米国、韓国、ロシアの大統領選、中国の共産党大会など世界各国で指導者を選ぶ選挙やイベントが相次いだ2012年。領土や領海をめぐる問題や債務危機、内戦状態が続くシリアへの対応など、政治のあり方が例年にも増して問われた今年も、多くの元指導者や著名人らがこの世を去った。その足跡を振り返る。(黒川信雄)
◆激動期を生き抜いた シアヌーク氏
「ベトナムがライオンならばカンボジアは子猫のようなものだ。子猫はライオンの向こうに中国という竜を見つめている」
独立、クーデター、内戦、大虐殺、そして国家の再生-。「激動のカンボジア現代史の体現者」と評されたノロドム・シアヌーク前国王(10月15日、89歳で死去=以下同じ)は、強国に囲まれながら生き延びてきた自国を、こう表現した。
1941年に18歳で国王に即位したシアヌーク氏は、53年には旧宗主国フランスからの完全独立を達成する。しかし70年に親米派のクーデターにより失脚。北京などで亡命生活を余儀なくされた。
200万人もの国民が虐殺されたというポル・ポト政権(75~79年)下では軟禁され、自身の子供たちも殺された。しかしその後、親ベトナム政権打倒に向けポト派とも手を組んだ。
侵略の歴史が繰り返された小国カンボジアの生存をかけ、「現実主義」に徹したとされるシアヌーク氏だが、ポト派とも組むその姿に米国は懐疑的な目を向けた。シアヌーク氏の中国接近は必然の結果でもあった。
シアヌーク氏が北京の病院で息を引き取る一方、その中国の未来を憂えた民主活動家が亡命先の米国で静かにその生涯を終えた。
方励之(ほうれいし)氏(4月6日、76歳)は、89年の天安門事件につながる民主化運動で学生らの「精神的支柱」と位置づけられ、旧ソ連の反体制物理学者、サハロフ博士にちなみ「中国のサハロフ」とも呼ばれた。
天体物理学の世界的研究者として知られ、66年の文化大革命の際には投獄された。名誉回復後、84年に中国科学技術大学の副学長に就任したが、「思想の自由を大学の方針にしたい」などと主張し、87年に解任された。天安門事件後、米国への亡命を余儀なくされた。
◆米政界重鎮
米国と日本という2つの「祖国」の懸け橋として多大な功績を残した米政界の重鎮、ダニエル・イノウエ米上院議員(12月17日、88歳)はハワイ州の日本人移民の家庭に生まれた。第二次大戦中には日系人で組織された「第442連隊」に志願し、欧州戦線で右腕を失った。連邦下院議員を経て62年に連邦上院議員に当選。日系初の連邦議員として人種的少数派の権利擁護に努め、日系人が大戦中に強制収容所に送られた問題で米政府の公式謝罪と補償を勝ち取った。
◆不屈の記者
国際社会が内戦終結の糸口を見つけられずにいるシリアでは、惨劇を世界に伝えようと決死の覚悟で潜入したジャーナリストらの訃報が人々に衝撃を与えた。
「隻眼の女性戦争特派員」として知られた米国人記者、メリー・コルビンさん(2月22日、56歳)は約30年にわたり紛争地報道に従事し、2001年にはスリランカ内戦取材中に攻撃を受け片目を失明。その後、黒い眼帯を着けて各地を取材、「不屈の記者」として知られた。政権による反体制派への苛烈な攻撃が続くシリア西部ホムスで砲撃を受け、仏人カメラマンとともに死亡した。
シリアでは8月、紛争地での豊富な取材経験を持つ日本人ジャーナリストの山本美香さんが政府軍の銃撃で命を断たれた。45歳だった。
宇宙探査で偉業を果たした人物の訃報もあった。1969年、人類史上初の月面着陸に成功した米宇宙船アポロ11号の船長、ニール・アームストロング氏(8月25日、82歳)。東西冷戦時代、ソ連が57年に世界初の人工衛星打ち上げ、61年には有人宇宙飛行を相次ぎ成功させるなか、アームストロング氏らの月面着陸成功は米国中を驚喜させた。
◆世界の歌姫
一世を風靡(ふうび)した歌手らの悲報も目立った。
主演映画「ボディガード」の主題歌「オールウェイズ・ラブ・ユー」などの大ヒットで「世界の歌姫」と呼ばれた米女性歌手、ホイットニー・ヒューストンさん(2月11日、48歳)は、ホテル客室内の浴室で不慮の死を遂げた。薬物依存からのリハビリ途中だったが、遺体からはコカインの成分が検出され、本格的な復帰は道半ばに。
70~80年代に多くのディスコミュージックをヒットさせ、「ディスコの女王」の異名を取った米歌手、ドナ・サマーさん(5月17日、63歳)はがんで亡くなる直前まで新アルバムの製作に励んでいた。
◆文化を牽引
世界の文化・芸術を牽引(けんいん)した巨匠の訃報も相次いだ。2004年に第16回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したブラジルの建築家、オスカー・ニーマイヤー氏(12月5日、104歳)は国連本部ビル、ブラジルの首都ブラジリアの主要建築群などを設計。「曲線は全宇宙を構築する」との哲学を反映した優美な作品を多く残した。
1997年に第9回同賞を受賞したインドの民族楽器「シタール」演奏の第一人者、ラヴィ・シャンカール氏(12月11日、92歳)はビートルズやバイオリニストのメニューインら世界の音楽家を魅了、その影響なくして今日の音楽はないといわれた。
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