そういえば、あの人は何処に行ったんだろう
最近姿を見ていない
いつの間にかあの人の時間を知らない誰かが埋めていて
あの人がいるはずだった向かいには誰もいない
価値ある人が誰もいない
どこか憧れの人に似てた
最初はただそれだけ
でもいつからかあの人を探すようになって
目で追いかけて
見詰めて
かるく視線のストーカーまがい
あの人を見てると、憧れの人が近くにいる気がした
これはきっと一種の恋
激痛に溢れた時間の中で、自分の心を支える為に
逃避をする為に
憧れの人に力をもらう錯覚をする為に
なんだか似てた
あの人を利用した
恋してるふりをして
憧れの人を重ねてた
こんな卑怯を、あの人は知らない
俺以外の誰も知らない
俺の小さな秘密
ああ、でも
あの人は何処にもいない
何も知らないあの人だから、きっとこれからも何もわからない
でも、やっぱりあの恋は紛い物だから
辛くないの
悲しくないの
あの人は代わりだったから
激痛にまみれた時間を生きる為に利用していただけだから
もうその激痛から抜け出すと決めた今、
あの人はもう俺の中でいらなくなった
だからさよなら
勝手にさよなら
勝手に恋した
偽物のあの人
俺はまた違う場所に行きます
だからまた
違う人を探します
心の拠り所になる偽物を
そんなおままごとを何度でも繰り返す
それが愛されることを犠牲にした俺の道
最後にありがとう
あなたがいたから、確かに頑張れたんだ
.柳