アイドルマスター×エクシリア
?「パパッ…パパッ…」
空が抜けたかの様な大雨の中、少女の声が聞こえてくる。時間は深夜、まどろみの中の二人を襲いかかる銃声。少女を抱えた男は広い廊下を走り抜け、勝手口から雨の中へと飛び出した。
?「ハル、逃げるんだ。この先にはハルを助ける者が待っている…」
湖のほとりに建てられた住まいの裏には水辺への階段が降りていた。少女・ハルは父に抱かれながらそこに止めてある船へ乗せられた。
?「ハル、これを…」
黒いスーツに身を包んだ仮面の男は腰に手をやり、そこから取り出したものをハルに渡した。鈍色の雨空に光るそれは金の懐中時計であった。
?「この先には大きな駅がある。大きな大きな駅だ。15時40分発、3番乗り場から出る列車に乗るんだ、ハル」
ハル「15時40分…3番乗り場…」
?「切符売り場にいればメガネの兄さんが迎えに来る…。ハル、ハルはその列車でカナンの地に向かうんだ」
ハル「カナンの地…?」
いたぞ!と、追っての声が聞こえてきた。もう残された時間はない。男は決心し、自らの両手に持っていた小刀を中に放り投げた。放物線を描いた刀は船の甲板へ突き刺さり、桟橋とつないでいたロープを切り離した。
?「どんな願いも叶う場所だ、行け!ハルッ!」
船は男の声と同時に加速を始めた。遠ざかる父にハルは必死に叫んだ。
ハル「パパ…!パパはっ…?」
男はハルに微笑みながら振り返り、追ってに対して向かって行った。掛け声と同時に銃声が鳴り響く。雨空に漂う硝煙。
ハル「パパっ…パパぁぁあ!!!!」
一隻の船は次第に光に包まれた。船は光に飲み込まれて行き、次第にハルと共に消えていく。閃光が止んだ時、そこには雨に揺らぐ水面しかなく、少女の姿は消え失せてしまった。
第一話 「走り出した運命」
近代的な建築が所狭しと並びたつ駅前の風景を眺め、スーツ姿の男は改めて圧倒されていた。リクルートスーツにメガネをアクセントにした20代前半と言った風貌の男。名は赤羽根。彼は先の入社試験を終え、帰路についていた。
赤羽根「やはり田舎とは違うなあ…」
今日ここに来ていたのは他でもない就職活動の為であった。地方の大学の4年であり、就職先はやはり中心部の方が良いと考えた彼は遠出しこの街へ来ていた。
「ここに来られると良いなぁ…」
そんな街を眺めながらカフェで買ったコーヒを一口飲み込む。地元にあまりないカフェだと贅沢して買いたくなってしまう、と赤羽根はいつも遠出する度に寄っていた。
一息ついて帰ろうとホームへ向かった時、切符売り場の付近で一人の子供が俯いている姿が目に止まった。小学校低学年くらいであろうか、両手で細長い荷物を抱えた少女はどうやら切符を買えてないのだろう。保護者の方はいないのか?と辺りを見ていると、彼女の方からこっちへ近づいてきた。
ハル「メガネのおじさん!」
赤羽根「失礼なっ、これでも22歳だっ!」
いきなり少女は指を指し、赤羽根をおじさん呼ばわりしてきた。失礼な、これでもまだ若いんだぞ、と彼は胸中でひとりごちる。
ハル「ねえ、おじさん!3番乗り場ってどこ?」
赤羽根「だからおじさんはやめろ!3番乗り場はあっちだよ。」
雰囲気をみても一人で電車に乗るような年齢には見えない。家族はどこにいる?そう聞こうと考えた瞬間感覚的にその発言を取り下げた。もしかすると、聞いてはならない理由もあるかもしれないからだ。
赤羽根「俺もそっちに用があるんだ。そこまで案内するかい?」
少女の表情がぱあっと音がしたように明るくなった。
ハル「いいの?あっ、でもパパに知らない人についてくなって…」
赤羽根「俺は怪しいものじゃない!赤羽根、赤羽根ケンジだ」
ハル「真っ赤な羽?かっこいーね!」
見ず知らずの幼子に褒められただけなのに、どこかむずかゆくなった。
