京南ビナは、韓国・京南グループによる100%出資子会社で、ベトナム税務機関では、「京南ビナは関連取引を通じて利益を親会社に移転した疑いがある」とみているという。
京南ビナは、2007年5月にハノイ市トゥリエム郡で高級アパートメント「京南ハノイ・ランドマークタワー」建設プロジェクトを展開した際、韓国の国民銀行(同じ京南グループ内)から4億ドルの融資を受けた。しかし、その契約内容は、ベトナムの各銀行の米ドル融資金利(年5~7%)に比べてはるかに高い年12%に上り、そのため、計上された金利および財務コストは合計で2兆300億ドンに達しているという。
さらに、租税総局改革委員会のグエン・クアン・ティエン副委員長は、「ハノイ租税局査察部は現在、融資金の手配やコンサルタント費などに関与した京南タワー建設会社についても、調査を進めている」と明かし、「京南ビナは、同一グループ内の銀行から高金利の融資を受け、親会社に融資準備費用を先払いした。つまり、取引は同一グループ内の3社間で行われており、これが、税務機関が移転価格操作を疑う1つの根拠となっている」と話している。
また、京南ビナと元請け業者「京南エンタープライジズ」がターンキー形式で調印したインフラ建設契約にも目が向けられているという。京南ビナは、元請け業者とも、融資資金の手配や財務コンサルタントサービスの契約を交わしている。このうち、融資金の手配料だけで2000万ドルに上っており、広告コンサルタント料や土地使用権の取得に関するコンサルタント料、投資許可証の発行に関するコンサルタント料も数百万ドルに上っている。そのため、2008年には、財務コストとして3000万ドルが計上されているという。
ハノイ租税局は2012年9月、こうした状況を異常な兆候と判断し、京南ビナに対して移転価格操作を視野に入れた財務調査を実施。この中で、投資資産価値や不動産譲渡費用を明確にし、京南ビナ、京南エンタープライジズ、京南インベストメント間の各取引およびその他の不当なコストを営業経費から切り離したという。
京南ビナでは、ランドマークタワー・プロジェクトを通じて2011年に5兆2000億ドン超の売上を上げたが、同社は1400億ドン超の赤字を申告するなど、過去5年間余の投資活動において、毎年、数百億ドンの赤字を申告してきた。同社の累計赤字は2011年末時点で2770億ドンに達しているおり、わずかな土地使用料と付加価値税以外、法人所得税などは赤字を理由に1度も納めたことがないという。
《レスポンス 朝妻 小津枝》
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