刀魚とハギと牡蠣と蛸しか残ってなかった。
牡蠣は先日食べたばかりやから、太刀魚を買うことにした。
それと、蛸好きの夫に買いたいと思いつつ、高いので今まで買ったことがなかったんだけど、1200円にしてくれると言うので、奮発してこれも買うことにした。
「ゆで方は、お塩でぬめりを取って、お水の中にちょっとお酢をたらしてするんやろう?」
と聞いた。
ズッとズッと前に1度だけ、調理したことがあった。
その時、母に教えてもらったから…。
ところが意外や、おっちゃんの手ほどきは、そうじゃなかった。
「違わい、塩じゃないぜ。ぬめりは片栗粉で取るんやがな」
「へっ?片栗粉?」
「そうよ、片栗粉ぜ。塩はいかんぜ。それでぬめりを取ったら、水で洗って、頭も足もバラバラにするんよ。丸のままやと、時間が掛かるけんな。そして1合くらいの酒で湯がくんよ。少ないけん、鍋ごとあおりながら、湯がくんぜ」
「へぇ~、そうなん?分かった!」
おっちゃんが帰った後、忘れんうちに早速取り掛かる。
水気が落ちたらいかんので、夫にお風呂場まで足を運ばせて、ポーズを取ってもらう。
いつもなら、面倒くさそうにブツブツ言う夫だが、急遽、好物の蛸料理が食べられるとあって、文句も言わずと、お風呂場で蛸をぶら下げる。
気に入らないので3回取り直したけど、注文どおりに、「はい!ポーズ!」
(今、これを書きながら、1人で何回も吹き出しておりますわ)
それから、片栗粉でしごきながら、全身のぬめりを取り、水で洗うとバラして、お酒で湯がいた。
おっちゃんはお酒1合くらいと言ったけど、少ない感じがしたので、料理酒を300mlほどお鍋に入れて、まんべんに火が通るように、中でクルクルまわしながら湯がいた。
出来上がりの先っちょを味見したら、お酒以外何にも調味してないのに、絶妙な塩加減!!
急だったので、キュウリしかなくて、盛り付けはちょっと地味だけど…。
キュウリは待ちきれない夫が自分で切ったので、ちょっと不揃いであります。
これも、付け合せの野菜は、キャベツのみで我慢してもらった。
何しろ、『おいしい物は、皆で分け合って!』主義なので、当然近くの2男宅にも、出来上がりの熱々を持って行った。
こんな時は、近所だとホントに便利だわぁ~。
夫、大満足!(≡^∇^≡)
私も、又1つ、覚えられて、ハイテンション。
こうやって書いておくと、忘れても大丈夫だしね。
蛸、本当においしかったです。
あっ!そうか、水っぽくなかったのは、お酒でゆがいたからか ヾ(@^▽^@)ノ