ハル「ハルはハル!よろしくね、ケンジ!」
駅の構内は賑わいを極めており、非常に混雑していた。先の駅前広場でも行われていたアルク・ノア弾圧のデモの余波であろうか、いつもの空気とは違ったものが空間を支配していた。
ハル「あ、あそこだ!」
たかたかと音を立ててハルは改札の掲示板へ近づいて行く。
赤羽根「ハルはどの電車に乗るんだ?」
ハル「えっとね…15時40分の…」
赤羽根「とすると…あれか」
赤羽根が掲示板に指差したその時、背後から爆音が鳴り響いた。振り返るとそこには煙が立ち込めており、ローラーブレードのような装備でこちらへ滑り、向かってくる者たちがいた。さながら鎧姿の彼らはまさしくアルク・ノアであった。アルク・ノアは赤羽根らの横を通り過ぎ、次々と列車に乗り込んで行く。それはハルが乗るはずの列車であった。
赤羽根「な、なんでこんなところに」
ハル「今のうちに…!」
ハルは暴動に乗じて改札をくぐり抜け、列車に飛び乗ってしまった。
赤羽根「あっ、おい」
赤羽根が気づいた時には既に遅く、ハルは煙の中に消えていた。
赤羽根「まったく…一人で行かせられるか!?」
赤羽根は改札にICカードでこじ開け、まっすぐ列車へと走って行った。赤羽根が乗り込んだ瞬間、扉は閉まり列車は走り出して行った。
列車の進行方向へ走り出してすぐさま、目の前にはハルが現れた。しかし、ハルは身動きを取れないでいた。アルク・ノアの一員が照準をハルに向けていたからだ。
赤羽根「どうする…どうする俺…」
葛藤が生まれたのもつかの間、気づけば赤羽根の足は動き始めていた。
赤羽根「うおおおおお!!!」
赤羽根はアルク・ノアに向かって走りだし、注意をこちらに向けた。相手がハルから目を逸らした隙にこちらの手のカバンを放り投げ、仮面に命中させた。その一瞬に赤羽根はハルを抱えて走り去り、先に見えたボックス席へと逃げ込んだ。
ハル「ケンジ…!」
赤羽根「ケガないか?大丈夫そうだな」
しかし、時は待ってくれない。背後からアルク・ノアが怒り声をあげて近づいてくる。何か手はないのか。赤羽根は辺りを見回した。すると、ハルが手に持っていた包みを開いてこちらに向けてきた。それは鋭く研ぎ澄まされた双剣であった。
ハル「これを…!」
赤羽根は困惑した。相手は銃火器を持っている。まだ丸腰でないだけマシだが、この子は俺に戦えと言っているのか?と。しかし、考えている暇はなかった。赤羽根はその柄を左だけ逆手の形に握りしめ、座席に足をかけ宙に飛び上がった。アルク・ノアは予想通りにこちらに照準を向けてきたが、赤羽根はそれより先に右手に握った剣を投擲し、相手の膝に打ち込んだ。先ほど見た時に鎧のない場所を盗み見しておいて正解であった。怯んだアルク・ノアはよろけてしまい、後ろに仰け反ろうとした。赤羽根はすかさず懐に飛び込み、武器を持つ手を蹴り飛ばし、銃を飛ばしてやった。赤羽根は左に持った刀を相手の喉元に突き刺し、右膝で相手の胸部を押さえ込み、上にのしかかる体制になった。静止すること数秒間、赤羽根の前方から一突き拳が飛び出てアルク・ノアの頭部を強打、彼は意識を失い倒れこんだ。どうやら命までは奪い取ってない。赤羽根が見上げるとそこには一人の女の子が立っていた。
?「今僕がコイツを眠らせました。しばらくは起きないと思いますよ」
赤羽根「ありがとう…君こそ怪我はないかい?」
短髪の黒髪を有した爽やかな少女は笑顔で腕を捲り上げた。
?「なんともありません!僕、ちょっと腕には自身がありますから」
赤羽根「はは、そうか。ところでこの騒ぎ、アルク・ノアだよな…」
?「ええ、さっき急に乗り込んできて暴力を振るってきたので防戦して…」
赤羽根は彼女の手の甲、正しくは彼女の着けている手袋に輝く宝石のようなものを見つけた。
