昨年の8月、私は人生最大の一大決心をした。痩せなくては。
そう、地元のジムへ入会したのである。
というのも、学生時代にかなりハードな運動部へ所属していた私の、当時の体脂肪率は9パーセント。驚異である。
どんぶり3杯の白米を夕飯にし、板チョコレートを1日に3枚は囓り、近所の鯛焼き店で鯛焼きサンデー(タピオカにいちごジャム、ソフトクリームを沢山。そこへまるまる1尾の鯛焼きを刺した、通称カロリー爆弾)を買い食いする毎日。
それでも修羅の如き部活動により、1日に約5,000カロリーは消費していた青春期。内臓脂肪など怖くはなかった学生時代。
部活動を引退し、食事量はそのままに、ぶくぶくと太っていった大学時代。
気付けば平均体重を遥かにオーバーした、見るもおぞましい肥え太った肉がそこにはあった。
美味しいもの、大好き。
甘いもの、もっともっと好き。
肥満体型否めない。
恐れ入ります、すみません。
と、脳内ではcv高橋広樹が耳に好い低音で楽しげに歌っている。
ワンマンライブを聞かなかったことにして、結局、人生最後の夏季休暇を増えるままに過ごし、無事に就職。
少し動くようになり、微々たる肉を削いだ私は現状に満足していた。
"それ"と出会うまでは。
所謂、コスプレ。
2018年冬。コミケ初陣。
そこで決心したのである。そうだ、推しになろうーー。
推しの力とはかくも強力なものだろうか?
推しこそは、我々の精神を救い、人生を豊かにし、そうして日々生きる糧として"萌え"という名の燃料を投下してくる存在なのか?
私は推しによって、10年間連れ添った12キログラムの戦友と別れを告げた。
ビフォーアフター写真を撮っておかなかったことをひそかに後悔した。
4ヶ月の奮闘の元、12キログラムのお肉たちと別れを告げ、3キログラムのマッスルが私の新しい友となった。
学生時代に培っていたかつての筋肉の成れの果てとスポ根だけが私に寄り添い、支えてくれた。
なにより、推しになるという目標こそが、私を奮い立たせていた……
そうして、無事に戦場を生き残った私である。
4ヶ月間の厳しい食事制限にさよならを告げ、解禁された私……まさに、自由!
久しぶりに食べた小麦粉の味は正にこの世の春。
これほど食事に感謝し、一口を味わい、涙しながら食べたパンが今までにあっただろうか?
焼きたてのパンの匂い。
とろけたバターが鼻腔をくすぐり、塩のアクセントが食欲を誘う、至福の時。
中でも私が特にはまってしまったのが、カフェランチ(風)である。
サンドイッチに、コーヒー。
形から好きになる私。1月は毎日サンドイッチ&コーヒーにデザート、が至福のランチだった。最早ルーティンといっても過言ではない。
しかし、至福ランチはランチだけに留まらず、私の朝食と夕食にまでその触手を伸ばし始める。
1月の中旬よりこちら、朝にも昼にも夜にもサンドイッチな毎日である。
この頃にはもう既にただのサンドイッチでは満足できない体になっていた。
仕事の休憩中に少し遠くのパン屋さんへ足を運び、コンビニをはしごする毎日。
我が家のエンゲル係数はサンドイッチに食い潰されていた。
かといって、自分で作って食べるには、些か面倒なのである。
そう、究極の面倒くさがり。
そもそも面倒くさがり出なければ、怠惰に肥え太るままにぶくぶくと体積を増やしてなどいない。
食パンを買ってきたはいいものの、ハムやレタス、ツナ、ジャムなど、挟んで食事の体裁を整えること事態、億劫だ。
全ては究極の減量より始まった、私の至福ランチもとい、私のサンドイッチ戦争。
そこで、究極の面倒くさがりによる、究極のサンドイッチ事情を記録に残そうと決意したのが既に今日より1週間前。思い立ってからの行動が死ぬほど遅い私。
面倒くさがりにどこまで続けられるだろうか。