赤羽根「それは…エクスフィアか…」
?「あ、これですか?父さんが護身用に持っておけーって、いらないと言っても聞かないから持ってたんですけど、役に立ってしまいました」
元暦110年に世界有数の大企業クランスピア社が開発した商品がこのエクスフィアであった。人の奥底に眠る神経を研ぎ澄まし、筋力や体力等の運動性能の向上や反応速度を高める効果があり、そのメカニズムは企業秘密とされていた。発売から5年ほど経ったがその性能の高さは世間の知るところとなり、護身用として親しまれるアクセサリーの立場を我が物にしていた。
?「そういう貴方も、腕時計がエクスフィアですよね」
赤羽根「よく見てるな。その通りだよ。とにかく助かった、ありがとう」
?「いえ、こちらこそ。僕、菊地真って言います」
赤羽根「菊地さん、か。俺は赤羽根ケンジ。こっちは…」
ハルは赤羽根の足元に引っ付いていた。
ハル「ハルはハル…!」
真「赤羽根さんに、ハルちゃん。よろしくお願いします」
車内の雰囲気は変わらず騒然としていた。三人は後方車両へと向かっていたが、道すがら気絶しているのか、倒れている乗客も少なくなかった。
赤羽根「この先に君の上司が?」
真「上司というか、社長ですね。この列車には芸能界の名だたる方たちが乗っています。そこを狙ったのか…?」
赤羽根「菊地さん…君は…」
赤羽根が質問をしたその時、後方の車両の扉が開いた。向こうからアルク・ノアの増援が現れた。
赤羽根「またか…行くよ、菊地さん!ハルはそこに隠れてて」
真「はいっ!」
ハル「わかった!」
ハルは後ろのボックス座席に匿い、二人は前へと突き進んだ。
赤羽根「いくぞっ!」
真「決めます!」
「「双覇連散!!」」
2人のエクスフィアは共鳴し、タイミングを同期させる。放たれた術技は敵の懐へ叩き込まれ、戦闘は終わった。
ハル「二人ともすごーい!いきぴったり!」
真「へへっ、ありがとうハル!」
赤羽根「そろそろ後部車両かな…次を開けるぞ」
赤羽根は恐る恐る、扉の前に立ち自動ドアを開いた。その時であった! 空間に電流が走り亀裂が生じ、黒い穴が中に空いた。そこに向かって風景は吸い込まれて行き、三人の視界はブラックアウトした。
目を覚ますと、周りには真とハルが倒れていた。
赤羽根「大丈夫か二人とも!?」
真「うう…何が起こったんでしょう」
ハル「ん…あれ、ここさっきの場所じゃないよね」
周りは先ほどの風景とは変わっていた。壁の表示を見ると、後方車両から3両ほど前に戻っているようだった。
赤羽根「おかしいな…とりあえずみんな大丈夫そうだ。後ろに向かおうか」
真「はい。ただ、用心して掛かりましょう…」
三人は先ほどと同じように後方へ向かった。見たところ、やはり手前に戻されているようであった。
赤羽根「よし、開けるぞ」
繰り返し、赤羽根は自動ドアを開く。するとそこには驚くべき光景が広がっていた。
真「しゃ、社長!!」
真が言っていた社長と思われる人物はある者が手にした槍に貫かれていた。すでに息耐えている様に見えたが、槍の持ち主は抉るように手先を踊らせていた。
真「…どういうことだい、春香」
槍を引き抜いた勢いで倒れている男性の腹部から血が溢れ出した。
春香「どうもこうもないよ、真。私をこんな目に合わせた人達は、みんなみんな消さないとだめなの」
不気味な笑みを浮かべた少女(おそらく春香という名前なのだろう)は槍をかかげこちらに向かってきた。真は一歩先に飛び出し、春香の一閃を手の甲で弾き飛ばした。真の手の甲の手袋と思われていたものは、鋼で覆われていたのだ。
真「春香ぁああ!!!」
二人は互いに攻撃の応酬を続ける。しかし、気圧されたか、真は一瞬の怯みと同時に膝をついてしまった。
春香「じゃあね、真…」
真は思わず目を瞑った。やられる…!
赤羽根「はぁあああっ!!」
赤羽根は真の前にせり出し、両刀で挟み込む形で槍を押さえ込んだ。
春香「なっ!?」
緩んだ春香の手元に柄を叩きつけ、槍を叩き落とし、赤羽根は体当たりをお見舞いした。しかし!不運は続いていた。飛ばされたその先にはハルがいた。
春香「っ…!!邪魔ァ!」
ハル「…パパっ!!」
ハルはギュッと体を縮め、目を瞑った。春香がその手でハルをなぎ払おうとした。しかし、その攻撃が繰り出される時、ハルの首にかかった金時計が光だした。春香は目が眩んで身動きが取れなかった。その隙に赤羽根は走り、ハルを抱き上げた。
二人が密着したその時、時計は唸りを上げて強く、強く光を放った。
赤羽根は気づくと黄金に輝く空間に立っていた。視界は澄んでいるが、周りには歯車が噛み合いながら中に浮かんでいる。目の前には先の倒れたままの春香がいた。赤羽根の手には双剣ではなく一本の光り輝く槍が握られていた。そして、両の腕は黒い鎧のようなものに取り憑かれていた。その時の感覚は、こう表す以外になかった。本能で、動物的にそれを察知したのだ。春香を槍で突き刺せ、と。
赤羽根は無我夢中になり、春香を槍で貫いた。すると、春香の体の真ん中から、黒い歯車が噛み合わさった時計のような物が取り出された。その黒い歯車は槍の中で砕け散り、すすのような粒子に返っていった。そして、歯車が消え去ったと同時に空間は割れたガラスのようにひび割れ、崩れ去って行った。
赤羽根「う、う…」
目が覚めると、身体じゅうに重しを載せたかの様に動きにくかった。なんとかして体を起こすと、そこは見たことのない場所だった。しかし、その白作りの部屋から病室であると理解した。
?「気がついたかね?」
赤羽根「貴方は…!」
黒いスーツに身をまとった中年の男性がそこにいた。列車の中で、天海春香に殺されていたはずの人物…!
?「私は菊地くんが所属する事務所の社長をしている、高木という。はじめまして、赤羽根くん」
赤羽根「貴方は列車で、怪我などはされてないのですか?」
思い立った時にはすでに質問をはじめていた。
高木「私かい?私はなんともないよ。あのトラブルのなか、運が良かったと思うよ」
おかしい。そんなはずはなかった。確かに赤羽根は、その目で彼が突き刺されている姿を見たはずであったが。
赤羽根「真…真とハルは!?」
高木「ハルくんは、別の病室で休んでいるよ。菊地くんはすでに退院している。心配ない」
高木社長は右手で隣の部屋を指しながら言った。
高木「まず、あの列車では何が起こったのかを話そう」
社長は椅子に腰を下ろし、赤羽根にも横になるよう手振りをした。
高木「君も見たと思うが、あの列車はアルク・ノアのテロを受けた。おそらく、後方車両に芸能界を握る権力者達が揃っていたからだろう。結果から言えば彼らはテロに失敗した。彼らを乗せた車両はあの列車から切り離されたからだ。今だから言うが、あの車両には政財界に関わるものが多くいた。それを慮った鉄道社は切り離しを行い、本社から救助の手を回した。走り去る本体車両の方を取り残して。私はその車両の手前にいた。言ってしまえば後部車両の定員に私は入れなかったのだよ。結局、列車は暴走したまま事故を起こした。アルク・ノアの手によって脱線を起こし、自然科学実験場のアスコルドへ衝突事故を起こした。早いもので、それはすでに1週間前のことになる」
赤羽根はハッとした。この病室に、俺は一週間も寝ていたのか…?と。社長はゆっくりと頷いた。
高木「そう、君は一週間寝込んでいたのだ。幸い、事故の際におった怪我は医療ジンテクスのお陰で綺麗になった。本当に無事でよかったと思う。しかし…」
社長は表情を曇らせた。
高木「君の治療費が高すぎた…。申し訳ないが、君の家庭事情なども見させてもらった。君は…」
赤羽根「…はい、俺には身寄りはありません。ただ一人の家族の兄も、ずっと会ってません」
高木「しかも、その上君は仕事を探している最中だ。いくら大学は自分でやりくりできたと言っても、この額を抱えてしまっては先も辛い…」
赤羽根「その額、とは…」
高木は重々しく、口を開いた。
高木「1000万ガルドだ」
赤羽根は、思わず聞き間違えたかと思った。いや、確かに彼は言った、1000万ガルド、と。
赤羽根「そんな大金…」
高木「治療を施したのは、クランスピア社のエージェントだ。他のものでは治すことは不可能だと…。しかも、不幸なことに君についていた子…ハルくんだったかな。あの子の額も含めてだ」
赤羽根「なんですって!?あの子の、保護者は…?」
高木は目を逸らし俯いた。
高木「この一週間、必死であの子の身寄りを探した。警察にも届け出たが、分かったのはただ一つ、君のiDNAに告示しているという事だけだ」
赤羽根「そんな…」
赤羽根は莫大な金を要求されたことだけでなく、あの子の身寄りが無いことを自分の境遇と重ねてしまった。あんな年の頃から、あんな思いを重ねなければいけないのか…?それが、どんなに残酷なことか…。
高木「そこで、だ。私は君に一つ提案をしたい。これは君を助けるだけではなく、菊地くんを守ってくれた赤羽根くんへのお願いでもある」
赤羽根「提案、なんでしょうか…?」
沈黙も一瞬のこと、高木は強く、しっかりとした声を響かせた。
高木「我が社で、プロデューサーをやらないか?アイドルの、プロデューサーをだ」
戸惑う顔を浮かべた赤羽根を見た社長は、加えてこう話した。
高木「我が社は今、多くのアイドル候補生を抱えているが、そのプロデューサーが欠けている。なに、仕事のことはこれから順に教えて行くつもりでいる。そして君は今、就職活動を行っていることを知っている。君がOKを出せば今すぐにでも、君を社員として迎え入れる。どうかね…」
確かに、今仕事を手にしてない自分からすれば好都合ではあった。そして、社長が提示してきた書類の額は、借金を返済しながらでも、暮らせなくはなかった。
その時、病室の扉が開いた。
ハル「ケンジっ!!大丈夫だった?」
赤羽根「ハル!もうなんともないよ。ハルこそ?」
ハルは相変わらずの笑顔で、ニッとにこやかに返事した。
赤羽根「高木社長、少し考えさせてください」
高木「もちろんだ。また明日に伺うよ。まずはゆっくり、休みたまえ」
その夜、夕食後に談話室でネットを用いて事件について調べていた。高木社長が話したことはおおよそその通りに書かれていた。
赤羽根「どうするんだ、1000万なんて…」
ハル「ケンジ…何してるの?」
ハルがやってきた。しかし、どこか影を見せる表情をしていた。ハルらしくない、と感じた。
赤羽根「ああ、調べ物をな…」
ハル「ねぇ、ケンジ。ごめんさない、ハルのせいで…お金…」
そうか、この子も社長から聞かされているのだ、と気づいた。
赤羽根「子供がお金の心配するな!俺がなんとかしてやる…!」
ハル「ねぇケンジ、ハル聞いたことあるよ。ハルのパパはね、昔アイドルのプロデューサーをしてたんだって。ハルはよくわかんないけど、ケンジならなれると思う。それで、沢山お金を稼いで…」
確かに昨今のアイドル事業は隆盛期にあると聞いたことはある。爆発的なヒットを遂げれば、レコード界に歴史的記録を打ち立てることも、長者番付に名を連ねることも可能だという。そうした可能性があるとすれば、この博打に乗ることも出てはないか? ましてや、事故とはいい負ってしまったこの借金をどう返す手立てがあるというのか…?
赤羽根「ありがとうな、ハル。今日はもう遅いから寝ような?」
ハル「うん…」
赤羽根はハルを病室へと送り、床についた。
高木「おはよう。考えてくれたかね」
翌朝、約束通り高木社長は訪れた。一晩考えに考えぬいたが、その答えはすでに心の内にあった。どちらにせよ、仕事は決まっていなかった。そして、見ず知らずの子とはいえ、なぜか不思議な繋がりを感じるハルをみていると、とても投げ捨てる気にはなれなかった。
赤羽根「高木さん、いえ…高木社長。俺は、プロデューサーになります。これから、よろしいお願いいたします」
赤羽根は頭を下げた。
高木「そうか、決めてくれたのだね。こちらこそ、よろしく頼む。今日から君は、我が社のプロデューサーだ」
こうして、俺は765プロダクションの社員となり、アイドルプロデュースをすることとなった。しかし、それは俺とハルの奇妙な冒険のほんの始まりでしかなかった。
第一話 完
僕はテイルズを小学生くらいの頃からやっていて、シリーズはほとんどプレイしています。やるだけならマザーシップは全てやってます(未クリアはありますが)。中でも特にお気に入りなのは、テイルズオブエクシリア2です。複雑に絡み合うパラレルワールドは非常に面白く、そのシナリオの残酷さも合間って素晴らしい作品でした。今回はそのエクシリア2をベースにアイドルマスターの世界を組み込みました。アイドルマスターって、基本パラレルワールドですからエクシリア2の世界観に合うと思うんです。主人公・赤羽根ケンジの運命の選択を描いて行こうと思います。完結するかはわかりませんが、まずは一話ができたのでアップしてきますね。それでは。
人って思った以上に人にものを伝えられないじゃないですか。これって理解する方も力がないし、話す方も力がないって結論にたどり着くには少し切ない話だとも思います。例えば言葉は関数の様に発した言葉に対して意味を見出すものなのですが、そこの変換の際にミステイクが生じて意味がうまく伝わらないのです。もしそれが、完全な関数のシステムを人類が構築できたとしたら?
お互いの間で情報の交換が、さながらコピーペーストのように行われればそこにミスは起きないし、スッと水が染み渡るように相手の思いが伝わるのではないか。ただ、そこには情熱やその類の感情は介さない。熱意がなければ強い衝動が生まれることもなく、淡白な日々が流れ行くだけではないか。熱は、動きによって生じるものならば、衝動も熱によってしか生まれない。人はお互いをまっすぐに分かり合えないからこそ知りたくなり、それが情熱になる。だからこそ、言葉の関数は未完成な方が良い。
お互いの間で情報の交換が、さながらコピーペーストのように行われればそこにミスは起きないし、スッと水が染み渡るように相手の思いが伝わるのではないか。ただ、そこには情熱やその類の感情は介さない。熱意がなければ強い衝動が生まれることもなく、淡白な日々が流れ行くだけではないか。熱は、動きによって生じるものならば、衝動も熱によってしか生まれない。人はお互いをまっすぐに分かり合えないからこそ知りたくなり、それが情熱になる。だからこそ、言葉の関数は未完成な方が良い。